歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

自由エネルギー原理

人間は脳の10%しか使われていないなんて言われていますが、脳というのはとても不思議な組織ですよね。特にスピリチュアルや進化について勉強していると、脳って一体何だろう??と、とても不思議に思っていました。

 

今回、「脳の大統一理論 自由エネルギー原理とはなにか」(2021年)を読んで、今までもやもやしていた脳の機能についてとてもスッキリしたのでご紹介します。

 

 

 

自由エネルギー原理とは

「自由エネルギー原理」はカール・フリストンというイギリスの研究者が提案した理論です。脳に入った情報がどのように処理されるのかを数式で記述する方法になります。計算式についてはかなり読み込まないと理解できないようなので、理解はできていません。しかし、観測した感覚情報に基づき、①事前確率分布(ブラッシング不良の患者がいる割合)、②条件付き確率分布(ブラッシング不良の患者の歯ぐきが腫れる確率)を利用して、最大事後確率推定(歯ぐきが腫れていた時にブラッシング不良が原因である確率:①×②に比例する)によって、隠れ原因(物体の形状、大きさ、色など不変な性質:歯肉の腫れや色)隠れ状態(物体の動きや照明など時間とともに変化しうる性質:ブラッシング時の出血等)を無意識に推論しているのだと理解しました。人間の脳は、予測誤差が最小化されるように想定を書き換えることで外環境に何があるのかを理解しているのだそうです。

 

赤ちゃんの発達

赤ちゃんにもこの予測誤差を最小化するという行動が観察されます。3~4か月の赤ちゃんは期待に反するものを長く見つめるのだそうです。例えば、赤ちゃんに物が消えるマジックを見せると、脳がこれまでの感覚情報から予測した結果と異なる動きを観測するため、より注意を集中し、観測情報をもっと追加して、何が起きているのか理解しよう(予測誤差を最小化しよう)とするのだそうです。

とても腹落ちする説明だと思いました。大人になればなるほど、様々な経験を経て予測の精度が上がるというわけですね。

 

体内感覚

また、脳は体外から得る感覚(五感)だけでなく、体内感覚も感知していますよね。本書によるとホメオスタシスとは体内の状態を一定に保つことを言いますが、ホメオスタシスの混乱が大きくならないように、体内の状態に関する設定値を予測的に変更することをアロスタシスというそうです。例えば、急に人前でスピーチすることになった時、実際にスピーチする時になってホメオスタシスに混乱が起きないよう、前もって血圧や心拍数を上げることで設定値を高めに変更するというようなことです。パブロフの犬の実験など動物でも説明できますし、運動動作(ボールをキャッチするなど)においても同様に予測値と確率による計算です。

人間の脳は五感で得た情報だけでなく、体内感覚もコントロールしているはずなので、全ての変数を確立で当てはめて数式化できるというのは、私のモヤモヤを解消してくれて、すごく納得できるものでした。

 

自閉症スペクトラム障害

発達障害統合失調症パーキンソン病などの症状も本理論で多くが説明できるそうです。自閉症スペクトラム障害では、予測信号(事前の信念)の精度が低いことに起因しているのではないかと言われているそうです。予測誤差が大きい為いつもサプライズ状態になり、過度に感覚に反応してしまう状態になる(感覚過敏)のではないかということです。また、そのような状態が改善されないので世界を能動的に認識することができなくなり、結果として感覚信号に支配されてしまう、つまり、視覚像を写真のように知覚するということが起こるのだそうです。コミュニケーションなんて経験により積み上げる予測の賜物ですから、予測に欠陥のある自閉症の人がうまくできないのも納得です。

 

まとめ

CPUはよく人間の脳に例えられますが、コンピュータが人間のように考えるという未来が実現可能になるなと思いました。東ロボくんの新井紀子先生は、コンピュータは結局のところ計算機なのでシンギュラリティは来ないと断言されていましたが、量子コンピュータが実現化され、脳の仕組みが計算で解明できるのなら、人間のように思考するロボットも開発できるかも知れません。

 

本書の本文は以下の文で締められていました。

デカルトの言葉、「我思う、故に我あり」というよりもむしろ、「我あるが故に我思う」なのである。

私は本書を読みながら、天動説→地動説のような、哲学だけでなく世界を揺るがす大発見だなと思ってすごくドキドキしました。