歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

認知症と歯科治療

わが家は長寿の家系で、認知症もあるので、自分も将来ボケるだろうなぁと思っています。

アルツハイマー病でみられる脳のアミロイド蛋白は早い段階から蓄積するということなので、早く予防薬や治療薬ができないかなと思っていました。

そんな中、私にぴったりの「40代からの認知症予防 」(2023年)という本を読みました。

 

 

 

具体的な予防法は本書を読んでいただきたいと思いますが、認知症と歯科治療との関係について書かれていたので、私の歯科衛生士としての考えと一緒にご紹介したいと思います。

 

歯周病

歯科の学生であれば全員名前を言えるレッドコンプレックスと呼ばれる3つの歯周病菌がありますが、一番有名な歯周病菌はPG菌です。歯周病菌は嫌気性菌(酸素が嫌いな菌)で、血中や浸出液中のたんぱく質を栄養に増えるので、歯肉溝や歯周ポケットと言われる歯ぐきの中が大好きな菌です。

歯周組織から血管内に入り込む性質もあり、全身を巡って炎症を起こし、心筋梗塞患者の血栓からPG菌が見つかったというのは教科書にも載っています。PG菌は内毒素と呼ばれる毒を体内に持っており、死ぬと(細胞が破壊される)と毒が放出されるという厄介な菌です。歯周病が糖尿病や心疾患などの全身疾患と関連があるというのはかなり一般的にも知られるようになったと思います。

本書によると、認知症患者の脳内からもPG菌が見つかっており、認知症と関連があるということです。では、PG菌を殺菌すれば良いじゃないかと思いますが、内毒素を持ってポケットの奥深くにいますし、常在菌まで殺菌してしまう為、結構難しい問題です。本書には抗生剤や殺菌水について書かれていましたが、歯科衛生士の立場からすると、歯周病菌の好きな口腔内環境にしないこと(歯石やポケットを作らない)免疫が低下しない生活をすること(栄養、運動、睡眠)を大事にして、定期的メインテナンスに通ってほしいなと思います。

 

インプラント

歯を失うと噛みにくくなりますが、本書によると、歯を失って放置した場合、認知症を発症する確率が1.8倍になるということでした。しかし、インプラントや入れ歯などで補うと、歯を失っていない人と発症リスクは変わらなくなるため、特にインプラントを勧めるということでした。

確かに、噛むことは脳に血流を送り、認知症を予防する効果がありますし、平成30年度の保険点数改定で「口腔機能低下症」が算定できるようになったことからも、食べる力を維持するために欠損歯を補綴すべきという点には賛成します。

しかし、歯科衛生士の立場から言わせていただくと、インプラントには危険があること、インプラント治療後に介護が必要になったり、病気になると、お手入れができなくなり目も当てられない状況になる可能性があることを知っていてほしいなと思います。

 

1)インプラントの危険性

インプラントは骨に穴を開けて人工歯根を埋め込むのですが、チタンという金属を用います。チタンは骨と結合する性質(オッセオインテグレーション)があり、金属アレルギーも起こさないと言われているので、きちんとしたメーカーのインプラントであれば問題ないと思います。しかし、チタンはとても高価なので、あまりに安価なインプラントの宣伝を見るとどこのメーカーかな?大丈夫かな?と思います。

また、レントゲンを見ると、明らかにインプラントの埋入角度や位置、配置がご自分では清掃できないようなものも見たことがあります。歯科衛生士としては埋入後のケアを大事にしたいので、目先の利益のためにインプラントを隙間なく何本も入れたり、喫煙患者、清掃不良(歯磨き指導をしてもらえないも含む)や中〜重度歯周病の患者に手術を勧めたり、インプラント後のメインテナンスに患者を呼ばない歯科医院では手術を受けない方が良いと思います。インプラントを入れたら、死ぬまでメインテナンスを受けるべきです。

 

2)要介護やガンになったら…

次に介護が必要になったり、病気になった場合、それまでメインテナンスに通っていた歯科医院から自宅や病院に往診に来てくれるでしょうか?恐らくNOではないかと思います。つまり、歯科医院は通院できる患者の状態しか知らないので、介護が必要になったり、病気になった患者のインプラントがどのようになってしまうのか知らない歯医者さんも多いのです。

脳梗塞などで急性期病院に運ばれると、まずは命を助けることになりますので、口腔内は放置されます。急性期病棟で歯科が介入している病院は多くないので、ご自分でできない場合、看護師さんにお口のケアをしてもらうと思います。看護師さんではインプラントと天然歯の見分けはつきませんし、インプラントのケアに必要な歯間ブラシを使った清掃はまず行ってもらえません。口から食べることが少なくなれば、口の中を清潔に保つ働きのある唾液も出ません。回復期病院に移る頃には何かしら重大な問題を抱えているというのは想像に難くないですね。

特に厳しい状況になるのが、がんです。成人の4人に1人はがんになると言われていますが、抗がん剤治療では免疫が落ち、特に粘膜がひどく荒れるので、人工物であるインプラントが感染源になり撤去したという話も結構耳にします。緩和ケアを担当する知り合いの歯科衛生士は、インプラントは入れるな!」と断言していました。

また、頭頸部放射線治療では唾液腺が死滅し唾液が出なくなります。唾液には細菌の繁殖を抑える作用もあるので、唾液の出なくなった口腔内にあるインプラントは、虫歯にはならなくても、歯ぐきはひとたまりもありません放射線性の顎骨壊死を起こすこともあり、保存するのは難しくなるかも知れません。

今は医科歯科連携やこれらの課題も議論されていますので、訪問診療をされていたり、学会などでよく勉強されている先生のところでインプラント治療は受けられた方が良いと思います。

 

アマルガム治療

アマルガム治療自体は現在行われることはないですが、過去に治療した場合、長時間口腔内で唾液にさらされ、金属イオンとなって溶け出し、血流にのって全身をめぐる可能性があります。水銀の神経毒と認知症に関わりがあるのではないかということでした。アマルガムのある患者の血中・尿中には、アマルガムがない人に比べ、5~6倍の水銀が検出されているという研究もあるそうなので、アマルガム治療は早く取り除いた方が良さそうです

 

根尖病巣

根尖病巣とは、歯髄が死んでしまったり、過去に治療した歯が感染して膿が根っこの先に溜まった状態です。認知症は慢性炎症と関係があるので、根尖病巣も良くないですね。

本書では、点数が低いので歯科医師の利益につながりにくいため、見過ごされているとの事でした。歯科衛生士としての臨床経験から意見を述べると、日本では保険で安く治療できるので、根尖病巣は治療しやすいし、逆に治療していると思います。しかし、歯根の構造は一人ひとり違ってとても複雑で、直視できないところなので、なかなか完治しづらいところがあると思います。また、歯髄が死んだ歯はもろくなるので、噛み合わせの負荷に耐えられず歯根が割れるなど、触れば触るほど抜歯になる危険も高まります。実際、根尖病巣はあるけど、症状が無いなら触らない方がいいとか、患者から抜くのは嫌だと言われそのままということもよくあります。

根尖病巣については歯科医師の先生にお任せしますが、私たち歯科衛生士は認知症予防のためにも、虫歯を作らせないよう指導していかなければならないと思いました。40代以降の虫歯予防は、以前治療した歯が虫歯になる二次う蝕歯周病などで歯ぐきが下がって露出した歯根が虫歯になる根面う蝕に気をつける必要があります。歯周病が増えてくるので、定期的にメインテナンスに通ってもらえるよう重要性を分かりやすくお伝えしていきたいです。

 

まとめ

認知症予防については、MCTオイルや運動など、できることから取り組んでいます。

今回は歯科関係の内容だったので、ついつい熱くなってしまい、文字数が多くなってしまいました。長文にも関わらず、最後まで読んでいただいてありがとうございました!