今回は、「戦略論と科学思考の教科書: チームで創るデータ駆動イノベーション」(2024年)を読みました。
要は、例えば心理学とか社会学のような他分野学びをビジネスにも活かすという話(だと思う)で、雑読家の私が感じていることと同じで、やっぱりそうだよねと思いながら読みました。しかし、本書は話が抽象的で私の頭には入ってきにくかったんですよね。本書を読みながら、「「解像度が高い人」がすべてを手に入れる 「仕事ができる人」になる思考力クイズ51問」(2024年)が頭をよぎり、腹落ちしなかった概念を具体化して考えてみようと思ったので、整理したいと思います。
理論の真実性を重視し、繰り返しの検証によって、その理論が真実とみなされる考え方
「STAP細胞はあります!」と言うだけではダメ。研究でもビジネスでも、誰がやっても再現できることが真実だということ。誰も(本人ですら)再現できなかったので、STAP細胞はウソだったと結論づけられた。
しかし、どう頑張っても実証できないことというのが世の中には存在する。例えば、「死んだらあの世に行く」。これは繰り返し検証できない。ビジネスなら世の中の状況はどんどん変化するし、人それぞれ人生経験が異なり、そのサービスの意味や価値が違うので、再現することは不可能だということ。
実証主義は「自己確証的」な性質を持つため、「一度確立された理論や命題が、後続の研究や観測でも過度に信頼され、それが唯一の真実かのように扱われる傾向」がある。つまり、同調圧力、確証バイアス(自分の願望を強化する情報に目が向き、反する情報は軽視する傾向)、思い込みに注意。地球が太陽の周りを回っているって証拠を出しても、誰も認めなかったよねということ。
理論を疑い、反証を試みることで、新たな知見や改善の可能性を探る考え方
実証できない事柄は、反証に耐えられるかで判断した方が良い。既存のパラダイムや仮説を絶対的な「真実」とは考えず、あくまで「暫定的に信頼できるもの」と位置づけ、この既存の仮説に対して、反証を試みるということ。
ビジネスで言うと、この商品が売れているのは人気のアイドルを広告に起用したから…かも知れないが、広告、価格、お店での陳列、口コミなどかもしれない。「〇〇が正しい」と上司が言っても、できるビジネスマンは信じてはいけない。
反証主義は「自己修正的」な性質を持ち、新しい証拠やデータが得られた場合、それを基に既存の理論を修正・更新する柔軟性がある。一度「正しい」と認定された理論や仮説でも、「間違っているかもしれない」と常に考え続けることが大切。
「組織」における、変化や生存競争を解明している理論。「自然界での生物種」の変化や生存競争を解明している進化論の、「組織」版のようなもの。
ダーウィンの進化論を組織に適用した理論で「組織が環境に適応する能力の限界」と、その適応過程での「組織の慣性」の役割を明確にしている。組織の慣性とは、ある経路に沿った発展を始めた組織にとって、既存の進路を変更することは困難であること。さらに、実証主義が組織の根底にある場合、「短期的な成功感」が組織の視野を狭めて、従来の成功体験が、無意識のうちに現状維持を求める原因となる。
つまり、生物の進化と同様、環境の変化に柔軟に対応できる組織には多様性があり、反証思考がある。VUCAの時代、組織が過去の成功に固執していては生き残れない。まさに、過去記事「フローが良いのか、ストックが良いのか」の生まれ変わりは大変だということ。
戦略論には、いずれの時代も変わらない一定の「原理」が存在する。
- アート:直感、創造性
- サイエンス:論理的思考力、分析力
- クラフト:実践能力、適応力
アートは、形式化されたルールや手順に捉われず、新しいアイディアや斬新なアプローチを生み出す力があるということ。
サイエンスは、客観的かつ定量的な証拠を調べて不確実性を減らし、リスクを計算して、戦略の効果を最大化するということ。
クラフトは理論を実際の運用環境や組織の文化に合わせて微調整する。さらに、実践からのフィードバックを得て、戦略を継続的に改善するということ。
ビジネスにおける戦略を考えるときも、その戦略に斬新さはあるか?客観的データによる裏付けはあるか?その理論は現在の環境に合わせて微調整したのか?を検討すれば、きっとうまくいく。
本に書き込みする人は、この抽象的な話を具体化して、自分に引き付けて考えるというのをして、メモしているんだろうなと思います。今回、浅いけれどやってみて、ただ読んだときよりも理解が深まった気がします。
とにかく、人間に起きる各種バイアス、認知の歪み、選択傾向を知って、自分を客観視すること、組織の多様性を失わないようにして、様々な意見に耳を傾けることが大切なんだと理解しました。