歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

嘘つきな本

今回は、「奇書の世界史」(2019年)を読み、世の中には色々な本があるんだなぁと勉強になりました。

 

 

奇書とは

ネットで「奇書」と検索すると、「日本三大奇書」というものが出てきます。「ドグラ・マグラ夢野久作(著)、「黒死館殺人事件小栗虫太郎(著)、「虚無への供物」中井英夫(著)の3作品で、あまりの複雑さや難解さから、読了が難しいと言われているそうです。

しかし、本書で扱っているのは、数奇な運命を辿った書物です。その中でも、大胆な嘘で塗り固められた本がすごいな、面白いなと思ったので3つご紹介します。

 

嘘つきな本

1.台湾誌

 1704年、自称・台湾人のジョルジュ・サルマナザールがイギリスで発表した本だそうです。幼少期を過ごした台湾の歴史、地理、民族、風習にいたるまで事細かに記した書物ですが、内容は、ほぼほぼ妄想です(笑)

 彼はもともと日本人を自称していましたが、後に「この世で最も聖職者にふさわしくない者」と評されたウィリアム・イネス従軍牧師から嘘を見抜かれ、台湾人自称するよう助言されたそうです。台湾語を造作し、誰に聞かれても矛盾ないくらい妄想を精密に作り上げて多くの人を騙して講演活動などしていたのだそうです。

 しかし、「ハレー彗星」の周期性の発見などで知られるエドモンド・ハレーが、「台湾の地下の家屋は1日にどの程度煙突から日が差し込むか」など、天文学的に「正解の存在する」質問を多数投げかけたため、答えに窮し、全て嘘だったと自白したということでした。

嘘で塗り固めるとは、このことですね。

 

 

2.フラーレンによる52Kでの超伝導

 ドイツ人物理学者、ヤン・ヘンドリック・シェーンを主な著者とし、2000年にベル研究所より発表された超伝導に関する科学論文なのですが、こちらも全くの嘘だったと後に判明しています。

 彼が1998年から2002年の5年間に発表した論文は60本以上にのぼり、そのうち16本が「Nature」と「Science」に掲載されているそうです。

 しかし、どの実験も再現不可能であり、彼の実験を見た者は誰一人いないばかりか、彼の作った超伝導物質を見せてくれと頼んでもサンプルがないなどと断り続けたのだそうです。

 怪しんだ人が「Science」と「Nature」の論文を見比べたところ、まったく別種の実験結果にも関わらず折れ線グラフが完全に一致したそうです。ベル研究所は外部の調査委員会を発足し、ついに不正を認めたということでした。

小保方さんのSTAP細胞事件を思い出しますね。

 

 

3.椿井文書(つばいもんじょ)

 江戸時代後期、謎の人物、椿井政隆によって製作された古文書群ですが、その多くが椿井政隆によって創作された「偽書だそうです。

  椿井政隆は、歴史家達の「怪しい箇所」だが信じたいという「微妙な感情」の2つに目をつけました。そして、根拠があやふやな箇所に対して、「並河誠所が採集に訪れたのだとすれば、参照していたに違いない文書」を捏造したのだそうです。

地域の名士から依頼を受けて書いていたそうで、ある地域でいくつかの家系図を偽造した後には、他の地域で起こった合戦の到着状などに、捏造した家系図の人物たちを多数登場させ、遠方からもその実在を保証するなど、抜かりなかったそうです。

彼の作った非常に高品質な「都合の良い史料」は各地で重宝され、現代にも伝えられるものとなり、「現在進行形で、地域史に混入し続けている」偽書なのだそうです。

歴史は曖昧なので、疑ってかかる必要がありますね。

 

 

まとめ

 今の電子書籍に比べて、昔は本や論文に残すというのはものすごい労力だったと思います。倫理面は置いておいて、多くの人から称賛されるほどに嘘を緻密に構築し、論理的に書きあげたという点で著者さんの努力に感服しました。

一方、嘘が発覚した後の著者の動向については触れられていませんが、因果応報だったのではないかと推測します。昔も今も嘘つきさんはあちこちにいるし、嘘は最終的に身を滅ぼすかもしれない博打だということを再確認しました。

今はフェイクニュースも簡単に作れて、拡散される世の中ですので、嘘つきさんに騙されないよう、気を付けていきたいですね。