今回は、「人生を変える幸せの気づき:消防現場32年で学んだ本当の幸せとは」(2022年)と「消防人生いろいろ 放水できなかった消防士」(2020年)を読みました。
私も先日、ファミリーサポートの講習で救命救急処置を学んできたので、ある日突然命が奪われるというのが少し近い感覚としてあります。これまで知らなかった消防士・救急救命士の裏側について学んだことをまとめたいと思います。
救急救命士として働くためには、「救急救命士」の国家資格が必要です。受験資格は救急救命士の大学や専門学校の養成課程を修了、または、消防官として5年以上勤務し(もしくは2000時間以上救急活動に携わり)、指定の養成所で研修を受けることでも受験資格を得られるそうです。
救急救命士は、医師からの具体的な指示のもと、次の5つの特定行為を行うことができます。
平成3年に救急救命士法が制定・施行されており、本書の著者さん方はどちらも最初は消防士さんでした。
そういえば昔、テレビで食事も職員が作っているというのを見たことがありますが、消防・救急の現場活動だけでなく、経理や広報といったお仕事があることは初めて知りました。非難訓練や救急救命の講習では、必ず、「もし緊急出動があった場合は出動します」と言われていたり、「今日来るはずだった○○は、緊急出動のため来れません」といった話をされるので、予定も組めない仕事で大変だなぁと思ったのを覚えていますが、それだけをする部署も絶対必要ですよね。消防士として入職して、毎日電卓を打つとはまさか思わないですけど。
また、消防指令管制センターは全員が現場を経験した職員という訳ではないようで、研修として現場に付いて行くといったものがあるそうです(多分、地域によって異なると思います)。そして、問題になっているのが特に緊急ではないのに何度も通報する人。認知症や精神疾患などなかなか分かってもらえない場合には、行政や支援機関と連携して自宅を訪問するなどの対応もされているようでした。
そして、何と言っても悲惨な現場での対応はプロでも強い精神的ストレスを受けます。惨事ストレスと呼ぶそうですが、消防士のPTSDの原因の一位は「同僚の死」で、二位は「幼い子どもの死」なのだそうです。著者さん自身も幼い子供の交通事故に出動し、我が子を今すぐ抱きしめたいと思ったという経験を語っています。
戦争や重い病気などの強いストレスを経験してより強く成長するPTG(心的外傷後成長)というのを聞いたことがありますが、死と隣り合わせの現場というのは「慣れ」だけでは言い表せない心の強さというものが必要なのではないかなと思いました。
また、自殺者(自損行為)を搬送することもあります。救急車は基本的には心肺停止状態でも病院に搬送しますが、明らかに死亡している場合には警察に引き渡すそうです。その際、警察の担当者が到着するまで救急隊員は通報した家族と同じ空間にいなくてはいけません。そんな時は刑事さんの到着を待つ一分一秒が永遠に感じられるほど長く感じるということでした。
今生きていること、明日があることを私たちはどうしても当たり前だと感じてしまいますが、そうではないということを本書を読んで考えさせられました。今も猛暑で熱中症者の搬送が増えていますが、明日には南海トラフ地震が起きるかも、ゲリラ豪雨で流されるかも、交通事故で死ぬかも知れません。毎日生きていることに感謝して生きたいなと思いました。
また、過去記事「将来の日本_2」でも書いたように、人口減少により救急隊員不足に陥ると予想されます。
今は、人の死というのは「病院」で起こるものですが、人口が減少した将来は、このような凄惨な死がもっと身近なものとなるのかも知れないんだよなと思いながら読んでいました。