今回は、「辺境生物探訪記~生命の本質を求めて~」(2010年)を読みました。
本書は、南極や深海、地中や火山や砂漠の微生物を研究されている研究者さんとサイエンスライターさんとの対談本です。へーそうなんだと驚く内容だったのですが、最後の方に書かれている火星起源説が特に印象に残ったので、書いておきたいと思います。
火星起源説とは、「生命の起源は火星にある」という説です。火星で生命が生まれた時、まだ地球は非常に熱く、生命は発生できない、または発生できたとしても何度も海が干上がってしまうような環境だったため、死んでしまったと考えられます。そのころ火星では、水が存在し細々と進化しており、ある時生き物が隕石によって地球にもたらされたのではないかというのです。

また、原始地球上には、RNAが現在のDNAの役割を担って自己複製を行っていた生き物たちの世界があったとする仮説もあるのですが、そのRNAの合成にはホウ酸が有効です。ホウ酸は、地球上では海や湖が干上がってできる蒸発岩に多く含まれるそうですが、火星の表面であればホウ酸が十分に存在しているのだそうです。
火星隕石は、ちょっとWebで調べただけでも200個以上見つかっていて、本書を読んでいると、あながち私たちは火星から来たというのはありえるかもしれないと思いました。
本書は、辺境の微生物研究について書かれていますが、高温でも、低温でも、酸素がなくても生きていける微生物が見つかっています。

ハロモナスは、ほぼ淡水でも、ほぼ飽和の食塩水でも、どんな塩分の範囲でも生きられるそうです。南極の海の氷からも大西洋の海底火山からも同じ遺伝子のハロモナスが見つかっており、北極の調査ではハロモナスが硫黄酸化して独立栄養することまで分かったそうです。
もう一つ、デイノコッカス・ラジオデュランスという菌は、放射線に耐性があります。放射線だけでなく、高温、低温、その他諸々のどんな極限環境にも強いため、ハロモナスと同様、極限環境では必ず出てくる菌になります。どちらも乾燥に強く水分を抜かれても死なないそうです。
デイノコッカスのすごいところは、ゲノムを複数持っており、放射線によりDNAをバラバラに断片化されても、修復してしまうところです。人間がゲノム解析をする時のように、細胞内でデータとデータの重複する部分をつなぎ合わせて、もとの塩基配列に戻してしまうのだそうです。人間が死ぬレベルの1万倍から10万倍の放射線を浴びても死なないそうですし、成層圏から微生物を拾ってくると、デイノコッカスに近いものがとれるということで、宇宙線にも耐えられる菌、もしかしたら、火星からやってきた最初の生物だったのかもしれませんね。
宇宙、特に地球の磁場や太陽系を離れた場所では「カクテル光線(粒子線):いろいろな粒子線がミックスしている」が高速で飛び交う危険な場所です。ヴァン・アレン帯という 地球の磁場にとらえられた、陽子(陽子線)、電子(ベータ線)からなる放射線帯を突き破ったのは、月まで行ったアポロ・ミッションだけだそうです。人体や生物に対する影響はよく分かっていませんし、カクテル光線を地上で再現するのも難しそうです。

火星から隕石に乗って地球に来たというのは、3割程度の確率かなと言うことでした。
もう一つ面白かったのが、光学異性体です。D型(dextro-rotatory:右旋性)、L型(levo-rotatory:左旋性)という鏡像関係にある二つの分子は、凝固点あるいは沸点といった物理的な性質は全く同じで構造も鏡で映したように対称だけれど、重ね合わせることはできない関係です。
宇宙には、右巻きの光もあれば左巻きの光もあり、その光を受けて生成された分子も左か右かどちらかに偏ります。ところが、地球上の生物はL型アミノ酸を使っているのだそうです。地球にもD型の生物がどこかに隠れて生きているかも知れませんし、宇宙から飛んできた岩の中に入ってる生き物が、D型のアミノ酸である可能性も大いにあるということでした。
過去記事「地底人」では、地底で恐竜が進化したという話でしたが、生命は地球で誕生したとばかり思っていたので、火星起源説は斬新で、面白いなと思いました。
そして、宇宙旅行にも耐えられる菌も居そうだというのは、さらに夢が広がります。
もし、D型人間(宇宙人?)に出会ったら、とりあえず食べられはしない(型が違うので栄養にならない)ということで、自分はL型であることをアピールして、冷静に話し合えたらいいなと思いました。過去記事「太陽は緑色!?」を思い出します。
