今回は、「これからの教養 激変する世界を生き抜くための知の11講」(2018年)を読みました。
全く違う世界の話で、ゲストスピーカーの方の本を読み込んでいないと意味がわからないなと思う対談だったのですが、医療に関する話が興味深かったので、「予防医学のパラドックス」についてまとめたいと思います。
ハイリスク戦略(アプローチ)は、歯科衛生士の国家試験にもよく出てきます。健康な人たちは放置しておいてよく、ハイリスクな人たちに介入しなければならないという考え方です。
ところが、ハイリスクな人たちを相手にしていればいいという前提条件が20世紀後半、見事なまでに崩れたのだそうです。これが後に「予防医学のパラドックス」と呼ばれます。
高血圧は脳卒中の大きなリスク要因ですが、正常血圧の人でも、脳卒中になるリスクがゼロではありません。しかも、人数で見ると、高血圧の人より正常血圧の人のほうが発症者は圧倒的に多いことが分かったそうです。つまり、健康診断を受けて「正常です」と診断された人たちの群から、脳卒中患者が最も多く出るということです。患者数は「母数×リスク」であるということを研究者達は発見しました。
予防医学は、それまで「ハイリスクの人たち」に目を向けて対策を立ててきましたが、この「予防医学のパラドックス」が提起されてからは、「多い数の人たち」に目を向けて対策を立てるように変わったということでした。
これがポピュレーション戦略(アプローチ)です。下図のような問題が出るのですが、なぜ国家試験に出るのか分かった気がします。

日本人は長寿だと言われますが、実は、喫煙率も飲酒率も高く、睡眠時間は世界で最も短いグループに入っています。運動も不足気味だし、野菜や果物の摂取率も高くありません。つまり、日本人は健康にプラスになるようなことをほぼしていないのです。

では、なぜ長寿なのかと言うと、社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)が関係しているそうです。日本人の、相手を信頼したり、お互いさまと考えたりできる度合の高さが、健康に影響をあたえるということでした。
人の行動は人びとの間で伝染するものであり、肥満も伝染するという研究もあるそうです。つまり、友達が太ったら自分も太る、逆もまたしかりということです。
これは一大事ですよ。確かに、家族の体型は似てくるし、太った人は太った人と、痩せた人は痩せた人とよく一緒にいますよね。過去記事「ユニバース25実験」で環境が大事なんだと言うことを学びましたが、思っている以上に周囲の人からの影響というのは大きそうです。
人と人の関係のなかでは、肥満も幸福も、悪いこともよいことも、いろいろと感染するということでした。
ハイリスクな人だけを対象にする従来の戦略では病気の全体数を減らせないという話は、ポピュレーションアプローチという概念は知ってはいたものの、改めて驚きました。さらに、健康は信頼やつながりといった「ソーシャル・キャピタル」に大きく支えられていること、肥満や幸福が集団内で“伝染する”というのも、なんとなく分かってはいたけれど、改めて言語化され、理解できた気がします。
健康には、生活習慣よりも良好な人間関係が大事ってことですね。
