歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

マルクス 資本論

今回は、マルクス 資本論 シリーズ世界の思想」(2018年)を読みました。
資本論」は経済学の古典と言われる本ですが、これまで触れる機会はありませんでした。本書は第一巻を、資本論の入門書として解釈の難しい部分には解説を加えて書かれていますので、比較的分かりやすいです。他にも何冊かマルクス関連の本を読み漁りましたが、今だからこそ資本論」を読むべきだと思いましたのでご紹介します。

 

 

 

資本主義の解説書

マルクスエンゲルスと言えば、共産主義を主導した人物だというイメージが強く、ソ連崩壊とともにその理論は否定されたと考えられていますが、資本論の第一巻をまとめた本書を読む限り、資本主義の仕組み、貨幣や労働について分析・整理した内容になっています。マルクス本人が書いたのは、資本論の第一巻のみであり、その後はエンゲルスやカウツキーが書いているのだそうです。

私も原書は読んでいませんし、2巻以降の内容についても詳しくは分かりませんが、とにかくこの第一巻は、今世界で起こっていることの預言書のようだと感じました。

 

 

労働力を売るということ

詳しい説明はできないので、是非書籍を読んでいただければと思いますが、資本主義社会では、資本家は賃労働者から労働力を買って商品を作り「余剰価値」を得ようとします。余剰価値は労働者のものではなく資本家のものになってしまいますね。資本主義以前の世界では労働は直接生活に必要な物に交換されますが、資本主義社会では、資本家は労働者から労働を搾取してお金を儲けるようになったという説明だと理解しました。現代では福利厚生や失業保険など、労働者を守る仕組みが法律で規定されていますが、労働者がこれまで資本家と戦って得てきた成果であり、資本家がすべきことだと分かりました。

 

 

機械技術の発達

また、機械技術の発達により資本家は資本を機械に投入し「余剰価値」を得ようとしますが、ここで「内在的な矛盾」が生まれるそうです。機械の導入により生産コストは低下し、余剰価値が得られる一方、労働者は解雇されます。しかし、他社も機械を導入するので利潤率は次第に下がってきます。そこで、資本家は「余剰価値」を得るために労働者に過度な労働を求めますとりわけ先進国ではこの傾向が顕著であり、日本政府も「構造改革」などと言って社会保障などを含めた労働者の実質的な取り分を減少させることにより利潤率の低下を補おうとしているのだそうです。

最近、度重なる増税や実質賃金の低下が叫ばれていますが、150年前にマルクスが言った通りではないか!と思いました。

 

 

労働者への洗脳

また、労働者は「労働力」を資本家に売りますが、労働者は「労働力」しか売れるものがありません。機械に駆逐された労働者は労働市場に投げ売りされますが、生きるためにはブラック企業であろうと従順に働きます。さらに政府も「非正規雇用」を作って会社の利潤率がアップするよう手助けしたという構造が見えてきました。

また、世代が進むにつれて「働かざる者食うべからず」といった考えが常識化し、大学でも文系の大学は減らされ、理系ばかりになり、職業訓練校のようになってきていますね。資本主義に国民が洗脳されているようにも思えました。

 

 

周期的に恐慌が起きる

資本家は利潤率の低下をカバーするために資本を投入します。増産により「繁栄期」には景気が良いのですが、労賃や生産手段の価格が上昇し、さらに利潤率は低下します。繰り返すうちに「過剰生産」の状態になり、ある時点で投下する資本量を増やしても利潤が増やせない「資本の絶対的過剰生産」の状態に陥ります。生産の拡大がストップすると「恐慌」が起きるのだそうです。

はい、完全にバブル崩壊ですね。最近もアメリカの銀行が相次いで破綻しましたが、資本主義経済において恐慌は必然的にかつ周期的に起きるようです。政府や中央銀行などが必死にお金を動かして対処しようとしていますが、引き延ばしに過ぎないそうで、恐慌を脱する手段として戦争が利用される場合があるというのも恐ろしいと思いました。

 

 

持続可能な開発目標SDGs

資本家は労働者だけでなく、自然からも搾取を行い利潤を得ます。こちらに関しても、どこかで破綻することは目に見えていますね。国連サミットで採択されたSDGsの意義が本書を読むことでより理解できましたし、なぜ大手の企業がこぞって目標を掲げているのか分かりました。

また、アンドリュー・カーネギー松下幸之助「お金は社会のもの」であるという考え方やライオンズクラブの活動も今までとは違った感じで理解できるようになりました。

 

 

まとめ

本書をそしてマルクス関連の本を読みながら、歴史、宗教、哲学など様々な考え方に触れることができました。また、現代と同じ部分や違う部分を考えたり、自分の働き方や女性の社会進出について考えたり、資本主義社会を終わらせる事なんてできるのか、少子化やAIの発展によりどう変わるのかなどとにかく頭を使って考えを巡らせることのできる本だと思います。息子にも社会に出る前に読ませたいですね。