歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

錯視では無意識を騙せない

今回は、心理学についての本を読んで、とても面白かったのでご紹介します。本のタイトルは「おどろきの心理学 人生を成功に導く「無意識を整える」技術」(2016年)です。

 

 

「赤い服はモテる」といったような世にあふれるワンフレーズ心理学がどのような実験から得られたデータなのかを丁寧に説明しており、心理学の研究ってこんな風にするんだなととても面白い内容でした。特に興味深かった内容を以下にご紹介します。

 

エビングハウス錯視

上図の左右にある中央の円の大きさは同じです。であるにも関わらず、大きい円に囲まれると小さく、小さい円に囲まれると実際の大きさよりも大きく見えてしまうというのがエビングハウス錯視です。ところが、2014年に発表された論文によると、左右に太った人に囲まれても、痩せた人に囲まれても、ターゲットの魅力度は常に一定で不変だったそうです。その実験では確かにエビングハウス錯視は起きていて、見た目の太り具合は変わり、男女で違いはありませんでした。見ていた部分も違ったそうで、体型と魅力とでは異なる戦略・方略で判断しており、無意識のうちに錯視であることを見破っているのだろうということでした。

また、エビングハウス錯視が起きていることを確認したうえで、「中央の円を人差し指と親指でつまんでください」と指示した実験では、指を開く大きさは錯視の影響を受けず常に一定だったそうです。

著者さんは合コンで小細工しても意味がないし、目は騙せても行動は騙せないと説明しています。赤背景は女性の魅力度のうち特に性的魅力度を上げるようなので、赤い服を着るのは他の色の服を着るよりもモテるかもしれませんね。それも、不特定多数の男性に対してですが…

 

 

サブリミナル効果

もう一つ面白かったのが、サブリミナル効果です。
サブリミナル効果とは、Wikipediaには

閾値以下の刺激によって生体に何らかの影響があることである

と書かれています。

意識に上らないほどの一瞬の時間に、映画やアニメなどと無関係にワンカット(例えば、コーラの写真)を挟むと、それを見ていた人の行動が変わる(コーラの売り上げが上がった)というものです。しかし、この研究結果を行ったヴィカリー本人の告白からサブリミナル効果は捏造だったことが明らかとなっています。

 

ところが、2002年に発表された心理実験によると、サブリミナル効果は部分的には再現できることが明らかにされたそうです。のどが渇いている被験者とのどが渇いていない被験者に「のどが渇いた」という単語をサブリミナルに提示すると、のどが渇いていない時はサブリミナルの提示による変化はなかったが、のどが渇いている時は飲料品を飲む量が1.5倍以上増えたのだそうです。

また、悲しい表情を浮かべた顔がサブリミナルカットで表示されると、この後他の人との共同作業があると聞かされていた群は、自分をポジティブな状態にしようとポジティブな音楽を多く選んだのだそうです。

著者さんは、それを見ている人物のまさにその瞬間の「欲求」と密接に関連があるときに限って、サブリミナルカットは無意識のうちに我々人間の行動を大きく変化させる力があると述べています。

 

まとめ

エビングハウス錯視は知っていましたが、痩せて見えても魅力は上がらないというのはちょっとガッカリしましたね。また、サブリミナル効果は捏造だったと何かの本で読んでいたので知っていたのですが、やっぱり効果があると知って、無意識に人を操ることができるというのは少し怖いなとも思いました。

このほかにも、相手に好かれる方法や、日本人は血液型性格判断が好きすぎて、もはや宗教だとか、記憶はほとんどアテにならないこととか、色々と面白い実験が書かれていましたので、心理学実験に興味がある方は読んでみてはいかがでしょうか。