今回は、「フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」(2017年)を読みました。
本書では、「ティーチング vs コーチング」や「ポジティブフィードバック vs ネガティブフィードバック」といった二項対立を否定し、耳が痛いことでもフィードバックを行い部下を育てることが大事なのだと説明します。
私も教員をしていたので、ティーチングがダメだとも思っていませんし、コーチングでなければならないとも思っていません。しかし、構成主義である以上、一方的に教えるのは好きではありません。ティーチングとコーチングを合わせたフィードバックの方法について学んだので、まとめたいと思います。
腹をくくってください。
相手から逃げないでください。
しっかりと相手に向き合ってください。
いったん始まったら、こちらも逃げられないのがフィードバックです。
言いにくいことを伝えなければいけない時、挙動不審になったり、目をそらしたり、体を横に向けたりしてはいけません。相手から目をそらさず、覚悟を決めて、しっかりと向き合うことが大切になります。
この際、時間はいくらかかっても良いと伝えて、中途半端に終わらないよう、十分な時間を確保する必要があるということでした。想定の2倍の時間がかかることを覚悟しましょう。
フィードバックでは、淡々と客観的なスタンスを崩すことなく、事実を元に話すことが大切です。SBI情報、「どんな状況で(Situation)」「どんな振る舞いをしたことで(Behavior)」「どんな影響があった(Impact)」を伝えると効果的だということです。
この時、出所があいまいなことを言うのは厳禁です。3人くらいが同じことを言えば、それは限りなく真実に近いと考えられるため、人から聞いた情報は「トライアンギュレーション (三角測量) 」 を常に意識してくださいということでした。これは同じ3人でも、違うグループの人からの意見なのかも要チェックだと思いました。
また、「〜のように見える」という話法を使って、一方的に決めつけるような物言いも避けましょう。子どもを叱るときも「Ⅰメッセージ」で伝えましょうと言いますよね。
そして、事実を伝えた後は、「あなたはどう思う?」と聞いて、本人の言い分もしっかり聞くようにしたいものです。
フィードバックにより、ついついその場があまりにも厳しい場になったからといって、罪悪の念にかられて、無駄に相手を褒めてはいけません。下手に褒めたりねぎらったりすると、ポジティブな発言の方にスポットが当たってしまい、厳しいことを指摘した効果が薄れてしまう危険性が高いです。相手のタイプにもよりますが、フィードバックの内容を完全に忘れてしまうことすら考えられます。
耳の痛いことであっても、誰かが言わなければ、部下は成長しません。嫌われることも「役割」だと腹を括って、ここは、ぐっと堪えましょう。
フィードバックのクロージングでは、相手に期待を伝え、その後に、「再発予防策」も考えてもらいます。再発の可能性を認識してもらい、対策を本人に考え、決めてもらうことが大切です。その際、手助けできることがあれば協力することも伝えると良いですね。
そして、フィードバックを無駄にしないためには、フィードバック後も「1on1」などの面談を定期的に行い、相手をフォローし続けることが大切だということでした。
タイプ別フィードバックのQ&Aがとても分かりやすくて参考になるなと思ったので特に気になった一部をまとめておきます。
・逆ギレ⇒具体的な改善策を聞く
・言い訳⇒しゃべらせて、矛盾を炙り出す
・他人のせい⇒「傍観者に見えるよ」と指摘する
・上から目線で批判⇒「もしあなたなら~」と仮定法で意見を求める
・黙り込む⇒こちらも負けじと黙り込む
・根拠なきポジティブ/大丈夫です!⇒なんとかなる理由を具体的に聞く
・話のすり替え⇒話を元に戻して、何度でも同じことを述べる
・都合よく解釈⇒「私の言いたいことはそうではない」とはっきり伝える
本書を読んで、過去記事「誠実たれ」で紹介したエイミー・エドモンドソンの心理的安全性の定義を思い出していました。
フィードバックで自分の欠点を突かれるというのはとても辛いし苦しいことですが、お互いに何も言わないという意味での安全な関係では成長なんてできませんよね。本書では上司が部下にフィードバックをして、その上司は他の環境でフィードバックを受けましょうという話でしたが、職場のみんながお互いに言いにくいことでも言える関係というのが築ければいいのになと思いました。もちろん、ポジティブなフィードバックも含めて率直に言い合える関係です。
それには信頼関係は大前提として、自分自身も他者からのフィードバックに対して向き合い、改善しようと努力することで、相手も自分の欠点に向き合ってくれるようになるのではないかなと考えました。
本書を読みながら、私もそんな人間になりたいと思いました。