歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

コーポレートガバナンス

今回は、決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8ヵ月(2022年)を読んで、コーポレートガバナンスというものについて学び、色々と考えたのでまとめたいと思います。

 

 

 

 

 

コーポレートガバナンスとは、「企業経営において公正な判断・運営がなされるよう、監視・統制する仕組みのこと」を言います。経営者が株主利益の最大化を図って運営しているかを監視する仕組みとして、社外取締役監査役および委員会の設置、取締役と執行役の分離などを行います。

LIXILのガバナンス体制_イメージ図


2021年の日本経済新聞社の調査では、LIXILの「ガバナンス」偏差値は77.5で最上位だったのだそうですが、これは、2018年に起きたガバナンスを巡る壮絶な戦いの成果であり、それをまとめたものが本書になります。(上図は本書に書かれていた内容を抽出したイメージを勝手に描いただけであるため、必ずしも正しいものではありません。LIXILでは社外取締役の半数は女性が占めるのだそうですよ!)

 

 

LIXILの社長交代劇

 

それはおかしい!と私も叫びたくなるような勝手な社長解任劇だったのですが、それを覆すには壮絶な苦労がありました。

社長交代の経緯を簡単に時系列に沿って概要を示すと、以下の通りです。

 

【2018年】

10月19日 トステム創業家出身で取締役会議長であり指名委員のメンバーでもある瀬戸氏と現社長兼CEO潮田氏が会食
人事に関する話は一切なし

  ↓

10月26日 指名委員会 開催

潮田は委員に「瀬戸が辞任を表明した」と説明

「瀬戸の意思を確認した上で」という条件のもと、潮田と山梨(指名委員会委員長)を瀬戸CEOの後任とするという決議が行われる

  ↓

10月27日 潮田より瀬戸に「指名委員会の総意で辞めてもらう」という電話がある

  ↓

10月31日 2度目の指名委員会

瀬戸の意見を確認する予定だったが行われず、瀬戸のCEO退任、潮田のCEOと山梨のCOO就任が承認される

  ↓

10月31日 取締役会で瀬戸のCEO退任、潮田のCEOと山梨のCOO就任を決定

 

 

言った言わない論争

 

瀬戸CEOは、一時は指名委員会の総意なのであれば…とCEO退任を受諾しますが、指名委員会のメンバーの複数から「瀬戸が辞意を表明したため委員会が開かれた」と聞かされます潮田は10月19日の会食で瀬戸が急に辞めると言ったと主張し、瀬戸は言っていないと主張し、取締役会は言った言わないの争いで紛糾しました。

監査委員長の提案で第三者に経緯をまとめてもらうことになりましたが、「調査報告書」とは内容が明らかに異なり、潮田が正しいという内容に改竄された「調査報告書要旨」を潮田CEO(当時)は公表しようとします。

最終的にはLIXILグループは、メディアや機関投資家から「会社にとって都合の良い「報告書要旨」を出した」と猛烈な批判を招くことになったということでしたが、ガバナンスの正反対である経営者の暴走、忖度、不正がまかり通る状況だったということが良く分かります。この後も色々とあるのですが…

 

 

株式会社とは

 

株式会社を「所有」の視点で考えれば、「会社は株主のもの」となります。今回のLIXILの争いでは、最終的に株主総会が最終決着の舞台となりました。会社側(執行側)があーだこーだ言っても、株主の賛同を得られなければ実行することはできないということが良く分かりました。

しかし、株主は持ち株比率によって権利の範囲が異なるため、今回のような大企業であれば臨時株主総会の開催に必要な3%以上の株式を持つ株主を集め、賛同を得るのは大変なことです。そのため、情報、コネ、人脈が要であり、弁護士やコンサルなどを雇う必要もあって、莫大な費用がかかるのだということも分かりました。

と、いうことは、小さな会社では経営者による独裁や私物化が横行しやすい反面、意思決定はスピーディーだということですね。

 

 

アクセルとブレーキ

 

企業のガバナンスが大事だということはとてもよく分かるのですが、日本はまだまだ充分ではないなと思いました。それは、ビジネスシーンだけでなく、教育や政治やいたるところでそう思います。

独裁者が生まれない仕組みを作らなければいけない、私物化を防ぎ、暴走する時のためにブレーキをかけられる仕組みを作っておく必要があるのはもちろんそうなのですが、結局のところ、自分たちで自分の首を絞めているような気がしてなりません。小保方さん事件以降の研究分野もそうですが、手続きばかり煩雑になり、書類や審査、会議がやたらと増えていきますよね…

 

 

まとめ

 

瀬戸さんの座右の銘"Do the right thing"だそうですが、正しいことをすることが(日本では?)こんなに大変なのかと思いました。

もちろん仕組みづくりも大事ですが、上に立つ人には必ず心理的安全性の高い環境を整え、反対意見を聴くというマインドが必要なのではないかと感じました。常に自分に賛同してくれる人がいる環境というのはとても心地いいものですが、あえて反対意見が出る環境に身を置かなければ、気付かないうちに階段を滑り落ちることになると本書を通して改めて学びました。