今回は、「プロフェッショナルマネジャーの仕事はたった1つ」(2020年)を読みました。
本書は、慶應ビジネススクールで行われた全7回のマネジメント特別講義を録音して書籍化した本になります。読んでいるだけで、一緒に講義を聞いている感覚になりました。
本書で私が勉強になったなと思ったところを整理しておきたいと思います。
本書の一貫したテーマは、「配るマネジメント」です。マネジャーが部下に何を配るのかと言うと、「情報」です。
「状況」「方向性」「評価」「個別業務」「気持ち」の5つの情報が説明されています。そして、部下に情報を配ることが部下の動機付けになるということでした。部下の動機付けというのは「仕事の手応えを得ること」と 「その仕事の意味を知ること」の掛け合わせによって醸成できるのだそうです。
過去記事「誠実たれ」でもありましたが、仕事の意味が腹落ちできているかというのは大事ですよね。
また、気持ちについて、マネジャーの給料は部下より高いですが、それは「感情のコントロール」という分も含めて多くもらっているという指摘は、とても納得しました。部下よりも上手に自分の感情のコントロールができて「精神的に安定している」のは、上司として当然身につければいけないスキルですよね。
情報を配るためには、マネジャーは情報を待っているだけではいけません。仕事に関する情報の多くは通常、会社の上層部に行くほど多く持っていることから、自分から獲りに行く姿勢が必要になります。
①直属の上司(獲りに行くに値するなら)
②直属の上司より上の上司ないし経営層
③仕事で関係する人々(ヨコの関係)
④同期の友人
⑤社内文書(会社は社内サーバーの中に相当の情報を載せている)
⑥社外情報
がその情報源になります。
情報を獲りに行くためには社内の情報だけでなく、社外の人との人脈も大事なのだということが分かりました。
マネジャーは、人事部が行う人事考課の仕組みについても知っておく必要があります。人事評価は「目標設定」「目標への取り組み」「目標達成度」に、 「人物像」という素材を加えて決定されます。特に、手間がかからずに、能力を発揮し、自己研鑽し、人を育て、会社の問題を自分のこことのように思ってくれる人、つまり「能動的に働く人材」を高く評価します。これは、「配る」マネジメントを実践するマネジャーが行っていることであり、「配る」マネジメントはマネジャー自身の評価につながるのだということでした。
これは、過去記事「視点を自在に変える」で紹介した、7つのレベルの視点(思想、ビジョン、志、戦略、戦術、技術、人間力)を垂直的に行き来して統合するということだと思いました。
情報を集める、配るをしていると、「環境変化に対して適応しているか」と「個別業務が維持されているか」の2軸で、会社の経営状態をある程度判断できるようになります。特に環境適応状態が不全であるにもかかわらず、現場の業務はそのままなされているのが「硬直化状態」を見つけたら、「悲観的な判断基準で仕事をし、明るい気持ちで活動する」ということが大事だということでした。
天風先生のように、最悪を想定した場面でもポジティブな言葉を使うというのは大事ですよね。
危機への対応としては、自分ではない誰かがやっている危機対応を見ることで学ぶこと、すでにわかっている危機対応のやり方を書物などで学ぶと良いそうです。茹でガエルにならないよう、リスクが小さい内に変革を行う必要があるということでした。
本書を読んで感じたのは、経営者の視点で仕事をするのが大事だなということです。「逆転出世する人の意外な法則―エリート人事は見た!」(2016年)でも若くして活躍した人がその後伸び悩むという人が多いこと、逆に最初は評価が低かったけれど、ある時期から急に出世するという大器晩成の例は意外と多く、逆転出世コースに乗るためには「経営者目線」で仕事をすることが大事だいうことが書かれていました。
日本ではプレイングマネジャーが多いのだそうですが、マネジャーって言われたことをすればよい一般社員とは仕事内容がガラリと変わるので、大変そうだなぁと思いました。