今回は、「WHOLE BRAIN ココロが軽くなる「脳」の動かし方」(2022年)を読みました。
本書は、脳科学者(神経解剖学者)のジル・ボルト・テイラー博士が脳出血で左脳麻痺となった経験をもとに、右脳と左脳の使い方を説明した「実践書」になります。彼女の脳出血後の体験については、2008年のTEDでの講演(日本語訳付き)が見れるので、本書を読む前にはぜひ一度見てみることをお勧めします。
本書では脳の4つのキャラについて説明されていますが、説明内容がやたらと細かくテイラー博士の主観が強すぎるので、自分のこととして捉えにくい部分も否めないのですが、スピリチュアルと脳科学が融合し、かつ自分の中の奥深くまで腹落ちした感覚を得たのでご紹介します。
ふたつの大脳半球を分離させる「交連離断術」を受けた患者はしばらく二重人格者のようになるのだそうです。ある男性は、一方の手でズボンをおろしながら、もう片方の手ではこうとして葛藤していました。また、ある男の子は、将来の夢について尋ねられた際、右脳の人格は「大きくなったらレーシングカーのドライバーになりたいんだ」と言い、左脳の人格は「いいや、製図技師になりたいんです」と言ったのだそうです。
1人の人間であるにも関わらず、私たちは右脳と左脳で違った人格を持っているということです。テイラー博士も脳出血の際、左脳は必至に危険を伝えようとし、右脳は今この瞬間の幸福感に満たされていました。ディズニー映画の「インサイド・ヘッド」ではないですが、私たちは常に脳内会議をしながら自分の行動を決定しているようです。
では、脳内会議のメンバーを一人ずつ紹介していきましょう。キャラ名は勝手につけていますので、悪しからず。(本書に自分で名前を付けてくださいって書いてあるんですもの!)
左脳の人間脳(新哺乳類脳)と呼ばれる大脳新皮質が担当する「思考」の分野を司ります。
主な役割は論理的思考で、言語を使ってものごとを考えます。私たちに自我があるのは「京香」のおかげです。「わたし」と「他人」を分けたり、「私たち」と「あの人たち」と境界線を引き、白黒はっきりさせたがります。
物事を直線的、系統的に捉え、過去や未来に基づいてものごとを考えます。優先順位をつけ、時間を管理し、計画を立てたり、分析するのが得意。違いに注目しやすく全体よりも細部が気になってしまうので、仕切りたがりで完璧主義になりやすいところがあります。
左脳の爬虫類脳とも呼ばれる大脳辺縁系の「感覚」を司ります。
爬虫類脳は、恐怖に敏感に反射的に反応すると言われます。偏桃体では物理的あるいは感情的な脅威を常に査定しており、過去の経験と照らし合わせ危険を判断するとアラームを鳴らして「戦うか、逃げるか、すくむか」の自動反応を作動させます。「鈴」は左脳であるため、過去のトラウマや将来の予測によっても不安が喚起されます。恐怖の化学物質は90秒で血液中から消えるため(90秒ルール)、キャラ1の「京香」が理性的に抑えることも可能です。しかし、「鈴」のアラームを無視し続けると身体的な病を引き起こす恐れがあります。
右脳の哺乳類原脳とも呼ばれる大脳辺縁系の「感覚」を司ります。
右脳には「わたし」と「わたし以外」を分ける境界線も、過去や未来も存在しません。「今この瞬間」についての感情を「今ここで」体験しています。テイラー博士の動画にもあったように、左脳がオフラインになると身体的境界がなくなって宇宙と一体化した感覚になり、文字はピクセルに見え、言葉は単なる音に聞こえます。
子どもは「舞蝶」全開で遊びまわります。私たちが美術品を見たり音楽を聴いて、何かが美しいと感じて心が動かされる時はキャラ3の「舞蝶」が反応しているサインです。好奇心旺盛で楽しいこと、ワクワクすることが大好きです。
右脳の大脳新皮質が担当する「思考」の分野を司ります。
キャラ4の「結愛」は私たちが生まれたときにもっていたオリジナルの意識であり、脳と体が神経学的に機能するようになる前の宇宙の生命力であり、細胞の意識です。「結愛」は、神のような唯一の宇宙的存在と共有している自らの一部なので、本物の自己とも言えます。
「結愛」は、すべてがあるべき姿であることに心を開き、気づき、受け入れています。何かを裁くことなく、ただ自分の生きている人生を驚きをもって祝福します。そして、私たちに愛される価値があるだけでなく、私たちが愛そのものであることをほかのキャラたちに教えます。