今回は、「むずむず脚症候群 異説・もう一つの治療法―改訂版ー」(2016年)を読みました。
実は私、ずっと前からむずむず脚症候群に悩まされてきました。息子を出産する前からなので、もう10年以上になります。筋金入りのむずむず脚症候群患者である私自身が、本書で提唱されている治療法に取り組んだ結果をもとに検証していきたいと思います。(ちょっと長いです)
むずむず脚症候群とは
レストレスレッグス症候群とも呼ばれ、下肢(脚)を中心にむずむずする、痛い、かゆい、皮膚に虫がはうような感じがするなどの不快な感覚が生じ、下肢を動かさずにはいられない衝動を伴う病気を指します。夜間の安静時に生じることが多く、不眠の原因になりますが、下肢を動かせば(歩いたりストレッチをする)とその時だけ症状が軽減するという特徴があります。
むずむず脚症候群の原因
今の医学界での定説は、脳内の神経調節に関わる“ドパミン”と呼ばれる神経伝達物質の機能異常が病気のメカニズムだろうということです。鉄欠乏性貧血や、パーキンソン病・脊髄小脳変性症・ハンチントン病・多発性硬化症などの神経疾患、関節リウマチ・シェーグレン症候群などのリウマチ性疾患、糖尿病や甲状腺機能異常などの内分泌疾患、腎不全、人工透析、うつ病、慢性肝疾患、慢性閉塞性肺疾患などと関連して発症するとも言われます。男性よりも女性に多く、年齢が上がるほど多いことも分かっています。
むずむず脚症候群の治療法
一般的な治療法は、カフェインや喫煙・飲酒を避ける、ストレッチをする、運動をするといった生活習慣の改善の他にも、鉄分の補充、睡眠導入剤の使用や弱くなったドパミン神経の働きを補う飲み薬や張り薬、抗けいれん薬が用いられます。
私も鉄剤やレンドルミン(睡眠導入剤)の処方を受けていたこともありましたが、お薬の服用はできるだけ避けてきました。もちろん色々と調べてはいたので、むずむず脚症候群用のサプリを服用したり、鉄サプリの服用もしてみましたが、改善はみられていません。もちろん、カフェインは午後3時以降摂らないようにしていますし、運動も心掛けています。
本書で提唱されている原因
まず、動脈は下図のように三層構造になっています。
血管は、血圧に対して丸い形を維持するために、輪状の平滑筋に囲まれています。つまり、最高血圧時には筋肉が引き締まり、最低血圧時には緩むというように、常に働いているということです。
また、下腿血管の断面図は以下のような力が常にかかります。
A:血管内から血管壁にかかる力(血圧)
B:血管壁の輪状平滑筋が血管をひきしめる力
C:血管外の組織から血管を圧迫する力
日中はCが大きいので平滑筋(B)は一生懸命働かなくても大丈夫ですが、夜間寝た姿勢になるとすねのリンパ液や組織液が分散してCが減少します。すると、平滑筋(B)は血管の形を保つために頑張らなくてはならなくなります。血管壁の伸縮性や柔軟性には個人差があるので、不自然に筋肉を緊張させると刺激が脳に伝達され、むずむずとした違和感になっているのではないかということでした。(図と本文で書いてある内容が違い、なかなか仕組みが理解できなかったので、自分自身の理解に合わせて書き方を変えています。間違っていたら著者さんごめんなさい)
私の自覚症状
- 入眠も悪いが、深夜に目覚めて、むずむず脚で眠れなくなるパターンが多い
- 冷え性というほどではないが、冬は油断するとしもやけができる
- 血管は細い(採血できないほどではない)
- 血圧はいつも低い(最高血圧100前後)
- 身体はかたい(つま先に手が届かない)
- 鼠径部を圧迫する下着は苦手(脚むずむずする気がする)
本書の原因を参考に実験してみた
①着圧ソックスを履いてみる
仕事から帰宅して、足を投げ出して座っていると何だかむずむずし始めます。そこで、以前出産時に病院から処方された着圧ソックスを履いてみました。Cの血管外の組織から血管を圧迫する力を増やす作戦です。
すると、むずむずは軽減しましたが、穴が開いていて圧のあまりかからない足の甲や足首あたりがむずむずし始めました。また、入浴後も着圧ソックスは効果がみられませんでした。
②入浴中、足に水圧がかかった状態とかからない状態で比較してみる
足に水圧がかかればむずむずしないはずだと思ったのですが、こちらは水中だろうと、水から出ようとむずむずし始めてしまいました。
これらの結果から、著者さんの言っているスネの動脈だけでなく、足首〜足の甲にかけての動脈も関係しているのではないかと思います。
また、入浴により血管が拡張すると、水圧で押さえられているにも関わらずむずむずを感じ、その後も続いたことから、血管が無理に拡張しようとする時にも、血管周りの平滑筋が無理に伸びることで異常を神経がキャッチしてむずむずした知覚を感じさせているのではないかと思いました。血管が細い人や身体(筋肉)が固い人にむずむず脚が多いのも説明できるのではないでしょうか。
本書で提唱されている治療法
著者さんはむずむず脚症候群と思われる症状の患者には、下記のビタミン剤の処方をして、一定の効果をあげているそうです。
- ユベラ錠(50㎎)1回2錠 1日3回食後に服用
- メチコバール錠(500㎍)1回1錠 1日3回食後に服用
商品名:ユベラ錠(ビタミンE)
ビタミンEのことであり、抹消の血管を拡張させる作用があるそうです。
医薬品添付文書で調べたところ、ビタミンE欠乏症、末梢循環障害への効果があると明記されており、副作用としては、0.1~5%未満で便秘、胃腸不快感、0.1%未満で下痢、発疹と記載されていました。
また、ビタミンEは脂溶性であり、1日当たりの耐容上限量は成人女性で650~700㎎です。日本人の食生活において、食事に極端な偏りがない場合、ビタミンEが不足することはほとんどないと考えられているそうです。
ビタミンEの処方量は1日300㎎であり、市販のサプリと比較しても量は変わらないようでした。薬局などで手軽に手に入れられそうです。ナッツ類やうなぎ、豆乳に多く含まれています。
商品名:メチコバール錠(ビタミンB12)
こちらはビタミンB12のことであり、抹消神経を保護する作用があるそうです。神経に負担がかかることで生じる痛みを緩和する働きがあり、歯科でも、親知らずの埋伏歯抜歯の後などでしびれが残った患者さんに処方されることがあります。
医薬品添付文書には、末梢神経障害に対して効果があると明記されており、副作用は0.1~5%未満で食欲不振、悪心・嘔吐、下痢、0.1%未満で発疹でした。
また、ビタミンB12は水溶性ビタミンであるため上限量は設定されておらず、摂取目安量は、成人男女ともに一日あたり2.4μgです。魚介類や肉類、卵に主に含まれています。
こちらは、市販のサプリでは100㎍しか入っておらず、同じ量を服用したければ1日15粒飲まないといけません…水溶性だから飲み過ぎても大丈夫とは言え、コスパが悪すぎます。海外製であれば1000㎍含有といったものもあるみたいですが。
効果のありそうな漢方薬
冷えや血流を解消するという考え方で漢方薬を調べてみると、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)というものが出てきました。
体力中等度以下で、手足の冷えを感じ、下肢の冷えが強く、下肢又は下腹部が痛くなりやすいものの次の諸症:冷え症、しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛、下痢、月経痛に効能・効果があるとされています。さらに、注意する症状としてむくみがあり、ピッタリかも知れません。コスパが問題ですかね。
サプリメントを服用してみた結果
とりあえず、ビタミンEを毎日飲んでみることにしました。私の場合、夜中に目が覚めて、足がむずむずして明け方まで眠れないという下記のようなパターンが多いです。日々疲れてはいるので(笑)、一旦は眠るけど、眠りが浅くなった時にむずむずして目が覚めているのかも知れません。
夜中に目が覚め、足のむずむずした違和感から3時間くらい眠れていません。むずむずが一番ひどいときを100とすると、80といったところでしょうか。眠いけど眠れない、そんな辛い時間が長く続きました。
では、ビタミンEのサプリを飲み始めてからの記録を見ていきましょう。
<1日目>
ここ3日ほど本当にむずむずがひどくてあまり眠れていなかったので、正直、サプリを飲まなくても朝までねていたのではないかな?とも思います。むずむず度は0です。
<2日目>
いつも通り?夜中に目が覚めましたが、足のむずむず感はあまりありませんでした。一番ひどいときを100とすると、20~30くらいで、何か感じるけど眠れないような違和感までは感じないといった感覚です。1時間ほどで再入眠できています。
<3日目>
この日も夜中に目覚めましたが、脚のむずむず感は全くありませんでした。暑くて眠れずスマホをいじっていた為再入眠までに時間はかかりましたが、むずむずは全くと言って良いほど感じていません。
<4日目>
夜中に一度起きましたが、概ね朝まで眠ることができました。寝る前に30〜40くらいのむずむずした違和感を感じましたが、一時的でした。
<5日目>
寝る直前に50〜60くらいのむずむずを感じ、入眠に少し時間がかかりましたが、朝までぐっすり眠れました。2日連続で朝まで寝るのは、私にはめずらしいことです。
今回の検証で分かったことは、以下の2つになります。
まとめ
今回はビタミンEのサプリメントを服用してみましたが、本書の見解同様、効果を実感しました。やっぱり睡眠薬やパーキンソン病用の薬は飲みたくないので、今後もビタミンEの服用を続けて長期服用の効果も検証していきたいと思います。
また、ビタミンEの服用だけでは効果がないときの対策として、ビタミンB12や漢方薬を服用してみても良いかもしれません。適度な着圧ソックスを履くというのも考えられますし、足の血流を増やすために室温を下げ過ぎないようにするとか、ストレッチをするとか、生姜などの血行を良くする食品を多く摂るようにするというのもいいかもしれません。
冷えや血行不良で細く、固くなった血管周りの筋肉を温めて柔らかくするイメージで対処していくと良いかもしれないなと思います。
過去記事「妊娠と糖尿病とケトン体」の時もそうでしたが、医学界の当たり前を疑って、反発覚悟で声をあげてくれる先生方には敬服いたします。
10年以上むずむず脚症候群に悩まされた私から、御礼申し上げます。本書を出版していただき、ありがとうございます!
足のむずむずで眠れなくて困っている方に本書が届きますように。