今回は、「日本史の謎は科学で解ける」(2023年)がすごく面白かったのでご紹介します。
過去記事でも何度か出てきた通り、Dr.STONEというアニメが家族で大好きなのですが、Dr.STONEや「ポケモン空想科学読本」が好きな方は、多分好きな内容だと思いますよ!
特に火薬の話で面白いなと思ったところをまとめたいと思います。
人類で最初に登場した黒色火薬は、木炭・硫黄・硝酸カリウムを粉末化して混合したものですが、日本では硝酸カリウム(硝石)が天然で採掘できなかったため、中国からの輸入に頼っていたのだそうです。一方、九州で採れる硫黄を元と敵対していた南宋に輸出しており、それが元寇襲来の引き金になった一因なのだそうです。
Dr.STONEでは、コウモリの糞の蓄積により生じた洞窟で採れる硝酸が最初に出てきますが、日本では硝石が採れないし…と考えた末のストーリーだったんだと、感心してしまいます。
てつはうとは、元寇が用いた爆弾で、元寇襲来の絵図『蒙古襲来絵詞』にも描かれています。陶器でできた丸い容器の中に火薬と鉄片が詰め込まれたもので、それに導火線をつけ、点火してから相手に投げつけ、火薬を爆発させたそうです。爆発と同時に鉄片が飛び散るので、殺傷能力もあっただろうということでした。
重さは4kgほどあるので、投げるには砲丸投げのように投げるか、ハンマー投げのように投げなければいけません。本書によると、砲丸投げでは20m程度、ハンマー投げでは最大80mくらい投げられるということですが、味方を避けて遠投するのは容易ではなかったはずだということです。
黒色火薬は湿気に弱く、日本が元軍を撃退できた理由には、神風の他にも、てつはうの扱いづらさに助けられた部分もあったのかもしれません。面白いですね。
忍者は「焙烙火矢」と呼ばれている火薬を仕込んだ弓矢を武器として用いていました。焙烙火矢は、てつはうを研究する中で生み出されたものだという説もあるそうです。
ネットで「忍者・火薬」で検索していると、
「忍者はヨモギに尿をかけて土中に伏せこんだ。
こうして微生物発酵させて、尿の中のアンモニアとヨモギに多く含まれるカリウムを反応させて硝酸カリウムを作ったのである」
というものもあり、忍者が日本の火器の発展に貢献したと言えそうです。
長篠の戦い火縄銃を駆使した信長軍が、三段撃ちという戦法で強敵の武田軍に勝利したのは有名ですね。火縄銃は1発発射してから次の発射をするまでに熟達者でも20~30秒はかかったようです。
信長軍の三段撃ちについては後世の創作だとも言われているそうです。火縄銃では火縄の着火部分がむき出しになっているため、3人が狭い場所で入れ替わり立ち替わり撃ち続けるのでは、引火のリスクが高すぎるのだということでした。 火縄銃の発射回数を増やすために、射撃、弾込め、火薬詰めを作業分担したという説もあるそうで、確かに、そちらの方が正解な気がしますね。
一般的には秀吉のバテレン追放令は、南蛮人を追い出すことが目的とされていますが、実は、大名たちが火薬と引き換えに日本人を奴隷として南蛮人に売っていたのをやめさせるためだったそうです。ヨーロッパへ連れて行かれた若い女性は奴隷として、若い男性は兵士として売られており、火薬一樽に対して50人という記録も残っているそうです。
日本で火薬が作れるようになったのは江戸時代で、白川郷の家の床下に穴を掘り、蚕の糞、人尿、ヒエなどの山草を加え、4〜5年かけて硝酸イオンを含む土を作っていたと考えられるということでした。臭くなかったのかな?
日本は雨が多く、家畜の糞尿が流れてしまうため、どうしても硝石の作り方が分からず人を売ってでも購入したしなければならなかったということですが、1樽50人って…どれだけ海外に売り払われていったのでしょうね。
江戸時代に日本で花火が発達したのも国産火薬が生産できるようになったからだそうです。人間の探究心というのはものすごいと思います。もちろん、火薬のせいで人が売られ、戦争が悲惨になったりさらに凶悪な兵器が開発されたりしている訳ですが、なければ良かったとも思えないんですよね。
本書では他にも銃や大砲、船、酒の話など、とても興味深い話ばかりで面白かったです。