歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

トラウマの乗り越え方

今回は、がんばることをやめられない コントロールできない感情と「トラウマ」の関係(2023年)を読みました。

 

 

本書は、過去記事「愛着形成と社会的養護」で感じた幼少期のトラウマを乗り越えるための答えになるようなことが書かれており、将来シェアハウスを始める時には、必ずリビングに置いておこうと思う本でした。

 

ddh-book.hatenablog.com

 

著者さんは心療内科医をされているそうですが、「あなたのせいではない、精一杯生きてきた証だよ」という包み込むような、患者さんに寄り添ったやさしい言葉が印象的です。本書を読んで学んだ、トラウマとその克服についてまとめておきたいと思います。

 

 

トラウマが生まれる仕組み

 

トラウマ反応のひとつに解離があります。解離とは、その場で受け止めきれないほどの悲しみや怒り、恐怖を「私」ではなく壁の向こうの「わたし」のものにして「私」を守るという反応です。つまり、人生で経験してきたさまざまな危機を乗り越えるためにどうしても必要だった生存戦略の産物なのだそうです。

 

本来の「私」を崩壊の危機から守るために生まれた「わたし(パーツ)」は、危機的な状況が過ぎ去ったあとも「私」の中に存在し続けます。それがストレスなどで切羽詰まったり、封じ込めた「危機」と似たような状況が起こったりすると洪水のように溢れ出てしまうのだそうです。そうなると、もはや理性では自分をコントロールできません。

特定の状況によって、反射的に感情や身体反応、記憶などが引き起こされるというのが、トラウマ反応の基本的なメカニズムになります。

 

これを読んで、私はルイーズ・ヘイのインナーチャイルドのことだなと思いました。

 

ddh-book.hatenablog.com

 

 

様々なトラウマの形

 

身近なトラウマ反応の例としては、電話恐怖、プレゼン恐怖、言い争い恐怖、車の運転恐怖などがあります。強度は人それぞれですが、これは少し分かりますね。



トラウマによる解離の例としては、仕事で大きなストレスにさらされ続けたり、身近な人を亡くしたりした時に記憶が曖昧になるといったものがあります。これは「ぼんやり解離」で、「私」と「わたし」の境界がぼんやりとしていて、脳の一部の機能を低下させ苦痛をマヒさせるといった「自分が自分でない」感覚になることで苦痛を軽減します。

もう一つの解離は「区画化(アイデンティティの解離)」で、重度になると「多重人格」(解離性同一性障害)と呼ばれます。「私」がアクセスできない区画を心の中に作り、そこに怒りや苦しみなどの感情を追いやることで苦痛から逃れようとします。

 

 

 

トラウマのメカニズムを知る

 

解離というのは悪いものではありません。なので、すぐに抜け出さなければいけない、治療しなければいけないと考える必要はありません。

本書には「がんばることをやめられない」、「見捨てられるのがこわい」、「突然の怒りがも止められない」、「親しくなるのを回避する」、「やさしくされると怖くなる」、「死にたい」などの「わたし」が生まれるメカニズムについて詳しく説明しています。

自分のトラウマ、つまり、自分が何に傷ついてきて、それによって身体や心にどんな反応が起こっているのかということを知ることが、トラウマを乗り越えるための最初の一歩になります。そして、「私」を守ってくれた「わたし」にもう守ってもらう必要はない、「私」は安全だよということを、「わたし」の存在と役割を認めた上で、丁寧に対話を重ねていくことが大切です。トラウマを乗り越えるために必要なのはマネジメントやコントロールではなく「ケア」なのだそうです。

 

 

まとめ

 

誰にでも大なり小なりトラウマがあるかもしれないという「トラウマのメガネ」で眺めてみると、 例え、幸せな家庭で育っていたとしても、トラウマが潜んでいる可能性があるのだということが分かりました。自分自身を苦しめている思い込みや偏った信念なんかも「わたし」により作り出されたものかも知れません。

脳や神経には可塑性(変化する能力)があり、幼少期に親との関係がうまくいかなかったとしても変化できる柔軟性を兼ね備えているのだそうです。本書を読んだことで、トラウマに気づき、「私」と「わたし」が手を繋ぐことで、必ず乗り越えることができるんだと信じられるようになりました。