前回、「日本でいちばん大切な会社」で心を洗われた訳ですが、今度は真逆とも言える、「劣化するオッサン社会の処方箋~なぜ一流は三流に牛耳られるのか~」(2018年)を読みました。
本書を読んで、息子が歴史ある大企業に勤めると言ったら、一旦反対しようと思ったので、その根拠をまとめたいと思います。
本書で用いられているオッサンとは、以下のような特徴をもつ人物です。
- 古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する
- 過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない
- 階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る
- よそ者や異質なものに不寛容で、排他的
男性だけという訳ではなく、年齢によるものでもないことには注意してください。
一流は二流より圧倒的に少なく、二流は三流より圧倒的に少ないということで、正規分布ではなく、パレート分布していると説明しています。そして、構造的に最初に大きな権力を得るのは、いつも大量にいる三流から支持される二流なのだそうです。これは、過去記事「IQが20違うと…」を思い起こさせました。
そして、少数の二流の人間は、多数の三流の人間からの賞賛を浴びながら、実際のところは誰が本当の一流なのかを知っているため、周辺にいる一流の人間を抹殺しようとするそうです。
さらに、二流のリーダーが引退すると、彼らに媚び諂って信頼の貯金をしてきた三流がリーダーとしての権力を持つようになり、その組織はビジョンを失い、モラルは崩壊し、シニシズムとニヒリズムが支配する組織ができあがる、これがまさに日本で起きている劣化するオッサン現象ということになります。
これは、年功序列で比較的安定している組織で顕著に起こります。経団連の話は、まさに同質の、劣化するオッサンが蔓延っている状態だなと思ったし、政治家もそうですね。一流の人材を呼び込み、重役に登用するという自浄作用が全く働かない組織になってしまうというのがよくわかりました。

では、そのような劣化した組織はどうすれば良いかというと、全部ぶっ潰して作り直すしかないようです。明治維新や太平洋戦争の終戦の後に若くて一流の人たちが日本を引っ張っていったのを思い起こせば理解しやすいですよね。
擁護するわけではありませんが、日本で劣化したオッサンが増えたのには、文化的背景の他に社会環境の影響もありそうです。

今のオッサンは、70年代に絶滅した「教養世代」と、90年代以降に勃興した「実学世代」のはざまに発生した「知的真空の時代」に若手時代を過ごしてしまったと説明されています。ソコソコの大学を出てソコソコの会社に入ってソコソコに頑張っていればお金持ちになって幸せになる、という幻想を持ち続けてしまった、哀れな世代です。「功利と便益を保証してくれるシステムに対して、無批判に自己を同化させることで、システムがもたらす便益を最大限に搾り取ろうとした人たち」とも説明されていますが、教養にも実学にも弱く、経時的劣化するシステムを改変、修正できない人たちが、年功序列によって社会や会社の上層部で実権を握るようになったということです。
そのようなオッサンに自分もならないようにしなきゃと思うわけですが、サーバントリーダーシップを目指すのが良さそうです。「支配型リーダーシップ」と対峙する言葉で、権力に頼らない「支援的なリーダーシップ」を意味します。
南極探検隊を組織した白瀬矗と、これを支援した大隈重信の関係がとても面白くて、印象に残りました。持てる人脈、金脈を総動員して白瀬のイニシアチブをバックアップした大隈重信でしたが、「南極はさぞや暑いだろうから、暑さにやられぬよう、十分気をつけたまえ」と言って白瀬を送り出したと言うのです。過去記事「南極体験」で白瀬隊の南極探検の話も読みましたが、そんな面白い話、書いてありませんでしたけど(笑)
サーバントリーダーシップとは、若手に任せて、後方支援に徹しろということですね。
リーダー次第でその組織は大きく変わりますが、誰をリーダーにするのかというのは、特に大企業では難しい問題です。一流がリーダーになり大きく発展させたとしても、人は必ずエラーを起こすので、次のリーダーに一流を選ぶことはかなり難しいのだということを学びました。そして、代替わりしていくたびに三流のオッサンが占めるようになる。つまり、歴史ある大企業ではオッサンが上層部を占める傾向にあるということがよく分かりました。
本書を読んで、そんなオッサンでも、その影響力を使ってサーバントリーダーシップを発揮すれば良いことを学びましたが、オッサンはそもそもこんな本を読みませんね。息子が就職する時には、オッサンが上層部を占めている代謝の止まった会社ではなく、小さくても若くて理想を持った良いリーダーのいる会社を選ぶよう助言しようと思いました。
ぺにょは、イラストACで歯科イラストを投稿しています!

