今回は、「奨学金、借りたら人生こうなった」(2022年)を読みました。
本書は、世の中に流布する奨学金による借金地獄の話に対して書かれている本で、奨学金を借りたことで貧乏から脱出したり、夢をつかまえたりした人たちのインタビューを中心にまとめた本です。奨学金を借りたことで成功できたという人は、どのような考えたかで借りたのかというのが参考になったので、まとめたいと思います。
奨学金と言えば日本学生支援機構(JASSO)ですが、3種類あります。
① 給付型(返さなくてよい)
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対象:経済的に厳しい家庭の学生
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金額:進学先・自宅通学か自宅外かで異なる(例:月2〜7万円程度)
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特徴:住民税非課税世帯・それに準ずる世帯が対象
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返還:不要
② 第一種奨学金(無利子・貸与)
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対象:成績優秀かつ経済的支援が必要な学生
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金額:大学生で月2〜6.4万円程度(自宅/自宅外で異なる)
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返還:卒業後に分割返還(無利子)
③ 第二種奨学金(有利子・貸与)
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対象:経済的支援が必要な学生(成績基準は比較的緩やか)
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金額:月2〜12万円(希望額を選択)
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利率:上限年3%(実際は0.2〜0.5%程度のことが多い)
そして、このほかにも地方自治体の奨学金、学校独自の奨学金(特待生制度など)、民間企業による奨学金などもあります。
高校3年生の時に申し込まなければいけない奨学金があったり、重複して借りれる奨学金などもあり、もし、奨学金を借りて進学しようと考えている場合は、とにかく情報収集が重要だということが分かりました。基本的には、高校や大学で説明があるそうですが、学校によってその説明の質が異なるようです。そして、大学進学する学生の半分は、奨学金を借りているということでした。

本書では、看護奨学金や医師奨学金を受けた医療従事者の話もあります。これ、実は歯科衛生士にもあって、比較的大きな歯科医院さんが歯科衛生学生に対して奨学金を給付してくれます。
奨学金を受ける学生には、卒業後、指定の医療機関で一定期間働かなければいけないという制約が付きます。そして、もし働かない、指定期間(2~4年)働かずに辞める場合は借りたお金を一括返済しなければなりません。もちろん、職場が合わないという場合でもお金のために無理して働かなければならないという人もいるそうです。
奨学金が「悪」だという報道が多い一方、本書では、奨学金により人生を好転させた人の話が多く掲載されています。特に、貧乏が世代間で連鎖している場合は、その鎖を切ることができる有力な手段になります。本書では貧乏でも医者や弁護士になったり、大手企業に勤めて、働きながら返済している人の話がいくつも書かれています。特に給付型の奨学金は強い味方になりますね。「奨学金を借りないことには人生が始まらなかった」という言葉には重みを感じます。
というか、これが本来の奨学金ですよね。最近の、勉強したくもないのに見栄のために大学に進学させられた子は本書には出てきません。
さらに、両親との不仲により、家を出る手段として奨学金を借りた例も紹介されていました。バイトとの掛け持ちで学費をまかない、全部自分で工面するというのはすごいことだと思います。奨学金を借りるのに有利だと考え東京の大学に行ったという話は、そういう考え方もあるのか、と勉強になりました。そして、実際裕福な家の子が多く、大学独自の奨学金も潤沢にあったりして、奨学金が受けやすかったみたいです。
そして驚いたのは、親は裕福なのに奨学金を借りる学生の話です。奨学金は一般のローンよりも低金利で借りれるため、そのお金を使って投資で運用する大学生も一定数いるようです。賢い…。毎月入ってくるので、積み立てNISAとかいいかもしれませんね。借りたお金をFXや仮想通貨などにつぎ込んで溶かさないようには気を付けないといけません。
本書を読んで、奨学金はやっぱり借金なんだけど、「大学に行く」「資格を取る」という明確な目標をもって、自分事として借りるべきだなと思いました。だって、何もしなくても、複数の奨学金を受ければ月に20万円も入ってくる生活が一定期間続くわけです。しかも学生の時に。やっぱり感覚がおかしくなる人もいると思うんです。
私の元夫は奨学金を1000万円超えで借りていて、月の返済が7万円もありましたが、働く気はゼロで、自分の奨学金の分しか働きませんでした。(そして「なぜ妻(ぺにょ)が働いて我が家は生活できているのに、自分が働かなければいけないんだ」と切れられたので別れました笑)
給付型の奨学金なら良いのですが、無利子でも、有利子でも、奨学金を借りるというときには、お金を借りているという事実を忘れずに、自分の目標を見失わないようにしなければいけないのではないかとつくづく思いました。
