今回は、「キャプテン・クランチの伝説 ジョン・ドレイパーとブルーボックス」(2014年)を読みました。
ハッカーの起源というと、マサチューセッツ工科大学の鉄道模型クラブというのが定説だそうですが、本書ではフォーンフリークス(Phone Freaks=Phreaks)という人達を紹介しています。面白くて、そんなに長くないのですぐ読めますよ。
フォーンフリークスとは、電話のタダがけをして楽しんでいた人達のことで、口笛でトーンダイアルの音を再現することができた「ホイッスラー」、タダがけ機械ブルーボックスのつくり方と使い方を布教して回った「キャプテン・クランチ」、ブルーボックスをビジネスにしようとした「バークレーブルー」と「うすのろトーバー」が出てきます。
フリークスを最初に始めたのは、ジョイバブルと呼ばれる生まれつき目が不自由な少年でした。5歳のときにはオンフックボタンを指で押して、1秒間に5〜10回、電話番号の数字に合わせ回線をオンオフさせることで電話をかけられるようになったそうです。
トーンダイヤルが開発されると、7歳のジョイバブル少年は口笛でダイアルトーンが出せることに気づきます。さらに、トランクラインと言われる回線に入ると長距離電話が無料でかけられることを発見し、長距離電話や国際電話をかけることに夢中になっていきました。
南フロリダ大学に進学すると、口笛を使って通話記録すら残らない方法で無料の長距離電話をするので、「ホイッスラー」と呼ばれるようになりました。
しかし、請求できない長距離電話が頻繁にあることに気づいた電話会社の社員に発見され、19歳でFBIに逮捕されてしまいます。執行猶予付きで、その後は一切手を引いたそうです。
口笛を真似できないフリークスたちは、テープに録音したり、カナリアを訓練したり、おもちゃのオルガンを使いました。
しかし、21歳で米空軍に入隊し通信関係のエンジニアとして働いていたドレイパーは、「キャプテン・クランチ」というシリアルのおまけについていた笛が求めていた音を出せることに気づきます。
受話器を上げて笛を吹くだけで、無料で電話できるようになると、彼は「キャプテン・クランチ」と呼ばれるようになりました。
さらに、エンジニアの知識と技術を活かして世界中に無料電話がかけられる「ブルーボックス」を開発します。彼は、その作り方や使い方を無料で教えて回りましたが、当然、高校生から麻薬ディーラーまでが使うようになるとFBIの捜査が入り逮捕されてしまいます。
ところがところが、彼は刑務所の中で囚人仲間にフリークスの講義を始めます。そして、昼間に外で働けるようになると、獄中で起業し、世界初のワープロソフトまで開発してしまったそうです。キャプテン・クランチは、シリコンバレーでは伝説の人物であり、現在81歳で健在のようです。
最初に言いますが、バークレーブルーの本名はスティーブ・ウォズニアック、うすのろトーバーの本名はスティーブ・ジョブズです。Appleを設立した二人がここで出てきます。
キャプテン・クランチは、ブルーボックスの使い方を二人にも教えました。バークレーブルーはローマ法王やニクソン大統領にイタズラ電話をかけて遊び、うすのろトーバーはこのブルーボックスを販売して、会社の設立資金を稼ごうと言いました。二人が販売した顧客(高校生)から捜査の手が入り、バークレーブルーはキャプテン・クランチとともにFBIに重要人物としてマークされましたが、すぐにブルーボックスの販売と製造を中止し、なんとか難を逃れたようです。
フォーンフリークスって本当に頭のいいバカだなぁと思いました。キャプテン・クランチなんてお人好しにも無料で裏技を教えて回って、刑務所でも講義したって…(笑)講義するために、監視のトランシーバーの周波数を捉えて近くに来るとアラームが鳴る装置まで作ったそうですよ。好奇心旺盛で、楽しくて×2、皆んなと共有したくてたまらなかったのかなと思いました。キャラ3の舞蝶全開ですよね。
私もこの人達のように、童心で人生を楽しみたいなと思いました。その方が楽しそう!