今回は、ジョージ・オーウェルの「1984」(2022年)を読みました。
前知識なしで読んだので、最初は「??」ばかりで、世界観を理解するのに結構かかりましたが、過去記事「世界統合と勢力均衡」の後だったので、とても刺さるものがありました。
1950年代に勃発した第三次世界大戦の核戦争を経て、世界はオセアニア、ユーラシア、イースタシアの三つの超大国によって分割統治された世界が舞台で、オセアニア(旧英国)に住むウィンストン・スミスが主人公です。
真理省というところで歴史記録の改竄作業を行うのが彼の仕事で、思想警察が謀反者を消した時、ビッグ・ブラザーの演説を変えたり、別の証拠を捏造して、そもそもそんな人物がいなかったことにするような仕事です。
歴史を改竄するなんて無理じゃない?と思いますが、この世界では子供達への洗脳も徹底的に行われており、現代の歴史の教科書問題と同じことなのだと思いました。
人々はテレスコープというもので24時間監視され、山の小道でも盗聴マイクが隠されているかもしれないような徹底された監視社会の中での生活を余儀なくされます。テレスコープは、テレビのように映像や音声を四六時中流しながら、盗聴、盗撮をする機械で、どこかしこに置かれています。主人公のウィンストンは疑念を抱きながらも、一切それを見せないように、思想警察に見つからないよう行動します。
彼女ができて秘密の密会をしますが、もし見つかると厳しい拷問と死が待っていることも分かっています。
そしてとうとう、ブラザー連合という謀反組織にたどり着きます。ブラザー連合の聖書とも言える本には、世界の本当の姿、どのようにして人々に考えさせないようにしているのか、なぜ改竄を常に行うのかなど、こちらの方が真実だろうという内容が書かれています。
ここから、主人公とブラザー連合による革命が始まるのかと期待したのですが…
ネタバレになるのであまり書きませんが、本書の最後は、
闘いは終わったのだ。ウィンストンは、自分自身に勝利したのである。彼はビッグ・ブラザーを愛していた。
で締め括られます。
なんとも、心をえぐられる結末でした。
最後にある「解説」の部分で、オーウェルは本書のような世界が到来するという確信を持ち、それを徹底的に描くことによってそのような世界の到来を阻止しようとしたのではないかと書かれていましたが、私もそうだろうなと感じました。
コロナ禍での混乱や各国から出される情報とその裏側で行われた情報規制を思い出させます。そのくらいリアルで、怖くて、やはり、統合された後の世界というのは本書の社会主義的な部分は除いたとしても、かなり自由が制限された、見せかけの自由に惑わされただけの世界になるのではないかと思わされる内容でした。