歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

第4の波


今回は、第4の波 大前流「21世紀型経済理論」(2023年)を読みました。

作者の大前研一さんと言えば、コンサルト系の人が書いた本には必ずと言ってもいいほど出てくる、マッキンゼーで活躍されたコンサルティング業界のレジェンドですね。本書は大前氏が主宰する企業経営者の勉強会「向研会」での講演や連載記事をまとめたものになります。

 

 

第4の波とは

 

アメリカの未来学者で大前氏の友人でもあったアルビン・トフラー氏は1980年に上梓したベストセラー『第3の波』で、

第1波:「農業革命」による農業社会

第2波:「産業革命」による工業化社会

第3波:「情報革命」が起きて脱工業化社会

が来ると予想していたのだそうです。

 

そして、大前氏は次に来る第4波とは、「AI・スマホ革命」によるサイバー社会であると主張しています。

雇用に着目すると、波の前半は雇用を大量に創出するものの、後半はそれが削られる、つまり不要になる時が来るということでした。それは「第4の波」でも同じであり、前半の入り口の今は雇用を大量に創出しているが、後半は人間が淘汰されていくと予想しています。

具体例を挙げると、車の自動運転レベル5(完全自動運転)が実現したら、ドライバーも配達員も用無しになります。これを予見しているウーバーイーツは、(時給が高くても)個人事業主として契約しているということでした。

建築ではすでに、CAD(コンピューター設計支援)で設計し、それをデータで入力したら、法的にOKな設計かどうか数分間で答えが出るのだそうです。このシステムを作ったのは日本の会社で、シンガポールで実用化もされています。しかし、本書では日本の役所に設計をデータで持ち込んだところ、担当の役人から「俺たちの役割は何になるんだ?」と怒られ、紙の図面で出し直すように言われたという例が紹介されています。

 

今後AIに取って代わられる職業というのをよく耳にしますが、日本は第4の波に乗る気がないのかな?と思ってしまいますよね。

 

 

ボーダレス経済

 

さらに、AI・スマホ社会ではネットワークにつながってさえいれば24時間、世界のどこにいても誰もが同じサービスを利用できます。つまり、国境がない、ボーダレス経済が来る(既に来ている?)ということです。

このことは、ケインズ経済学者には理解できない事であり、安部元首相が黒田元日銀総裁と行ったゼロ金利政策では経済が回復しないのは当然のことだと一刀両断です。つまり、日本円をジャブジャブに発行しても、ボーダレス経済の中では海外に流出してしまうだけ、つまり日本人は豊かになるどころかますます貧困化してしまうということです。

 

確かに、ビットコインなどの仮想通貨を見ても、スマホで簡単に決済できるし、経済全体がボーダレスであることは明らかですよね。このブログでも、時々カナダやフランスからアクセスがあってとても驚いています。国境は意味をなさなくなり、どの国で働いているかなんて関係なくなっていくということですね。

 

 

無欲望社会

 

さらに、日本経済が回復しないもう一つの要因として、日本人の無欲望状態を挙げています。日本は個人金融資産2000兆円の半分が預金・現金で保有されている貯蓄過剰の国なのだそうです。さらに日本人には質素・倹約なタイプが多く、老後2000万円問題などの報道も影響して、若い人までもますます貯蓄に回しているということでした。

経済はお金が循環して潤うものなので、アメリカ人のようにセカンドハウスを購入して賃料をローンの返済に充てるとか、イタリア人のように老後はバケーション三昧でお金を使えばいいのに、そういう政策をすればいいのにということが書いてあります。

日本人のシニアがお金のかからない、かつ、1人でできる趣味ばかりであるのにも苦言を呈しており、大前氏自身はツーリングやスノーモービル水上オートバイなどを趣味にしているのだそうですよ。

 

私はこの経済を回すべきという考えには反対で、どちらかというと過去記事「百姓万歳」のような、自給自足ができる社会が良いなと思っています。世界と繋がりながら、貨幣に過度に依存せず、自然と共に生きる生活って可能なのではないかなと思うんですよね。もちろん、AIを駆使して楽しながらということです。

 

ddh-book.hatenablog.com

 

 

日本の教育

 

「AI・スマホ革命」によるサイバー社会に対して、日本の教育はどうかというと、これもかなりまずいようです。サイバー社会で通用する人材を育成するためには、学習指導要綱の廃止、大学入試共通テストの廃止などを行い、現状の偏差値偏重からの脱却が必要であると述べています。

また、「サムライビジネス(士業)」つまり、公認会計士、税理士、行政書士等は官民挙げたリスキリングの対象となっている国家資格ではありますが、専門知識の記憶力が問われる分野であり、いずれ機械に取って代わられる分野です。政府が言うからと今から安易に資格取得を目指すのは危険ですね。

大前氏は、AIとスマホを駆使して、新しい技術、新しいサービス、新しい産業を創造できる人材を育てることができれば、まだ第4の波名乗ることは可能だと述べますが、それは文科省の学習指導要領に従った教育では無理だとも断言していました。

今後はスマホベースの生活になるのは避けられないため、親は子どもからスマホを取り上げるのではなく、スマホを使って何かを創造・創作するクリエイティブな能力を育てるという方向に考え方を転換しなければならないそうです。

 

 

まとめ

 

本書を読んで、息子たちには第4の波にうまく乗せてあげたいなぁと思いましたし、私自身もAIではできない仕事をしないとなと思いました。一方、最近息子たちから「スマホ買って〜」としつこく言われているのですが、「必要ない」と言い切ることもできなくなってしまいましたねぇ…(笑)

入学式までに息子とメリット、デメリットについて話し合って、どうするか決めたいと思います。