歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

彼女は頭が悪いから

今回は、彼女は頭が悪いから(2018年)を読みました。

 

本書は、 2019年に第32回柴田錬三郎賞を受賞し、 同年4月の東京大学入学式で祝辞に招かれた上野千鶴子も本書のきっかけとなった事件に言及している、学歴社会を批評した小説です。

読み終わった時の感情は正直、胸糞悪いし、とても辛いです。でも、私たちが考え、解消していなければいけな格差の問題が詰まっていて、とても考えさせられる作品でした。ネタバレを含みますので、これから読まれる方はご注意ください。

 

 

この小説が書かれたきっかけ

 

ラジオで聞いた東大生5人が1人の女子学生に対する強制猥褻行為の罪で逮捕されたというニュースをきっかけに、サークル活動で知り合った他大学の女子学生たちに対して、『彼女たちは頭が悪いから見下していた』との証言から感じた、いやな気分といやな感情を探る中で生まれた創作小説になります。

登場人物のそれぞれの生い立ちや事件までの人生経験が丁寧に書かれており、それぞれの立場、本人や家族の考え方が分かるからこそ、とてもいやな気分を全身で感じるこのとできる作品だと思いました。

 

 

東大生

 

加害者側の主役として出てくる竹内つばさは東大理Ⅰ(工学部)で、裕福で恵まれた家庭の生まれで、 自分で家賃も払ったことのないボンボンです。弟あるあるで要領も良く、パドルテニス部では他校マネージャーをいつも名前に関係なく「朝倉」と「みなみ」と呼び、女慣れしています。

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東大の友人には本を書いた奴、母親がテレビのコメンテーターなどいて、そんな友人達と「星座研究会」を立ち上げますが、これは、東大生目当てのバカな女性(近隣のお茶の水女子大、水谷女子大生)を集めるための集まりでした。この星座研究会で親密になった女の子の写真や動画を裏サイトで売って小金を儲けたりもしていました。

 

 

水谷女子大生

 

被害者側の主人公は、偏差値48の水谷女子大学総合生活学部・グローバルデザイン学科に通う神立美咲です。父は給食センターで働き、母はパート、弟、妹がいて、横浜の郊外に暮らしています。日頃から家族のお世話をよくしている様子が描かれていて、あまりお化粧もしない、ごくごく庶民的で地味な女の子です。

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つばさとの出会いは、友人に誘われて行ったオクトーバーフェストで星座研究会のメンバーと偶然となり同士となり、一緒に飲むことになったというのがきっかけでした。つばさに誘われそこを抜け出し、一気に親密になります。

つばさにとっては、一時的な興味だったのかも知れませんが、美咲にとっては初恋でした。

 

 

別れたいけど別れられない

 

美咲は自分が大事にされていない、セフレだと気づいていたものの、ズルズルと呼ばれたら会いに行ってしまう関係を続けてしまいます。そこには、将来有望な東大生を逃してたまるかというしたたかさなどなく、ただ純粋に彼のことが大好きで、セフレでも構わないから一緒にいたい、もう一度会いたいという思いだったように思います。そして、あの事件が起きてしまいます。

呼び出された時、美咲は二人きりになった時に別れを伝えようと決心していました。しかし、その場を白けさせて、つばさに恥をかかせるわけにはいかないと、作り笑いで応対し、過剰に飲酒してしまいます。

 

 

事件後の行動

 

優秀な東大生たちは、美咲が逃げ出した後の対処も一流で、皆で手分けして裏サイトや書き込みを全て削除します。途中まで飲み会で一緒だった女性も含めて口裏合せ、証言内容の確認をし、事件がニュースになると、複数のSNSアカウントを作り、美咲を誹謗中傷し始めます。美咲の自宅や自宅の電話番号はネット上に晒され、自宅に見知らぬ人から誹謗中傷の電話がかかってきます。

東大生の親たちもすぐに弁護士を雇い、示談にしようと何度も何度も連絡してきます。

 

美咲が偉かったなと思うのは、東大を自主退学するのであれば示談に応じると言えたことで、自主退学しなかったつばさを含む3人は逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受け、結局東大を退学に追い込まれました。

それでも彼らも彼らの親も、「災難に遭った」「変な女に騙されて感情的に訴えられた」という考えしかなく、事件当日の美咲の行動も気持ちも最後まで理解できません。それが無性に腹が立つと同時に、無力感を感じてしまいます。

 

 

まとめ
 
本書の最後は、
彼らがしたかったことは、偏差値の低い大学に通う生き物を、大嗤いすることだった。彼らにあったのは、ただ「東大ではない人間をバカにしたい欲」だけだった。
となっていますが、本書はフィクションですし、東大生が皆、他人をバカにしているとは私も思っていません。しかし、どこにでも他者を見下すことで自分を満足させるタイプの人っているよな~と思います。
美咲は男を見る目が無かったし、あんな男からはすぐに離れるべきだった!斉藤一人 今だから語りたい、いちばん大事なこと(2023年)にも書かれているように、嫌なことをする人、感謝しないような人とは付き合わなくていいんだよ!!と言いたいです。
現実には美咲はいませんが、それでもその苦しみを糧にして、乗り越えて幸せになってほしいなと思ってしまいます。