橘先生の「スピリチュアルズ 「わたし」の謎」(2021年)を読んで衝撃を受けたので、ご紹介します。
今回は特に、共感力とメンタライジングの違いについて勉強になったことをまとめたいと思います。
フェイスブックの「いいね!」から性格を予測できる
10の「いいね!」で同僚以上、70の「いいね!」で友人レベル、150の「いいね!」で両親レベル、250の「いいね!」で配偶者レベルにその人のことが分かるようになるのだそうです。性格(心理的特性)だけでなく、人種、性別、宗教、政治的立場でさえもです。その人が最も購入行動をする表現を使って広告を操作したり、選挙で特定の人に投票させるような心理的操作もビッグデータをAIにディープラーニングさせれば容易にできそうです。
過去記事「ジャーニー型のビジネス」でも学んだ通り、顧客の情報を集めてAIが分析することは今後当たり前になっていきますが、改めて驚いたとともに、恐怖すら感じました。
無意識のビックエイト
標準的なビックファイブ(パーソナリティの5因子)とは、「外向的/内向的」「神経症傾向(楽観的/悲観的)」「協調性(同調性+共感力)」「堅実性(自制力)」「経験への開放性(新奇性)」を言うそうですが、本書では他者に対して無意識に注目する要素として以下の8つを挙げています。
①内向的/外向的
②楽観的/悲観的
③同調性
④共感力
⑤堅実性
⑥経験への開放性
⑦知能
⑧外見
上記の8つの要素は先天的に持つ特性と後天的に得る特性とがあるとのことでした。これらの特性は無意識の中に存在するため、意識的に自分の特性を抑え込もうとしても上手くいきません。
共感力
前置きが長くなりましたが、ビックファイブの一つでもある共感力とは「相手と感情を一致させる能力」のことで、後に説明するメンタライジングとは違うものだそうです。共感力には明らかな性差があり、女性の方が高いということです。
過去記事「男性脳と女性脳」の黒川先生も共感力の男女の違いについて書いています。男性ホルモンのテストステロンが共感力を抑制するのだそうですが、共感力の低い男性でもバソプレシン受容体の遺伝子型が長い人は家庭を守るようになるのでオススメということでした。黒川先生の本の愛読者である私は、家庭を顧みずに必死に仕事をする男性(本人は家族を守ろうとしている)の姿が思い浮かんでしまいましたが…。
また、「共感力」が高いとすごくいい人のような気がしますが、実は、ガンジーやマザーテレサといった博愛主義者の「共感力」は低いのだそうです。共感力が低いからこそ広い視野で自分とは異なるひとたちの幸福を真剣に考えることができる訳で、「共感力」が高い人は「自分たち」と「自分たち以外」に世界を分断し「自分たち以外」に対して排他的になってしまうということでした。
医療者には共感力が絶対に必要だし、人類皆が共感力を持てば平和になるなんて思っていたので、これには驚きました。
メンタライジング
一方、メンタライジングは「相手の意図・視線・注意・気持ちを理解する能力」であり、共感力とメンタライジングの両方が高い人はコミュ力が高いと言われますが、どちらも低いと自閉症、共感力は高いがメンタライジングは低いとアスペ(現在は自閉症スペクトラム症に含まれます)となるそうです。また、共感力は低いがメンタライジングが高いタイプの人はサイコだそうですが、このタイプは皆犯罪者という訳ではなく、経営者や社会的に成功した人に実は多いのだそうです。
私も共感力とメンタライジングは混同していたので、こう説明されるとやっぱり違うものだと理解できました。
アスペルガー症候群
私の元夫は未診断アスペ(受動型)で、メンタライジング能力が皆無のは間違いありません。本書を読んでいて、共感力については「自分たち」と「自分たち以外」の境界線の引き方が一般の人と違うよなと感じます。野波ツナさんの本に詳しく載っていますが、自分に近くて、夫とか親とか、自分の立場が変わっても本人の立ち位置は独身時代(学生時代?)のままといった感じです。結婚後別人のようになるのは、境界線の中と外の違いだったのかもしれません。
離婚しても(を求めても)変わらない言動や行動はとても奇異に映りますが、変化に弱い特性を考えると、メンタライジングの弱さに加えて境界線の変化を受け入れていない為にしている行動だと理解できます。
まとめ
本書を読んで、共感力が高ければ高いほど良いという考えは全く間違っていたと分かりました。人間の進化の過程で、芽が出ない雑草(過去記事参照)のように様々な特徴を持った人が生まれること、日本のような狭いコミュニティでは選択的に選ばれたタイプの人が人為的に増えたということはすごく納得できました。
本書からはまだ書きたいこと、学んだことがあるので、それはまた次回にしたいと思います。