歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

親しい人との日常的なつながり

今回読んだ本は、うらやましい孤独死(2021年)です。

 

 

 

 

高齢者医療の現状

 

医療費の高騰が叫ばれる昨今ですが、病院は高齢者ばかりです。私の祖母も脳梗塞で意識を失い、胃ろうをして3年寝たきりで意識が戻ることもなく入院先で亡くなりました。実娘の母は、胃ろうなんてしなければ良かったと今でも後悔しています。

 

本書は、財政破綻が起こった夕張市での医療経験や在宅での看取りの経験から、医師としての苦悩、葛藤から高齢者の死について語られており、超高齢社会に突入した日本の医療や福祉は今後どうあるべきか考えさせられる内容でした。

 

 

地域とのつながり

 

本書では、認知症があっても地域の人々の支えによって自宅で暮らすことができた例を「うらやましい孤独死として紹介しています。国がすすめる「地域包括ケアシステム」においても、

高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。

と謳われています。この時の「包括」には、老人クラブ自治会といった地域住民やボランティアも含まれます。

 

分かりますよ。分かるのですが、農村のような田舎でなければ成り立たないよね、と思うのです。今や専業主婦は絶滅危惧種ですし、定年はどんどん延長し70歳を過ぎても働いているのは当たり前です。いえ、働かなければ生活できないと言った方が正しいかもしれません。私は高齢者ではないので分かりませんんが、元気で、昼間に動けるような方って仕事をされているのではないでしょうか?それが資本主義社会の現実なのではないでしょうか?

私の住む地域では、子ども会やPTAだけでなく、自治会長や民生委員もなり手がおらず苦労しています。大都市でなく小規模の町であっても、お隣の家のお祖母ちゃんの面倒を見に行くなんて、そんなに時間を持て余した人がいる?と思ってしまいます。

 

 

日本の村社会

 

日本は農耕を中心に狭い土地で村社会を形成してきたため、協調性を重んじ、集団主義的で、部外者には排他的であると言われています。「村八分」という言葉からも仲間と仲間以外を分ける線がありますし、田舎に移住し、仲間の一員になったものの、近所づきあいが濃厚で面倒が多くて後悔したなどよく聞く話です。

人と人とのつながりが大事だということは十分よく分かります。特に認知症の方を地域で支えるには、「お節介」というほどの手出しが必要になります。それこそ昔の「村」社会のように、近隣住民との濃密な関係(勝手に家に上がれるくらい)が必要でしょう。

グローバル化・デジタル化した現代において、「村」への回帰が適切であるのか、それとも、地域によってはもっと違う道を目指す必要があるのかと考えてしまいます。

 

 

ネット上のコミュニティ

 

若者を見てみると、今や趣味の仲間やグループはネットを介して繋がることが多いと思います。「リアルで」という言葉があるように、ネット上だけでの人間関係も成立します。リアルでは面倒な人間関係も、ネット上では気に入らない相手は排除(ブロック)して、気の合う仲間とだけストレスフリーな関係を維持できます。更に仮想現実内では、自由に動かせる体と年を取らない外見を手に入れることも可能ですね。

 

しかし、ネット上の仲間がリアルで助けてくれるか?というと、少し難しいかもしれません。海外など、物理的に難しかったり、会えたとしても日常的にお世話になるのは無理という場合がほとんどでしょう。また、認知症などによりログインできなければ、そもそもつながることができません。災害時も同様です。また、ネット上の会話は言葉一つで誤解され、炎上し、孤立する場合もあります。

 

そうなると、やはりリアルでの人と人とのつながりが重要というところに戻って来てしまいます。

 

 

コミュニケーションスキル

 

本書では、隣人祭り」や「みま~も」などの地域で良好な人間関係を取り戻す活動が紹介されています。2017年の日本で行われた調査では、高齢の独居男性の会話の頻度が2週間に1回以下だったのだそうです。これは、歯科衛生士の立場的にも口腔機能低下を招く由々しき問題です。イギリスでは、医者が「社会的保障(Social Prescribing)」として地域のコミュニティーにつなぐという処方ができるそうで、専門の「リンクワーカー」がいるのだそうです。

 

しかしですよ、社会的に孤立してしまった高齢者というのは、それまでの人生において周囲の人と良好な人間関係を構築できなかった、つまり、コミュニケーションスキルが十分でない人も多いのではないかと思うのです。地域の集まりに繋いだとしても、横柄な態度や人を気遣えない行動をすれば、場になじめず、また孤立してしまうのではないでしょうか。実際、デイサービスでも男女問わず周囲の人と仲良くできる人もいれば、できない人もいますよね。

高齢になると人は新しいことは覚えにくく、性格も頑固になると言われます。となると、コミュニケーションスキルをもっと早い段階で学ぶ必要があるということになります。何だか、学校で勉強を教えている場合ではないように思えてきました。

 

 

まとめ
 
過去記事頑張れない非行少年の時にも思いましたが、福祉の問題というのはとても難しい問題だと感じました。
 

ddh-book.hatenablog.com

 

自分が望む老後を迎えるためには、できるだけコミュニケーションスキルを磨いて、リアルで家族や友人などと良好な人間関係を作るようにすること、エンディングノートを書いて家族にどのような最期を迎えたいのか(胃瘻はしないなど)をはっきりと残しておくことが大事なのかなと考えました。