今回は、「世界の起業家が学んでいるMBA経営理論の必読書50冊を1冊にまとめてみた」(2021年)を読みました。
面白そうな本が沢山紹介してあって読んでみたいと検索したのですが、残念ながらあまりkindle本にはなっておらず、unlimitedになっている本は既に読んでいる感じでした。しかし、「1兆ドルコーチ_シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え」(2019年)だけは課金しても読みたいと思い、早速読んでみましたので、どのような人物だったのかをまとめたいと思います。
アメリカンフットボールのコーチから転身して、アップルの幹部やインテュイットのCEOとして辣腕を振るった人物です。そして、本書の著者であるグーグルのCEOとプロダクト責任者を個人としてチームメンバーとして、主に陰から支えたコーチでもあり、スティーブ・ジョブズの相談相手であり、コーチ、メンター、友人でした。
ビルのコーチを受けた人の名前は2ページに渡っており、元CEOや学長など錚々たるメンバーです。
彼はスティーブ・ジョブズがつぶれかけのアップルを立て直し、時価総額数千億ドルの会社にするのを助け、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、エリックがスタートアップだったグーグル(現アルファベット)を時価総額数千億ドルの企業にするのを助けたことから、「1兆ドルコーチ」という訳です。
しかも、彼はグーグルでの仕事に対する報酬の申し出をことごとく断り、やっと株式を受け取っても、すべて慈善団体に寄付したのだそうです。いつも裏方に徹し、本を書きたいという作家やエージェントの申し出を断り続け、自分のために働いてくれた人や、自分が何らかのかたちで助けた人のうち、すぐれたリーダーになった人は何人いるだろうと考える、それが自分の価値を測るものさしだったという人でした。
ビルは何人ものグーグル幹部のコーチになり、過去記事でも紹介した、「プロジェクトアリストテレス」のきっかけにもなりました。
グーグルの最高のチームは心理的安全性が高く(マネジャーの後ろ盾のもとで、安心してリスクを取れると感じていた)、明確な目標を持ち、仕事に意義を感じ、お互いを信頼し、チームの使命が社会によい影響を与えると信じていました。
彼は1on1で仕事以外のプライベートな話題から、何に取り組んでいるんだ? うまくいっているのか? 何か力になれることはあるか? に続いて、必ず同僚との関係に話題を移したそうです。そして次はチーム、そしてイノベーションについて話しました。
どんな会社の成功を支えるのも、人だ。マネジャーのいちばん大事な仕事は、部下が仕事で実力を発揮し、成長し、発展できるように手を貸すことだ。
歯科衛生士の実習でも、人(実習指導者)次第で実習は全く違うものになります。どんな会社でも組織でも「人」を大事にしないところは成長も発展もできないと思います。松下幸之助も稲盛和夫も社員や取引相手(人)を大事にしましたよね。部下を「人」として全人的に支え、応援し励ますのがマネジャーの役割なのだと思いました。
ビル・キャンベルは、けっこう口が悪く、悪態をつく人だったようです。
彼のフィードバックはいつも率直で素直でした。「ハグ+悪態」が彼のスタイルであり、ブラッド・スミスがインテュイットに新しい幹部として入社した時、「そうか、君が私に大金を使わせたクソ野郎か。それだけの働きをしてくれるんだろうな!」(入社で揉めて弁護士費用がかかった)と後ろから羽交締めにしたそうです。
また、マネジャーはチーム全員の意見を吸い上げ、 すべての見解を検討するための意思決定プロセスを実行できるよう助力しますが、必要な場合には自ら議論に決着をつけ、決定を下なさければならなりません。「コンセンサスなんかクソ喰らえ!」だそうです。
どんなに口が悪くても、誰もがビルのハグと口汚いののしりを楽しみにしていたそうです。みんなから慕われ、コーチを望まれるのは、信頼関係があるからに他なりません。
信頼している相手には安心して自分の弱さを見せることができます。ビルは、コーチをする時、自分のコーチを受け入れる気はあるのか?と必ず聞いて、コーチングを受け入れられる「コーチャブル」な人だけをコーチングしたそうです。
コーチングには相互の信頼が必要です。「約束を守る」「誠意」「率直さ」「思慮深さ」はコーチに重要な資質であると述べられています。ビルはごくあたりまえのようにして、信頼関係と安心感、守られているという感覚を築く才能を持っていたそうです。
彼は人間の部分と仕事の部分を分けず、どんな人もまるごとの人間として、仕事とプライベート、家族、感情など、すべての部分が合わさった存在として扱ったそうです。つまり、全人的にその人を愛したということに他なりません。
彼はオフィスに行くと、一人ひとりに名前で呼びかけ、ハグして回りました。家族についても、「お子さんは元気か?」といった表面的な話ではなく、「サッカーの試合はどうだったか?」「大学はどこを考えているのか?」など聞いて、具体的なアドバイスまで親身になってしていたそうです。まさに、自分の家族だと思って接していることがわかりますね。
彼のコーチを受けた人たちは、チームメイトは人間であり、彼らの職業人の部分と人間の部分のあいだの壁を破り、愛をもってまるごとの存在を受け止めるとき、チーム全体が強くなることを学んだのだということでした。
このブログを始めた頃、Googleの「1on1」の話を読んで、これは!と思ったのですが、その原点がビル・キャンベルという人で、愛に溢れた伝説のコーチだったということが分かりました。
また、エグゼクティブコーチングの原点と言える人だということも分かりました。
彼の書いた本はなく、話も聞けないというのはとても残念ですが、(悪態は除いて笑)このような人になりたいなぁ、素敵な人生だなぁと思いました。私もこんな世界線(シリコンバレーに行きたいという意味ではない)で生きたいです。