今回は、「リピーター医師 なぜミスを繰り返すのか?」(2013年)を読みました。
本書の著者さんは、医療裁判に詳しい弁護士さんで、リピーター医師について国に提訴された方です。医療において、人が関わる限りミスをゼロにするというのは不可能です。しかし、本書の説明を読むと、社会の仕組みとして医師の自己研鑽だけに依存し、運転免許のように免停といった罰則や、免許更新のための研修などもないこと、そして、賠償制度では医師が自分のミスを認めることができないし、反省する機会もないということがよく分かりました。こんな医者はダメだよねと思ったことをまとめたいと思います。
本書の貞友義典弁護士は2003年に医療過誤を繰り返す医師(いわゆる“リピーター医師”)が制度的に放置されていることに対して、国の責任を問う国家賠償請求訴訟を代理人として提訴しています。
『日医雑誌』(日本医師会雑誌)には、
・日本医師会の会員で、患者側から100万円を超える損害賠償を請求された医療事故を2回以上起こした医師は、1973年から1995年までの27年間で、511人にも及ぶこと
・その内訳は、2回が391人、3回が82人、4回が22人、5回以上が16人であること
という報告もあるそうです。
著者さん曰く、「医師の知識や技術が低劣であり、それがリピーター医師が生まれる原因である」のだそうで、そこには、先述したような社会の仕組みとしての問題と、医師賠償責任保険により金銭的に守られ、反省できる機会もなければ本当のこと(自分が医療ミスをしたこと)も言えないといった構造があるようです。
では、こりゃあかん!と思ったリピーター医師の話です。
まず、自分が処方する薬品の添付文書すら読んでいないということです。「禁忌」としっかり書かれているのに、それを患者に処方・投与し重篤な後遺症を生じさせたり、死亡させたりしている事例が紹介されています。
私は歯科衛生士なので、薬を処方することはありませんが、セメント(かぶせものを歯につけるときの接着剤)などの材料は必ず添付文書を確認することを学生さんにも指導していました。確かに小さい文字で何やらたくさん書かれていますが、使い方や禁忌は読まないといけないですよね。
特に昔からあるような薬剤では、後から禁止事項が追加されるようなこともあるそうで、医者は常に新しい情報を得て、学び続ける必要があるということでした。
もう一つ、こりゃあかん!と思った医師は、モニターの読めない産婦人科医です。
妊娠後期になると、妊婦検診でお腹にセンサーをつけて30分くらいモニターするという検査がありますが、出産時もその波形を見て胎児の心拍や胎動、子宮の収縮をチェックしています。その波形を見れば分かる常位胎盤早期剥離(さざなみ様子宮収縮波が出て胎動が消失する)が読めない医師がいるというのです。助産師が上申するも、常位胎盤早期剥離には禁忌である、子宮収縮を抑えるウテメリンを投与するよう指示を出し、出生直後に赤ちゃんが亡くなったそうです。裁判で胎動についての記録の読み方を尋ねたところ、「これは知りません」と答え、さらに、ウテメリンの「添付文書を読んだことがない」と答えたというのです。
院長の息子(代診)だったということですが、医師免許を持っているからと言って、モニターも読めない人に任せるのはダメだと思います。
裁判は、産科、個人医院が多い印象ですが、大学病院や大病院だからと言ってリピーター医師がいない訳ではありません。著者さんは、大きな病院こそリピーター医師の隠れ蓑になっていると言います。詳しくは本書を読んでいただければと思いますが、医療ミスを隠し、病院を転々としているようで、転々とした挙句、ある病院では転職したばかりで「部長」「医長」の肩書きをもらっていることもあるそうです。
恐ろしいですが、実は、病院歯科医師にも近いものを感じています。いい年で、歯科医院の開業もせず、ある程度大きな病院に赴任してきた先生(大体、歯科部長になる)って、なんか歯科衛生士の評判が良くない気がします。もしも歯科衛生士が一斉離職した場合、やめといた方が良いかも知れません。
本書を読みながら、何度も何度も頭に響いてきた言葉は、稲盛和夫の「人間として正しいことをする」でした。
このようなリピーター医師を見抜く方法としては、やっぱり一緒に働く看護師さんに聞くのが1番みたいです。産科なら助産師さん、歯科なら歯科衛生士さんですね。とは言え、親密にならないとなかなか本音は教えてもらえないのですが…。
私としては、全く知らない先生で、知り合いの看護師さんもいない場合、医師会、歯科医師会の医療安全の理事を担当している、またはしていた先生は安全性が高いかもしれないと思っています。常に新しい報がたくさん入ってきますし、研修会を企画する側でもあるので、常に勉強しています。
本書を読んで、医師・歯科医師の自己研鑽に依存する仕組みは、著者さんたちの努力などを通して今後変わっていくのだろうと思いました。さて、歯科衛生士はどうなる!?
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