歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

火葬場

今回読んだ本は、「火葬場奇談 1万人の遺体を見送った男が語る焼き場の裏側」(2022年)と「火葬場事件簿 一級火葬技師が語る忘れられた黒歴史(2024年)です。

 

 

私も火葬場には2回ほどしか行った経験がありませんが、本書を通して日常生活ではほとんど知らない火葬場について知ることができ、とても興味深かったです。へぇそうなんだと思ったところをまとめたいと思います。

 

 

火葬場の秘密

 

どこかで聞いたことはありましたが、火葬場で焼いている時、ご遺体は動くそうです。ゆっくりと手がり、ファイティングポーズのようになるということでした。私たちが焼きあがった骨を見るとまっすぐ寝ている姿なのは、焼いている間に金属の棒で体を整えたり、焼きあがった後遺族に見せる前に整えているからだということでした。

また、焼いている最中、体液が水鉄砲のように噴出することもあるそうですが、著者さんはそれを有難いと思っていたそうです。水が抜ければ早く焼けるし、焼き時間が短いほど骨がきれいに残るからです。そして、焼いている時に怖いのがペースメーカーです。ペースメーカーが入っている場合、リチウム電池が爆発するそうです。窓からのぞいた時に爆発して、目に当たり失明するという事故もありえるというので、これはちゃんとお伝えするべきですね。

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私はお骨に色がついているのは見たことが無いのですが、お骨に色が付くのは、花の色、ではなくて装飾品やお棺の釘といった金属による着色だそうです。西日本は部分採骨、東日本は全部採骨ということで、確かに祖父母の時も大方取ったら終わりでしたね。ご遺体を焼いたら骨が増えていて、実はフライドチキンを一緒に入れていただけだったというのは、ちょっと面白かったです。

 

 

貴金属の行方

 

今の火葬場では、それまでの様々な事件・事故から厳格なルールがありますが、昔は泥棒や不正も多かったようです。遺体が身につけた貴金属や金歯を回収して売り払ったり、焼いたと見せかけて遺棄していたなど様々なおぞましい事件が起きていました。

過去記事日航機墜落の真相は?」でも紹介した、日航機墜落事故のご遺体を火葬した遺灰を盗んで、金属を取り出し換金していた人もいたとか…。

 

ddh-book.hatenablog.com

 

今でも、遺灰から金属を取り出して、火葬場の維持管理費になっているというのは公に行われているそうです。

確かに、歯科治療に使われる金属は保険適応の銀歯であっても結構なお金になります。私も、抜去歯牙や不要になった入れ歯を回収業者に渡して換金することで、職員旅行代を賄っているという歯科医院の話を聞いたことがあります。TOOTH FAIRYプロジェクトという歯科治療や入歯に使った金属を集めてリサイクルすることで、発展途上国の子どもたちを支援するという活動も行われているんですよ。歯医者さん選びの一つとして知っておいても良いと思います。

 

 

宮型霊柩車

 

昔は良く見かけた金ピカの宮型霊柩車ですが、確かに最近は全く見ませんね。霊柩車を見たら親指を隠せって子どもの頃言われませんでしたか?

この宮型霊柩車は、住民の反対により消えていったそうです。昔の葬儀では、遺体を輿に乗せ徒歩で葬列を組んで火葬場まで練り歩くというものでしたが、大正頃になると、この葬列をシンボル化して宮型霊柩車になったそうです。ところが、火葬場の建て替えや移転にともない、派手な霊柩車はやめてほしいという住民の反対が目立つようになります。平成4年には関東や近畿、四国などの十数か所の火葬場で、宮型霊柩車の出入りが禁止されるに至ったそうです。

流行らないだけかと思えば、禁止になっていたとは驚きました。

 

 

建設地問題と災害対策

 

霊柩車だけでなく、火葬場も近隣の住民から忌避されてしまいます。特に都心部では建設地を決めるのも住民の反対により頓挫してしまうこともあり、建設が進まないことにより火葬場不足が深刻になっている地域も存在するそうです。

確かに、都会では火葬ができなくて時には1週間以上葬儀が行えないというのを聞いたことがあります。日本国民の99.9%が火葬され、世界一の火葬国なのに、火葬場が建設できないというのは大きな問題ですよね。

これは、平時はおろか災害時に大きな問題となります。新しい火葬場が建設できないので、1施設の火葬件数を上げようという動きも加速しており、南海トラフ地震などで施設が被災すると更に火葬できない遺体が溢れることが予想されます。

平成7年の阪神・淡路大震災では、周辺の県や自治体も動き、火葬炉の稼働時間を延長したり、遠隔地には、自衛隊のトラックやヘリコプターで遺体を運んで火葬したそうです。(今では全国で広域火葬計画というのが策定されいます。)

 

 

まとめ

 

著者さんは、自分や家族が必ずお世話になる火葬場のことを知って、遺族も、火葬場も良い方向に向かって欲しいということで情報発信をされているそうです。火葬技師さんというお仕事について初めて知りましたが、とても勉強になりました。火葬場に行く時は、もっと色々なものを注意して見てみたいなと思いました。