今回は、「毛 生命と進化の立役者」(2021年)を読みました。
著者さんは、魚の精子を研究している研究者さんです。毛、繊毛についての説明は、ちょっと私には難しくてよく分からなかったのですが、海が酸性化しているというのが印象に残ったので、調べてまとめたいと思います。
「地球温暖化」はよく聞く言葉ですが、「海洋酸性化」はあまり耳にしないのではないかと思います。空気中の二酸化炭素を吸収することで、海が酸性化してしまうというメカニズムのようです。
気象庁のHPによると、 海水中のpHは一般的に弱アルカリ性を示し、表面海水中での約8.1から深くなるにつれてpHは下がり、北西太平洋亜熱帯域では水深1000m付近で約7.4と最も低くなるということです。 深くなるにつれて有機物の分解により海水中の酸素が消費されるため、全炭酸濃度が増加するということでした。
全球平均の海洋表面pHは、今世紀末には19世紀終盤に比べ0.16~0.44低下すると予測されているそうです。また、海洋表層だけでなく、海洋内部での酸性化も指摘されているということでした。 海洋酸性化は、将来大気へ排出される二酸化炭素の量に応じて進んでゆくとも指摘されています。
さて、繊毛というのは細胞の毛のことですが、 細胞の遊泳に必要な推進力を生み出します。髪の毛などの体毛は「抜ける」という特徴を持っていますが、繊毛も自然に生え変わるそうです。実験では、pHを酸性にしたり、細胞の中のカルシウム濃度を高めたりすると、繊毛が抜けることが分かっています。また、再生能力も高く、ウニの幼生に高塩濃度処理を繰り返したら6回も再生したのだそうです。
著者さんが繊毛はすごい!とアピールするポイントは以下の3点です。
- 自ら波打って動く
- 単細胞生物の繊毛と、私たちヒトの繊毛の構造がほとんど同じ
- 私たちの体の維持に大切な構造である
もしも、繊毛がなくなったり、動かなくなってしまった場合には、生物は様々な病気にかかってしまいます。著者さんは、生物の進化や海の生態系を司る陰の立役者が繊毛ではないかと述べており、規則性、対称性、非対称性が存在していてとても美しいと絶賛していました。
歯科衛生士も微生物学で鞭毛・繊毛を学びますが、動き回ったりくっついたりするものだとは知っていたものの、まさか、髪の毛みたいに抜けて生え変わるものだとは知りませんでした。頑張れば、私も髪の毛も動かせるようになるかな?(笑)
生物が誕生してから、これまで大量絶滅が何回も起こったことが化石などの証拠からわかっています。そして、その原因が、直接的な原因が海洋酸性化であったのではないかといわれているそうです。プランクトンに大打撃があると、食物網を介して、海産生物全般に大きな打撃を与えます。
バタフライエフェクトのように、海洋が酸性化し、プランクトンの繊毛が抜けてしまえば、私たち人間にも大きな影響があると容易に想像できますね。
また、貝類などの生き物や幼生は、酸性化により海水中で炭酸カルシウムの結晶ができにくくなり、貝殻が正常に形成されなかったり、溶け出したりしてしまうそうです。酸性化が長期で続くと、植物プランクトンを底辺とする海洋生態系がおかしくなり、生物の精子や、脳、気管といった上皮細胞など、すべての細胞の毛が異常になってしまう可能性まであるそうです。
二酸化炭素の増加により、地球温暖化だけでなく、海洋酸性化が起きるというのは今回初めて知りました。まだ、その影響がどのようなものか詳しくは分かっていませんし、酸性に強い個体が生き残り、酸性環境下でも適応できるよう遺伝子が変化していくことも考えられます。
とはいえ、地球に住む人間の一人として二酸化炭素の排出を出来るだけ減らす、SDGsに取り組むというのは大事なのではないかなと改めて思いました。魚釣りの好きな子どもやその孫の世代にも、多様性ある海を残していかなければならないなと思いますし、過去記事「オーガニック」で学んだように、オーガニック商品をできるだけ選んでいきたいです。