歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

絶対コナンも知っている

今回は、「死体格差 解剖台の上の「声なき声」より」(2017年)を読みました。

 

 

コナン的知識を得たので、事件に遭遇した時のために書き残しておきたいと思います。

 

 

死体の格差

 

著者さんは法医解剖医で、阪神地区における六市一町の法医解剖を担当されています。富裕層の多い芦屋署、貧困層の多い尼崎署などから依頼が来るそうですが、2015年は芦屋署からの解剖依頼数はわずか11体であったのに対し、尼崎署からの解剖依頼は138体あったそうです。孤独死認知症患者、アルコール依存患者の事故等で検死となるケースが多いそうで、タイトルの通り、死体にも格差があるようですね。

また、解剖件数も地域によってかなり違いがあるのだそうです。あまり解剖が行われない地域では、事件死が見逃されていたりして。お住まいの地域をチェックしてみても良いかもしれません。

 

 

解剖の種類

 

法医学教室で行われる解剖には、以下の4つがあるそうです。

  1. 司法解剖  犯罪死体やその疑いがある死体について、犯罪捜査を目的として行うもの。
  2. 調査法解剖 身元不明の遺体や犯罪に関係のない遺体の犯罪の見逃し防止を目的に行う。
  3. 監察医解剖 監察医制度施行区域(東京都23区、大阪市、神戸市という、日本のごく限られた地域)での、犯罪に関係ない遺体の死因究明を目的とする。
  4. 承諾解剖  監察医制度施行区域外での、犯罪に関係ない遺体の死因究明を目的に遺族の承諾をもとに行う。全国の大学法医学教室が担当。

警察との関係は近いですが、ドラマのように馴れ合ったりはないそうです。

 

 

死後硬直

 

死後硬直は通常、顎、首、肩、肘、手首、手指、股、膝、足首、足指と、体の上のほうから下のほうの関節にかけて徐々に進み、半日もすればすべての関節がガチガチになってしまうそうです。肘の関節までは強く硬直しているが、手指の関節の硬直はまだ弱く、少しならば曲がるのであれば、死後6時間くらい、半日は経ってないと判断されます。そして、硬直が進み切ると、それが1日程度続いたのち、あとは徐々に緩んでいくそうです(緩解)。

硬直は、筋肉が多いと強く出るし、気温が高いと早く出現します。運動後などで、体温が高かった場合も、硬直は早いそうですよ。

 

 

腐敗しない遺体

 

低温で空気の乏しい環境下では、皮膚の下の脂肪組織が化学変化によってロウソクのろうのようになることがあるそうです。死ろう化といいます。

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死後数年は経っているはずなのに、まるで先週亡くなったのではないかと思わせるほど、綺麗な状態で全体に白っぽく、蝋人形のようになります。

地上での遺体の腐敗速度を1とすれば、水中ではその2分の1、土中ではその8分の1まで遅くなると言われているそうです(カスパーの法則)。遺体を隠そうと、土中や水中に深く沈めることで条件が整うという、何とも犯人泣かせな現象ですね。

 

 

血液の色

 

寒い冬には自宅での凍死も起きえます。凍死の場合、心臓の左側と右側から流れ出てくる血液を比べると、左側の血液のほうが明らかに赤いという現象が見られるそうです。ヘモグロビンには、温度が低くなればなるほど酸素との結合度が高まるという化学的な性質があるため、凍死した際の動脈血は、より鮮明な赤色となるということでした。

また、青酸化合物に含まれるシアンもヘモグロビンと強く結びつくため、青酸中毒の血液も鮮紅色になりますし、一酸化炭素中毒でも同様です。

逆に結膜や臓器が白っぽい場合は、「蒼白」と呼ばれ、生活反応があった、つまり心臓が動いていて血液が循環していたということが分かります。同じく、アザも生きている時にしかつきません。ちなみに、暴行を受けるなどで外表面の20〜30%程度に皮下出血を起こすと、数週間後に腎不全で急死してしまうこともあるそうです。

そして、硫化水素中毒では血液は緑色に近くなるのだそうです。ゾンビ色…火山での中毒死だけは避けたいですね。

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アルコール依存

 

大量の飲酒を続けると、肝硬変や肝不全を引き起こします。肝臓は栄養を吸収するために消化管から吸収した栄養分を含んだ血液が流れ込んできます。しかし、肝硬変などにより血液が入り込めない状態になると行き場を失った血液は静脈血管に逆流して腹部に静脈瘤ができるそうです。ふくらはぎにできるような静脈瘤がお腹にできている場合は、肝臓の異常を疑えということですね。

 

また、興味深かったのが、アルコールのみで栄養分を摂取していたような人の血管は非常に綺麗だということです。動脈硬化もなく、内臓脂肪も付いておらず、体の内側だけ見れば心筋梗塞などを起きるような要素がないということでした。

これは、過去記事「超少食」の効果を支持していると思いました。

ddh-book.hatenablog.com

一方、ケトン体により血液中の酸性度が異常となり、体の機能が正常に保たれなくなってしまい死亡してしまうということです。本書によると、アルコール依存症の人の場合は、風邪をひくなどして一切の栄養源の補給が経たれた時に、PHの調整が追い付かなくなってしまうということで、断食をするのであれば期間を決めるとか、少食を長く続けるとかの方が良いのかなと思いました。

 

 

まとめ

 

本書を読んで、絶対コナンも知っているなと思いました。名探偵コナン原作での他殺、自殺、事故死の事件による死亡者数は370名にもなるそうで、著者さんの法医学教室に運ばれてくる遺体、約300体/年よりも多いんです(コナンはずっと小学1年生・笑)。毎日のように殺人事件に遭遇しているコナンは、警察よりも法医解剖医よりも詳しいに違いない!と思いながら読みました。