今回は、「がんになってわかった お金と人生の本質」(2024年)を読みました。
著者さんは経済評論家で、63歳の時に食道がんを告知され、65歳、本書発行年の元旦に亡くなっています。Wikipediaを見てみると、本書のように、亡くなってからもいくつか本が出ており、ギリギリまで活動されていたんだなというのが分かります。
がんの治療と投資は似ているというのが面白いなと思ったので、まとめたいと思います。
「標準治療ばかりが癌治療ではない」という意見があり、世間に流通している治療の選択肢の中には、「上手く行ったケースが過剰に強調されているもの」や「楽に結果が得られそうで魅力的なもの」などがあります。しかし、これらの情報を全て調べて精査する時間はがん患者にはないと著者さんは述べます。
この、情報の価値と判断する側の心理の関係は投資の世界によく似ていて、「素晴らしい実績のアクティブ・ファンド」や「容易に儲かる投資のノウハウ」と同じです。著者さんは経済評論家として、こういう甘い言葉に騙されてはいけないと忠告する側だった訳です。

そこで、情報をどこから得るのか、どう絞るのかを検討し、標準治療に則って自分の治療を選択していくことを決めたそうです。「判断できる自分の能力と時間」がない場合は、情報収集自体に意味がないとも述べています。
投資の世界でも、相談相手はよく考える必要があります。投資においては商売の利害関係の一切ない相手が親しい友人である場合がもっとも理想だそうです。これは、がん治療においても同じで、著者さんは治療方針に関する相談相手を、「自分が直接知っていて直接利害関係がない医療のプロ」数人に絞り込み、科学者、放射線科医、内科医が1人ずつと彼らが紹介してくれた医師複数としたということでした。
また主治医は、学会の発表の動画で話しぶりを見聞きして「この人は信頼できる」と思えた人に決めたということです。

それがですね、日頃から著者さんは「ファンドマネージャーや経営者のインタビュー動画を見ても役に立たないよ」と言っていたそうです。にも関わらず、自分が「本人の話を聞いて、信頼し、期待する」という方法を取っていたのに気付いた時は、思わず笑ってしまったそうです。
著者さんは経済評論家であり、常々「がん保険は要らない」と言っていました。がんになってから何度もがん保険の必要性について聞かれたそうですが、やはり、結論としては「がん保険はいらない」だそうです。がん保険の保険料を毎月支払うよりも、預金なり積立投資なりで早く何百万円かの備えを作ることを考えた方がいいと思うということでした。
以前から、がんが一番幸せな死に方ではないかと思っているのですが、自分の死期があらかじめ分かるというのは、つくづくいいなと思います。
著者さんは痩せて着られなくなった服だけでなく、ガジェット類、高級時計、カメラ、鞄などを整理し、蔵書も整理したそうです。そして、食道がんが再発してからは、残り時間を意識しながら、自分は残された時間で何をするのか、誰と会うのか、1分1秒を無駄にしない生き方を実践されていたようです。
突然死ではこのような時間の余裕はありません。がんにならなくてもこのように生きるべきだというのは、スティーブ・ジョブズのスピーチと同じですよね。
がん患者と初心者投資家が似ているというのは、なるほどなと思いました。また、抗がん剤治療による脱毛に対して、ウィッグにするのか、坊主にするのか、そのままいくのか、費用対効果を考えたり、結局毎回高いお金を出してヘアサロンに行くことのトータルコストを考えた結果、バリカンで良くないか?と気づいたりと、経済学的視点から自分のがんを考察しているのも面白かったです。
私も、この人生でやりたいことを全部やって、「我が人生悔いなし!」って言って死にたいですね。今よりも一日一日を大切にしようと思いました。
