歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

意志はどこにあるのか?

今回は、心理学的決定論について書かれた「未来は決まっており、自分の意志など存在しない。~心理学的決定論~」(2021年)を読みました。本書で一貫して主張している心理学的決定論:世界は事前にすべてが決まっているについてはよく分かりませんが、意志ってどこにあるのかな?と気になったので考えてみたいと思います。

 

 

自由意志は存在しない

本書では、人間には自由意志はなく、環境との相互作用によって、自動的に反応行動をしているだけであり、意志とは幻影であると主張します。犯罪や虐待、依存などにも見られるように、自身はやめたいと思っても「意志の力」ではどうにもならず、行動をコントロールすることができないということです。

 

 

脳にあるのではないのか?

ベンジャミン・リベットが行った「リベットの実験」によると、被験者に好きなタイミングで手首を曲げるよう指示し、曲げようと思った瞬間に時計を見てもらうと同時に脳波を計測すると、手首が動き始める前の0.55秒前から脳波が反応していることが分かったそうです。さらに、曲げようと思った瞬間と比較すると、0.35秒前に脳波の反応が見られたということで、追試にも成功しています。

つまり、意思が生じる前に脳が動いているということです。著者は、野球などスポーツに見られる動きを例に挙げ、打った後に「打とうと思った」という意思が幻影のように生まれると主張します。

これは、過去記事「ポジティブ思考をUse it、ネガティブ思考はLose it!」で学んだデフォルトモード・ネットワークだなと思いました。無意識の部分で体や心が動くのではないかと私は考えます。

 

ddh-book.hatenablog.com

 

 

AIは意志を持つのか?

AIが意識を持つことは確実だと私は思う。

と著者さんは述べています。「内部で何が起こっているかは関係なく、外部で見えている出力部分が人間にとって自然であるならば、人間性を十分に投影できる、そのためそこには心がある、と判定してしまっても構わない」という考え方をすれば、AIは意識を持っていると判断して構わないという状況になるというのには、「まぁ、そうなるね」と同意せざるを得ません。ChatGPTを使ったロボットの動画やAIを使ったテレビ電話詐欺のニュースを見ましたが、これらは人間性を投影できているということですよね。

一方、内部で何が起こっているのか、つまり無意識の存在を定義してシステムを解明するというのであれば、AIが意思を持つのはまだ先だと思います。

 

 

まとめ

未来が決まっているというのは、私には受け入れられませんでしたが、私の意志というものについていろいろと考えることができました。本書に掲載されている右目と左目に違う情報を見せて、どちらを見ているのかといった研究や、ベクション(実際に自分は動いていないのに自分の体が動いていると感じる錯覚)についての洞察も面白かったです。やっぱり脳で判断をしていて、無意識の部分がかなり意志に影響しているというのが私の答えです。

AI技術がどんどん進歩していますが、人間と遜色なくなる、つまり人間性を投影できるという地点までは既に届いているように思います。私が生きている間に無意識の解明、つまりシンギュラリティは来るのか楽しみだなと思いました。