歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

将来の日本

今回は、未来の地図帳 人口減少日本で各地に起きること(2019年)を読みました。

 

 

少子高齢化が言われ続けていますが、とうとう私の住む地域(比較的子どもの多い地域)では、小学校の1年生が3クラス→2クラスとなり、保育園の園長先生は「昨年度、この地域で生まれた赤ちゃんが0だった」といわれていました。本当に、ヤバい状況だと思います。

 

 

人口減少

 

教育現場にいたので、少子化の影響はヒシヒシと感じてはいましたが、○○万人になるといくら言われても、さっぱり実感として沸きません。一方、どのようなサービスが維持できなくなるのかと言われると少しは実感できます。これからの日本は一体どうなっていくのだろう?という一つのシナリオについて、まとめたいと思います。

本書では、未来の人口減少がどのように進むのか地域別に書かれていますが、著者さんは人口減少を地域別に考え、自分の地域だけ人口を維持しようとするのではなく、日本全体として人口減少を前提として、それでも「豊かさ」を維持できるよう社会システムを根本から変えていく必要があると述べています。

 

 

行政サービス

 

2045年頃になると、地方では「行政サービス」が届かないという問題が発生します。ただでさえ高齢者が増えていくのに、税収が減り、職員数を維持できないため行政職員は減らさざるを得ないでしょう。総務省は、2040年には小規模市町村において職員を十分確保できなくなると指摘しているそうです。

また、成年人口が少ないということは、市長や市会議員などの立候補者も減ります。立候補者数が議会を成り立たせるのに最低必要な人数を下回ることを懸念せざるを得ないだけでなく、市町村長への立候補者すら見つからないといった状況まで出てくるかも知れません。毎回無投票当選ということになれば、行政のチェック機能は機能しなくなり、民主主義の崩壊にもつながる危険性があります。

 

 

医療・介護サービス

 

2036年の推計によると、医師数は足りる計算ですが、医師が大都市圏に集中する「偏在」が起こります。医師のいない地域、つまり「無為地区」が広がっていきます。本書には書かれていませんが、もちろん看護師も他の医療職、歯科衛生士も高齢化による需要の増大に反し大幅に不足すると考えられます。

地域包括ケアシステム,厚生労働省

現在、国は「在宅」を推進する地域包括ケアシステム(上図)を進めています。これは、医師や看護師、介護スタッフだけでなく、地域住民の協力なども得ながら高齢者が地域で最後の時を迎えられるようにしようというものです。しかし、今後起こるのは、家族や地域に支え手となる年代がいないという事態です。患者や要介護者の日常生活の多くは、家族や地域住民のサポートを当て込んでいますが、今後の支え手不足を考えると、元気なうちから高齢者を集めて住ませる他ないのではないかという意見でした。

本書に書かれている、大型ショッピングセンターに高齢者住宅を作るというのは、私も良い案だと思います。

 

 

首都東京の未来

 

人口集中が続く東京も、2030年にはピークアウトします。若者中心のビジネス街だった東京は高齢者のオールドタウンと化します。高齢者向け施設整備の遅れから、23区では「介護難民」や年金受給額の減少や医療費・介護費の高騰に伴い賃貸物件に住み続けられなくなる「住宅難民」が深刻な問題として浮上してきます。

2034年頃になると、地方で一人暮らしをしていた高齢者が子供世帯を頼る形で東京圏へと流入してくると予想されています。23区中7区では0~14歳の子どもの総人口に占める割合が1割を切り、小中学校の統廃合が進みます。80歳以上の住民が増えれば、バスやタクシーの乗降に手間取り、道路渋滞や鉄道の遅延が慢性化します。

都心のオフィス街から放射状に伸びてきた街は、まだら模様となり、所有者不明の物件や高齢住民ばかりで建て替えがままならないマンションが増えます。2030年代の通勤限界圏では、不動産の「無価値化」が拡大する可能性があります。

 

 

ドット型国家

 

このような未来に対し、人口が減ろうとも豊かさを維持するためには、世界の中で「なくてはならない存在」を目指すべきだと主張していました。

まず、既存自治体とは異なる「拠点(王国)」を各地に作り、古代中国やヨーロッパにあった城郭都市のように、運送業や医療サービス、介護サービスを人手をかけずに提供できる体勢を維持します。行政サービスのうち民間企業や個人でできることは自ら行えば、道路や水道、電気といった公共インフラへの対応も、人口の少ない王国内においては可能になります。

また、各王国に住みたいという人が集まるよう工夫し、アーティストが集まる「王国」IT技術者が集まる「王国」と言ったように、「世界になくてはならない」特徴を創出します。人口が減るならば、減ったサイズで身の丈に合った社会を築いていく必要があるということです。

 

 

まとめ

 

私もずっと海外労働者の受け入れや地域包括ケアシステムには疑問を持っていて、特に僻地では住み慣れた地域でというのが厳しいのではないかと思っていたので、著者さんの意見にそうだよね~とずっと頷いていました。

また、歯科衛生士はどうなるかなと予想してみると、人手不足による地方歯科衛生士会の解散や統廃合が進み、著者さんの言うコンソーシアムのような、医療職の団体として統合していくのかも知れません。病院や施設に1人どころか、その地域に歯科衛生士が1人しかいないなんてところも出てきて、インターネットでのつながりや情報交換がより重要になって来るのではないかと思いました。歯科衛生士会の会員、会員外を問わず、そういったつながりの形作りを今から模索しておかないといけないのかも知れませんね。

本書を読んで、もう日本は子育て支援の段階ではないのだと思い知らされました。私も次世代の歯科衛生士に何を残せるのか、考えて行かなければいけないなと思いました。