今回は、「健康を食い物にするメディアたち」(2018年)を読みました。
本書の著者さんは、WELQ問題を提起した方で、医学部を卒業し、医者にはならずに医療関係のライターをされているという方です。経済合理性ばかりを追い求めると、人の生死にかかわるのが医療情報です。本書を読んでネット広告の手口について学んだので、まとめたいと思います。
WELQ問題とは、DeNAが運営していた医療情報サイト「WELQ」で、不正確な情報や著作権侵害、SEO目的のコンテンツの量産などが問題視された一連の騒動のこと、ということですが、私は全く知りませんでした。著者さんは、ヤフーニュースの記事にがんなどの人の命に係わる医療情報が粗製乱造され、ネット検索上位を占め続けていることを指摘したそうです。そのWebページには、
当社は、この記事の情報及びこの情報を用いて行う利用者の判断について、正確性、完全性、有益性、特定目的への適合性、その他一切について責任を負うものではありません。この記事の情報を用いて行う行動に関する判断・決定は、利用者ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。
と書かれていたそうです。
月間数万回以上の検索があった病名で上位に入っていたそうですが、こりゃあいかんですね。もちろん、WELQは非公開となりました。
Googleは独自に開発するアルゴリズムにより、自動で読者の満足度を測定し、表示される順位を決定していますが、当時は長い記事が多く公開されていると良いサイトと判断され、検索結果の上位に表示されるようになっていました。Web記事を書く人にとっては、SEO対策というのは常識になっていますが、WELQではクラウドソーシングで大量の記事を集め(必ずしも専門家が書いているわけではない)、マニュアルまであったそうです。
著者さんの指摘とメディアに取り上げられたことにより、Googleはアルゴリズムを変更し、大学などの公的機関が上位に上がるようになったそうですが、先ほど「がん、ステージ4」で検索してみると、GoogleでもEdgeでも「免疫療法」ばかりが並ぶ検索結果でした。今のアルゴリズムがどうなっているのかはわかりませんが(非公開)、読者に読まれるサイト、長く滞在するサイトというのは、誰にでも分かりやすいように書かれているサイトであり、大学や公的機関のサイトではないということだとわかりますね。

WELQ問題の後にも5,000人以上の医師の参画を謳った「ヘルスケア大学」の記事が上位に表示されるようになりましたが、こちらも名ばかりの参画(勝手に名前を使われた医師もいた)であったことが判明し、情報に誤りがあったとして多くの記事が削除・非公開とされています。
また、問題は検索アルゴリズムだけでなく、アフィリエイト広告にもあります。SNSや個人ブログで商品を紹介し、読者が購入することで紹介者に報酬が払われる仕組みですが、アフィリエイターがどのように商品を紹介するかについて、広告主が事前に、完全に把握することは難しくなります。また、アフィリエイトの仕組みで法令を遵守するのは難しいのが現状なようです。

また、リスティング広告(検索連動型広告)では、検索結果を示すページの目立つ場所に広告が表示されますし、リターゲティング広告は自社のサイトを訪問した利用者を追跡(リターゲティング)し、利用者が行く先々の広告枠に自社の広告を表示されるシステムです。企業側はよりクリックされるよう広告文に工夫を凝らしており、例えば、「がん ばるあなたに」と、「がん」と「ばるあなたに」の間に半角スペースを入れ、「がん」というキーワードで検索されやすいよう巧妙に操作するなんていう健康サプリメント広告もあったそうです。
SNSでもリスティング広告にはものすごいのを実感しています。フィルターバブルを実感しますし、何度も見せられることでついついゲームをダウンロードしてしまったなんて経験もあります。これが命に係わる健康情報だと思うと、恐ろしいです。
著者さんが医療情報を見るときには、以下の点をチェックするそうです。
①WHAT(何を)
明らかなウソや不正確な情報は、「禁止ワード(すぐ、ラクに、だけで、最新、先端、奇跡、生還、若々しさ、高配合、ポリフェノール、オメガ脂肪酸、隠された真実など)」が入っていないか、「エビデンスのピラミッド(試験管やマウス実験ではないかなど)」、「相関関係なのか、因果関係なのか」をチェックします。
②WHO(誰が)
発信者の「名前」「プロフィール」「資格」「所属」「これまでの実績」などが明記されているかどうかです。発信者が組織の場合はその社会的責任の大きさを目安にします。
③WHERE(どこで)
どこで情報を発信しているかも専門性や社会低責任の大きさを推し量ることができます。査読のある学術論文なのか、新聞なのか、SNSなのかといったことです。
④WHEN(いつ)
ピロリ菌の発見など、医学情報は日進月歩しています。新しい常識はなかなか浸透しにくいため、その情報がいつの情報なのかはチェックする必要があります。たとえ、学術論文に掲載された話だったとしても、捏造により撤回されていたなんてこともあります。
⑤HOW MUCH(いくら・どのくらい)
私たちには「高いものはいいものだ」と考える心理があります。医療においては、お金さえ払えば手に入る秘密の方法などありません。また、情報の中に数字のトリックが隠されている場合(25%の医師は自分に抗がん剤治療をしない⇒75%の医師は自分に抗がん剤治療をするなど)もあります。いつも分母は何か?(成功者10人の声の場合、何人中10人の成功者なのか?)を冷静にチェックしましょう。
医療の怪しい情報は、歯科でも本当によく見ます。特に歯みがき粉が多い印象でしょうか。奇跡の歯ブラシなんかも、まさに「禁止ワード」炸裂ですね。その程度であれば、命に係わるようなことはないでしょうが、著者さんの言うように、「がん」などの病気に関する情報がこのようなあやしい情報ばかりでは、やはりいけないと思いました。経済合理性が働くから、表現の自由があるからと許されるという話ではないですよね。このような情報を見つけたら、通報すると良いそうですよ。
一方で、コロナの時のように、WHOが言ってるから、厚生労働省が言ってるからと鵜呑みにできる話でもないんだよと私としては言いたいです。中国は国全体で情報を隠蔽していましたし、コロナワクチンには死者の多いロットがあったことを研究者さんが公表しても削除されたり、メディアは無視しています。過去記事「新型コロナウイルスを振り返る」のような話もあります。
その情報は、誰が、何のために発信しているのかというのは、経済合理性だけでは説明できない歴史的背景や世界情勢、個人のプライド、見栄など様々な要因があるのではないかなと本書を読んで考えさせられました。
ぺにょは、イラストACで歯科のイラストを投稿しています!

