歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

世界統合と勢力均衡

今回は、すごい本を読みました。世界史の構造的理解 現代の「見えない皇帝」と日本の武器(2022年)です。

 

 

何がすごいって、世界史の教科書的な本かなと思って読んだら、世界史の話だけでなく、物理学、数学、哲学、経済学、地政学などの古典がどんどん出てくるんです。文系と理系をミックスしたような独特の視点から世界の構造や世界の未来を考察していくので、私には「目から鱗」といった内容に感じました。

 

 

日本人の歴史的特徴

 

日本人は歴史的に「理数系武士団」と呼べる、①独創的な発想力をもつ思想家(島津斉彬勝海舟織田信長)、開明派官僚(小松帯刀大久保一翁石田三成大谷吉継など)、③各地の自発的学習者(緒方洪庵適塾、各地の無名の鉄砲鍛冶など)、④日本特有の文系出身の「伝道者」(西郷隆盛坂本龍馬豊臣秀吉)が現れ国難を乗り越えたと著者さんは述べます。しかも、この理数系武士団は民間から突如として現れ(たように見え)、「歴史に参加する」という強い意識を持っていたと言うことでした。

 

 

世界統合と勢力均衡

 

過去記事グレートリセットって!?ダボス会議では統一世界について検討されているということでしたが、著者さんによると、統合型の国のは中国勢力均衡型はヨーロッパとのことです。

 

ddh-book.hatenablog.com

 

統合型、勢力均衡型の戦争にはナポレオン戦争などがありますが、一度統合化した世界は勢力均衡に戻ることはできないそうです。中国は秦の始皇帝により統一された後、管理社会のなかの沈滞した精神のようなものに国全体が覆われ、人々は虚無と無力感のなかに沈んでいく傾向が強くなるということでした。

統一世界がどのようなものになるのか分かりませんが、著者さんは人類はカプセル内でAIに管理され仮想現実のなかで一生を過ごすという予想もされており、まさに、映画マトリックスの世界だと思いました。

 

 

 

長期的願望と短期的願望

 

また、人間の願望は「長期的願望=人間の理想」「短期的願望=人間の欲望」の2つに分けられますが、大多数の人々の長期的願望(の共通部分)は社会が「こうありたい」と願う理想目標になります。人の「短期的願望」を宗教や身分である程度抑圧することで社会をうまく機能させてきたという歴史的側面がある一方、アメリカ式の資本主義では「短期的願望は、それをたくさん集めれば長期的願望に一致してくる」という考え方のもと、人々の短期的願望が膨れ上がって増幅していると指摘します。

長期的願望、つまり人々にとって理想的な社会を目指す時、資本主義では実現不可能だということになります。歴史を見ると、下級武士や下級貴族層が主導権を握る状態が一番ましであったということで、過去記事武士道とはで書いたような、禁欲的精神や教え、もしくは宗教的な掟が社会には不可欠なのではないかと考えさせられます。

 

ddh-book.hatenablog.com

 

 

まとめ
 
インターネットの普及とグローバリゼーション化により、距離的・地政学的な壁がなくなり、武力よりも経済力による影響力が高まっている現代では、「世界統合vs勢力均衡」の戦いがどのような形で起こるのか、それとも既に起きているのか、私には分かりません。しかし、一度世界が統合してしまえば、勢力均衡に戻ることはなく、管理社会の中で歴史が止まってしまうというのは恐ろしい話だと思いました。著者さんも国難においては「理数系武士団」が民間から現れ、現代では女性が含まれるかも知れないとも述べており、私も、日本人の真の力に期待したいと思いました。Winnyのようにならないと良いのですけどね…