今回は、「限界はあなたの頭の中にしかない 小さなアクションで、最大の成果を引き寄せる」(2015年)を読みました。
本書は、マーケティングの巨匠と呼ばれるジェイ・エイブラハムが日本人向けに書いた(インタビューを本にした?)ものです。そう、本ブログでも何度も出てくる「ハイパワーマーケティング」のジェイ・エイブラハムです。
彼の貧しい時代や松下幸之助をリスペクトしていたことなど、彼のマーケティングに関する哲学をまとめておきたいと思います。
高校生だったジェイ・エイブラハムは、卒業したその日にガールフレンドから妊娠したと告げられます。学歴も仕事もないまま結婚し、子どもを育てることになりますが、注意欠陥障害により集中力がないという理由で職場をクビになってしまいます。
20歳になる頃には2人の子どもを抱え、仕事を掛け持ちし、単純労働を繰り返すだけの人生になっていたそうです。
彼は、「私には学歴も、チャンスも、技術もない。未来なんてない。私の人生はもう完全に終わっている」と、そう思っていました。
しかし、「君がおしまいだと思い込んでいるから、おしまいなだけだよ。君の人生は本当は無限大なんだからね」と言われ、自分に限界を課しているのは自分自身だと気づきます。それから、古書店で辞書を買い、言葉を学び、多数の本を読んだそうです。
彼は読者に伝記を読むよう勧めます。
人物伝というものは、単にその人を知るというだけではなく、その人がどのように意義深いものを人生において創出し、影響を与えていくかという信念体系や行動についての理解を助けてくれます。
彼は、ガンジーや松下幸之助の伝記を読み感動したと同時に、ビジョンを持ち、そのビジョンを実現化させる方法や信念を貫くことの重要性について学びました。
マーケティングの前に「理念」が重要なのだと強調します。
そして、ビジネスで重要なのは「人間」を知ることだと述べます。しっかりと顧客の目を見て、相手の話を理解しようと集中し、不明瞭な点は質問をしたり、詳しく知りたい内容は聞き返します。つまり「傾聴」ですね。
すると、その人の言葉にできないジレンマを見抜くことができるようになるそうです。言葉にできない不安や想いを言語化することで、大きな信頼を得ることにつながります。
あれ?これって、コーチングの手法ですね。
誰も皆、自分のことをいちばんに考え、自分の立場からしか世の中を見ていないというのは、人間の本質です。消費者には一人ひとり、感情の揺れ動きがあり、悩みがあり、人生があるということを理解しない限り、マーケティングはできないのだというのが彼の信念であると言えます。
そして、マーケティングの枝葉である手法だけが取り上げられ、それが一人歩きを始めてしまっている近年の間違ったマーケティングに彼は苦言を呈します。理念も説明も抜け落ちた、ただの手法だけが拡まり、マーケティングは死んだとすら彼は表現しています。
心から感情移入し、取引相手が何を理解し、尊敬し、どう世の中を見ているかを理解すること、お客様が言葉では表現しきれない隠れた要望や懸念を見つけだし、解決すること、その視点に立脚して初めて、マーケティングは正しく機能するのだと述べます。
間違ったマーケティングで一時的に大金や力を得たとしても、待っているのは相応のしっぺ返しだそうですよ。
確かに、マーケティングに関する本にはよくジェイ・エイブラハムのことが引用されていますが、枝葉のテクニック部分ばかりだよねとも思います。かく言う私も、最初に「ハイパワーマーケティング」を読んだ時は、これ、好きじゃないなという印象でした。
しかし、彼自身のマーケティング哲学は理念が第一で、傾聴から顧客のジレンマを発見し、それを解消するようなサービスを展開する、人々に少しでも良い人生を送ってもらうための手助けをするものだということが分かりました。
松下幸之助の生き方同様、私も信念や理念をもって誠実に生きたいと思いました。