今回は、「新装完全版 大国政治の悲劇」(2019年)「ミアシャイマー入門 世界情勢を読み解く思考のレンズ」(2025年)「攻撃的リアリズムとは?ミアシャイマー理論の徹底解説 国家はなぜ終わりなき軍拡競争に陥り戦うのか? : 米中衝突・欧露関係・ウクライナ危機をミアシャイマー理論で読み解く」(2025年)と、ミアシャイマーを読み漁ったので、学んだことをまとめたいと思います。
ジョン・J・ミアシャイマーは、国際政治学者で元軍人(空軍)です。攻撃的リアリズムを提唱し、現実主義を重視した安全保障について研究しています。40年にもわたって大国間の競争を研究し、『大国政治の悲劇』は、世界中で読まれ、政策決定者にも大きな影響を与えました。
特に、近年注目されているのは、中国の台頭と米中摩擦やウクライナ侵攻を予期していたことによります。かなり早い段階から、アメリカは中国の台頭を阻止するべきだ、ウクライナは核を放棄すべきではないと言っており、その通りの現実が訪れています。
テレビのコメンテーターが解説していた説明は、ミアシャイマーの理論だったのだと本書を読んで気づきました。
一方、予言が全て当たっていたという訳ではありません。ミアシャイマーは、ヨーロッパの安定、EU連合により共通通貨まで作られるとは考えていませんでしたし、日本の平和主義がここまで強固なのだとも考えてはいませんでした(大国になろうとするだろうと考えていた)。
さて、そのミアシャイマーが提唱する攻撃的的リアリズムの論理について整理したいと思います。
国際無政府状態の下、国家は生存のために権力を最大化しようとすると主張。大国は地域覇権を目指し、他地域での覇権国出現を阻止する。協力は限定的で、大国間競争が国際政治の本質とする。防御的現実主義より悲観的な世界観を持つ。
ということで、現実は甘くないよ、争いはなくならないよ、というものです。国際無政府状態というのは、大国には拒否権があり、大国が存続を脅かされるような状況では実質的に何でもありという意味です。大国は存続のためには地域覇権を目指さざるをえないのですが、海が軍事的な障壁となるため、地域覇権を目指すということになります。そして、他地域での覇権国が出現すると(例えば中国)、それを阻止しなければ、ゆくゆくは自国の存続が脅かされるため、摩擦が起きます。これが、終わらない戦略増強、兵器の開発となり、続いていきます。
一方、小国が勢力の均衡化を実現する手段であるとしては、以下のようなものがあります。
①内部バランシング
自国の軍事力を増強することで、強大国に対抗しようとする行動です。
これは、北朝鮮が良い例で、国内の経済を無視してまで核兵器を作りました。核兵器を持っていなければアメリカと対話ができるはずもありません。
②外部バランシング
他国と同盟を組むことで、強大国に対抗する行動です。
こちらは、EUやASEANがそうですし、中国の台頭に対し、アメリカは同盟国(日本、韓国、オーストラリアなど)との関係を強化しています。
③バックパッシング(責任転嫁)
強大国への対抗を他国に任せ、自国はコストを負担しないようにする戦略です。
アメリカは第二次世界大戦の初期、ヨーロッパでの戦争に介入せず、イギリスとソ連に対独戦を任せようとしたのはわかりやすい例になります。
④バンドワゴニング(勝ち馬に乗る)
強大国に対抗するのではなく、強大国側に付く戦略です。
しかし、ほとんどの場合、国家はバランシングを選ぶというのがミアシャイマーの見解です。
本書を読んで、小国の外交は、針の穴を通すような、極めて難しい判断を迫られるものだと理解しました。お隣に中国があり、台湾問題では大きな影響がおよぶ日本も同じです(ミアシャイマーの論理では、日本は大国ではない)。そして、日本も核を持つべきだという意見も、根拠を持って理解、納得できました。
ミアシャイマーの考え方は世界中で物議を巻き起こし、今も論争されているそうですが、私としては、「そうだよね」という納得が強かったです。
子どもには難しい話かも知れませんが、日本の教育、特に歴史教育においてミアシャイマーの考え方について意見を出し合い、対話する機会があってもいいのではないかと思いました。現実的すぎて、悲観的になるという意見もありますが、現実を直視しなければ、本当の平和は訪れない気がします。
攻撃的リアリズムというのは、歯科のカイスの輪みたいなもので、虫歯予防には他にももっと影響する因子が沢山あるのだけど、ここは押さえておく必要があるというようなものだなと思いました。


