歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

弱者の人材採用

全国的な歯科衛生士不足

日本は少子化待ったなしの状況ですが、歯科衛生士不足もかなり問題になっています日本歯科衛生士会のHPには求人倍率22.6倍と掲載されていましたが、歯科衛生士養成校に来る新卒求人も40倍などはザラです。厚生省のデータ(令和5年1月)によると、保育士の有効求人倍率は3.12倍ということなので、歯科衛生士不足の凄まじさがわかると思います。

歯科医院数に対する就業歯科衛生士の割合(全国平均)は1.9人※であり、実際、給料を上げて、高い広告費を出して求人情報サイトに載せても応募は0といった状況です。

※令和3年度全国歯科医院数(厚生労働省医療施設調査,2022年)を令和2年度末現在の都道府県別就業歯科衛生士数の90.9%(歯科診療所に勤務する歯科衛生士の割合)の値で割って算出

 

 

なぜ歯科衛生士が不足するのか

なぜ歯科医院が歯科衛生士を雇いたいのか、歯科助手ではダメなのかと言うと、歯科衛生士が居ないと算定できない点数があるからです。また、歯科助手歯科医師のお手伝い(診療の介助)はできますが、患者の口の中に手を入れることはできません。

一昔前は歯科助手が何でもする(法的にはアウト)歯科医院も多かったのですが、今はSNSですぐに拡散される危険もあり難しくなっています。

また、「虫歯の洪水」と言われたら80年代からすると、歯を削るような「治療」はかなり減り、虫歯予防や歯周病治療やメインテナンスでユニット(歯医者さんの椅子)を任せられる歯科衛生士が欲しい、回転アップ⤴️収益アップ⤴️につながると言う訳です。逆に言うと、歯科衛生士を雇えない歯科医院は存続が危ういということですね。

 

 

弱者の人材採用

前置きが長くなりましたが、今回は「小さな会社こそが絶対にほしい! 「化ける人材」採用の成功戦略」(2022年)を読んで、歯科医院の採用でも参考になるなと思ったのでご紹介します。

 

 

 

誰でもいいからではダメ

ある程度有名で採用にお金も人も割ける強者は、優秀な人材をいかに精度高く見抜いていくかが重要な戦略になる一方無名で採用にお金にも人的資源にも限られる弱者は、いかに必要な人材を特定し、限られた資源で狙い撃ちにできるかが重要だそうです。そのために、採用したい人材の求める人物設定を明確化してから自社の訴求ポイントを導き出すというプロセスが大事だということでした。

求人を出してもどうせ応募がないので、来てくれるなら誰でもいいと言われる院長先生ってとても多いのですが、私もこの意見には反対します。誰を雇うかはとても大事な問題で、どんな人に来て欲しいのか、職員間で話し合って明文化することは絶対にすべきだと思いました。そして、その人物像をプロファイルすれば、最も欲しい人材が集まる場所はどこなのか?新卒なのか?経験者なのか?その人は何を欲しているのか?どのような職場や労働条件で働きたいのか?など、アプローチの相手や方法、今の歯科医院改善策も浮かぶと思うのです。そして、そのような人が見る媒体に資金を投入するというのが最も効果的な求人になるのではないかと考えました。

 

 

採用要件と育成要件

本書によると、「ニッチな人材」採用時の能力は低いが、成長角度や教育効果が大きい人材を採用するようにすると良いそうです。知能、創造性などの変わりにくい能力を採用要件とし、経験やコミュニケーション能力などの変わりやすい能力は採用の判断にしないと割り切ることが有効だということです。

歯科衛生士においても、学校での成績は優秀だったのに、働き始めるとすぐに病んで辞めてしまうという人が結構多いんです。逆に、学校での成績は悪かったけれど、働き始めると才覚を発揮して昇格していく人もいます。その歯科医院の規模や人員にもよりますが、採用要件、育成要件の見極めは採用を始める上でよく話し合っておくべきだと思いました。特に、院長先生はこの部分は育成要件だと思って採用しても、実際に育成する立場の先輩歯科衛生士はそうは思っておらず、「こんなことも出来ないの」と言ってしまうなんてことも多いと思います。せっかく入った歯科衛生士が離職してしまわないよう、スタッフ間でよく話し合うことが大事だなと思いました。

 

 

まとめ

全国的な歯科衛生士不足にもかかわらず、少子化の影響で歯科衛生養成校の定員もなかなか充足できないというのが現状です。2021年(令和3年)10月1日現在の人口統計によると、前年に比べ61万8千人の日本人が減っており、10年連続で減少幅は拡大しているのだそうです。つまり、今後は歯科衛生士を獲得できずに潰れる歯科医院が増えていくことが予想されます。

一方、雇った後で後悔しても辞めさせるというのは容易ではありませんし、お互いにデメリットしかないと思います。イキイキと楽しそうに働く歯科衛生士が増えれば、「歯科衛生士になりたい!」と思う中高生も増えると思うので、歯科医院の先生方、スタッフの方々にも採用についてもっと検討してみてほしいなと思いました。