前回「共感力とメンタライジング」の続きです。
橘先生の「スピリチュアルズ 「わたし」の謎」(2022年)を読んで、まだ書きたいことがあるので、今回は、スピリチュアルと自己啓発について考えたことをまとめたいと思います。
意志力の消耗
前回の記事に書いたように、ビックエイトという8つのパーソナリティー因子があり、それらは無意識の中に存在しています。先天性の割合が高い因子もあれば、後天的にある程度獲得できる因子もあるようです。
ここで注目すべきは、自分の無意識に意志力で逆らおうとすると欲望をコントロールできなくなったり、病気になってしまう可能性が高いということです。
ダイエットしようとすると痩せられない
本書の中では、トルストイの「シロクマのことを5分間考えずにいられるか」という逸話や様々な実験から意志力は消耗品であることを説明していますが、私にはダイエットの話がとても腹落ちしました。
一日の摂取カロリーを制限すると、無意識から発せられるアラート「食べなさい」というシグナルを「意識力」によって無視しなければなりません。食べることを拒絶すればするほど食べ物に囚われていき、さらに意志力を消耗します。依存症と同じですね。意志のちからでスピリチュアルに抵抗することは難しいというのがよく分かりました。
自分を知ること
じゃぁ、どうすれば良いのかと言うと、自分の内面を知り、無意識の欲求に逆らわないようにすると良いようです。例えばダイエットでは、「チョコレートは絶対に食べない」ではなく、「楽しみはあとにとっておこう」と考えると、無意識のアラートが鳴ることはありません。外向的な人と内向的な人では向いている職業も違うでしょうし、無理に頑張っても体を壊すだけです。共感力が低くメンタライジングが高い人は、会社員には向かず、経営者の方が向いているかも知れません。
過去記事「エニアグラム」で自分のタイプを知ることは生きる上でとても有用だなと感じましたが、自分の心理特性を知っておけば、生きやすくなるなと思いました。
自尊心は高めなくてよい
また、ビッグエイトの中に「自尊心」が含まれないことについても詳しく述べられていました。「自尊心」が高いというのはあまり良いことではないようです。自尊心を伸ばすための褒めて伸ばす子育ても研究者から否定されているそうです。
私も褒める子育てには懐疑的だったので、そうだよねと納得でした。
自己啓発の使い方
私は自己啓発本が大好きなのですが、自己啓発本に感化されて自分のパーソナリティと違うことを無理にするのは寿命を縮めるかも知れないそうです。全てのパーソナリティが固定されたものではないものの、簡単に変えることはできません。本書では、自分のスピリチュアルにあった物語を作ることを勧めています。
何にでも挑戦してみるのは大事だけれど、「頑張ればどんな困難も乗り越えられる」系の自己啓発には危ない面があるなと思いました。
まとめ
本書には、ビッグエイトの検査も掲載されていますが、検査よりも自分の内面を深く知ること、自分は何が嫌で、何が好きなのか、を見つめることが自分のスピリチュアル・パーソナリティを知ることに繋がるのではないかと思いました。
以前、誰かが言った「無駄な努力」と言う言葉に強く怒りを覚えた記憶がありますが、今なら「無駄な努力」はやめよう、と心の底から言えます。