今回は、「データエコノミー入門 激変するマネー、銀行、企業」(2021年)を読みました。
ビッグデータについては、これまでも学んできましたが、銀行の出入金データを手に入れることはこれまでのビッグデータとはレベルが違うこと、デジタル通貨CBDCについて学んだので、整理したいと思います。
マネーをビッグデータとして用いるためには、3つの方法があります。
第一は、電子マネーによってデータを得ることだ。現金通貨には匿名性があるが、電子マネーにはない。だから電子マネーでの取引によって、膨大なデータが集まる。これは、ビッグデータとして活用できる。
第二は、デジタル通貨(「Diem」のような大規模な仮想通貨、あるいは中央銀行デジタル通貨など)によってデータを得ることだ。こうした形態のマネーは、まだ現実化していないが、近い将来に導入される可能性がある。
そして、第三は、銀行が保有している顧客データ(預金の出し入れ、振込など)のデータを用いることだ。
マネーのデータというのは、詳細かつ正確であり、数量化されているので、分析もしやすいという特徴があります。しかも、誰もが日常生活の様々な場面で、毎日何度も支払いを行なっています。つまり、ほとんどすべての個人や企業について存在するため、個人でも、企業でも活用できる可能性があります。
この特徴を使い、中国では、AlipayやWeChat Payという電子マネーによって得られるデータを用いて「信用スコアリング」が行なわれています。これは、過去記事「ジャーニー型のビジネス」でも学びました。
そして、この信用スコアは融資の審査などに用いられます。融資判断が正確であるため、延滞率が低くなるのだそうで、Alipayは、「決済サービスを無料にし、そこから得られるデータを活用して収益を上げる」というビジネスモデルを確立したということでした。
また、過去記事「夫婦でも信用し合えない中国人の歴史的背景」でも学んだように、中国はお互いを信用できない社会です。そのため、信用スコアは肯定的に受け入れられているということでした。
CBDCとは中央銀行が発行するデジタル通貨です。利用手数料については、送金者側でも受け取り側でも、おそらくゼロに近い水準になり、この仕組みが構築されれば、海外への送金は、著しく効率化するようです。

そして、中国はCBDCである「デジタル人民元」の発行を計画しています。4大商業銀行(中国銀行、中国建設銀行、中国工商銀行、中国農業銀行)が仲介機関となり、利用者は、4大銀行のいずれかに保有している預金を取り崩して、自分のウオレット(電子財布)にデジタル人民元の残高を得ます。将来は、貿易相手国などとの国際決済にも用途を広げる予定なのだそうです。中国がデジタル人民元に積極的ですが、真のの目的は、国民の一人一人に関する詳細なデータを入手することだということでした。
一方、デジタルドルについては、影響力が莫大であるものの、あまり進んではいないようでした。日本も、がんばれ!
日本の地方銀行はあちこちで合併していますが、このような電子マネーやデジタル通貨の登場によりますます苦しくなる予想です。銀行間手数料というのは、資金を振り込む(仕向け)銀行が、振り込まれる(被仕向け)銀行に支払うのだそうです。つまり、メガバンクなど大手行が仕向け側となり、地方銀行が被仕向け側となることが多く、銀行間手数料引き下げによって、大手銀行の収益は増加するが、地方銀行は減益になる可能性が高いということでした。さらに、手数料頼みの経営では、CBDCの登場で莫大な影響を受けますね。
銀行の持つ出入金データをどう活用していくかが課題となりそうです。
本書を読んで、未来のマネーはデジタルになるんだなということがよくわかりました。もし、日本でCBDC(デジタルエン)が登場したら、真っ先にスマホに入れようと思います。一方、ゴールドの価格も2万円を超えていて、リアルマネーに対する価値観もこれからどんどん変わるのかなと思います。乗り遅れて、大損しないようにしたいですね。

