歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

怪しい水を見破る科学リテラシー

今回は、「水はなんにも知らないよ」(2012年)を読みました。

 

 

本書は、社会にはびこるニセ科学に対しての啓発本であり、特に水についての怪しげな商品を一刀両断していきます。著者曰く、「波動」「共鳴」「クラスター」「マイナスイオン」「エネルギー」「活性」はニセ科学に共通するキーワードだそうです。

 

波動水

まず初めに一刀両断される怪しい水は、波動水です。『水は答えを知っている』や『水からの伝言』という書籍によると、「ありがとう」などのよい言葉を見せた水はきれいな結晶を作り、「ばかやろう」などの悪い言葉を見せた水ではきたない結晶ができると写真付きで主張されているそうです。さらに、言葉の持つ意識エネルギー(波動)に水が共鳴しており、波動測定器MRAで健康に良い複数の波動情報(コード)をプリントした波動水(共鳴磁場水)を作ることもできるという論理で波動水が販売されているそうです。

このMRAの正体は嘘発見器の類であり、まったくのインチキ装置であることが分かっています。水の結晶写真も都合よく振り分けられているだけで、再現性は全くありません。

 

 

教育現場に広がった『水からの伝言

いやいや、波動水なんかに騙される人はいないだろうと思ってしまいますが、この本に教員の団体(TOSS)が飛びつき、指導案を公表したため、大問題となりました。(既に削除されています。)

水からの伝言』の写真を子どもたちに見せ、「ありがとう」と「ばかやろう」を見せた水だと説明します。次に、人体の70%は水でできていると説明し、「悪い言葉」を使うと、体内の水が影響を受けてしまうから、「悪い言葉」を使わないようにしようというものです。

 

 

著者さんは、「その指導案を授業にかけようとする前に、インターネットで検索してみよう。批判的なページがあったら読んでみよう。TOSSのものだけではなく、もっと多様に授業の参考になるものを見つけよう。自分の頭で思索しよう」と呼びかけています。教員の科学リテラシーの低さへの悲嘆感がにじみ出ていますね。

 

 

✖ クラスターが小さい水

水に何らかの微弱なエネルギーを与え、小さなクラスターになると細胞に浸透しやすくなり、新陳代謝を高めるから体に良いという説があるそうですが、これも科学的に否定されているそうです。結局水道水と同じであり、実害はないというのは救いでしょうか。

 

 

✖ 磁化水

強い磁界の中に水を通すと水がマイナスイオンを持つ活性水となり、水垢防止にもなるという磁化水も全否定です。水が磁石の作用を受けるのは、強力な(MRIのような)磁界の中にいる時だけであり、そこから出ればただの水ということでした。

 

 

✖ π(パイ)ウォーター

「植物が早く成長する」「切り花が長持ちする」「お風呂が早く沸く」などの効果があり「魔法の水」と呼ばれているかなり高価な水だそうです。しかし、国民生活センターでテストをしたところ水道水と変わらないという結果が出ています。

 

 

✖ 創生水

黒曜石やトルマリンとイオン交換樹脂法をつかって作る高価な水だそうです。洗剤不要で洗車できるとか、重油を分解する力があるなどと宣伝されているそうですが、根拠は「体験談のみ」のニセ科学だそうです。

 

 

アルカリイオン水

毎日飲用を続けることで、比較的軽度の胃腸症状に際して緩やかに作用することが証明されているそうです。しかし、高血圧、アトピー認知症が治るとか、がんに効果がある、体質を改善するなどは虚偽になります。また、アルカリイオン水と同じ製法で還元水活性酸素水と呼ばれている水もあるそうなので、要注意です。

 

 

まとめ

私も○○水にまんまと騙されているなぁと反省しました。ちなみに、私が飲んでいるのは過去記事「人類が生まれた意味」の著者さんが創世記の地球環境を再現して作っているという「太古の水」です。

 

ddh-book.hatenablog.com

 

本書には「太古の水」は出てきませんでしたが、著者さんに言わせたら「はい!ニセ科学!!」なのでしょうね。まぁ、私は「構成主義」の人間ですので科学が完全に正しいとは考えていませんし、「何でも試してみる」がモットーなのでプラシーボ効果を期待してもう少し飲み続けてみますけどね(笑)

 

ddh-book.hatenablog.com

 

本書をよんで、「学会で発表されました」…学会発表は査読なし、「○○教授(博士)によると」…勝手に名前を借用していることもある、「二重盲検試験」の有無、「体験談」だけで効能を謳っていないか?などに注意して、ニセ科学には騙されないようにしたいなと思いました。