歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

カサンドラ

今回は、カサンドラ症候群 身近な人がアスペルガーだったら(2018年)を読みました。

 

 

私の元夫は多分、アスペさんでした。人とのコミュニケーションが苦手空気が読めない感覚鈍麻(虫刺されを掻きむしり、10cmくらいの潰瘍を両足にあちこち作ったり)、こだわり(Tシャツの襟を輪ゴムでぐるぐるに留めてから洗濯し、そのまま干す)、音声は伝わりにくい(文字の方が伝わる)などなど、その特徴バリバリでした。彼の親も息子たちには自閉症の傾向があると認めていましたが、本人は、一度だけ病院で検査を受けるものの診断はされなかったため、自分は普通だ!と自信満々でした…(「普通」にもこだわりあり)。

そして、私は産後にガッツリカサンドラとなりまして、精神不安定になり、不眠や喘息を発症し、フルタイムで仕事もしていたのでもうボロボロでしたね。カサンドラというのを知って、あーこれだ!と気づいてからは、他の人のブログを読んで対応をマネしてみたり、色々と試行錯誤しました。そして、本書にもある「諦めステージ」に入ってからはどうすれば息子たちと幸せに暮らせるのかを模索するようになり、家にお金も入れないし、父親になる気はないと分かって、計画的に家から追い出しました。

息子たちにもその傾向があるのでは?とサリーとアンのテストをしてみたり、学校の先生にそれとなく聞いたり、とにかく不安でしたが、多少はその傾向があるものの、顕著ではなく、相手の気持ちも分かり、社会生活は送れそうだと安心しているところです。

さて、長くなりましたが、今回は愛着障害カサンドラとの関係についての説明が腹落ちしたのでまとめたいと思います。

 

 

 

夫の共感性に問題があるために、妻がうつやストレス性の心身の障害を呈するに至ったものを「カサンドラ症候群と呼びます。典型的なのは、自閉スペクトラム症アスペルガー症候群)のために、共感性や情緒的な反応が乏しいパートナーと暮らしている人に起きるもので、配偶者だけでなく、子どもや同僚等、その人と深いかかわりを持たざるを得ない人にも起こります。上司が…というのもよく耳にしますね。

f:id:ddh_book:20250403203022j:image

カサンドラというのは、ギリシャ神話に登場するトロイ王の娘カサンドラの悲劇に由来しています。カサンドラの美しさに魅せられたアポローン神は、彼女に未来のことを予知する能力を授けました。ところが、アポローンが、カサンドラに言い寄ると、彼女は袖にしてしまいます。怒ったアポローンは、カサンドラに、自分の予言を信じてもらえないという呪いをかけたのだそうです。

カサンドラという比喩を最初に用いたのはユング派の心理療法家ローリー・レイトン・シャピラで、①理知的だが、情緒性に欠けたタイプの人物との、うまくいっていない関係、②ヒステリーを含む心身の不調や苦しみ、③その事実を他の人にわかってもらおうとしても、信じてもらえないこと、の三つを提起したということでした。

 

 

愛着の必要性

 

本書では、カサンドラ症候群が起こる仕組みを愛着を用いて説明します。パートナーから共感的応答が与えられず、ある意味心理的ネグレクトを受け続けることで、愛着が不安定になったとき、気持ちが不安定になったり、怒りを感じたりします。そして、そのような状況が続くと、求めることが空しくなったり、怒りに駆られてパートナーを攻撃してしまう自分に嫌悪を感じ、これまで努力してきたことがすべて無意味に思えて、落ち込み、生きること自体が辛くなるということでした。最終段階では、パートナーに対する愛情や期待を捨て去ることで、共感的応答や思いやりの反応がない状況にも、なんとも思わなくなってしまいます。

カサンドラ症候群の本質は、パートナーが安全基地とならないことで、愛着の仕組みがうまく働かなくなり、心身にトラブルが起きているのだということでした。

 

 

支援

 

著者さんはそんなカサンドラで壊れた夫婦関係を修復する支援をされているそうですが、アスペ夫に対する支援内容の中で面白かったものをいくつか書いておきます。

一つお勧めなのは、目の前の妻を、妻ではなく、あなたを試すために、怒れる妻に姿を変えた女神だと思うのだ。

これは思わず笑ってしまいました。きっとこの言葉で理解し、行動を変えた夫がどこかにいたのでしょうね。

f:id:ddh_book:20250403210950j:image

妻がカサンドラになるのを防ぐのに、間違いなく役立つことは、家事をして、妻の負担を減らすことである。とはいえ、帰宅が深夜という人に家事をしろというのは、過労死しろと言っているようなもので、もちろん健康維持のために睡眠を優先する必要がある。大事なのは、できるときには進んでするという姿勢である。

妻に対する思いやりや感謝の気持ちがある人では、自然にそうした行動がみられる。時間があっても自分がしたいことをして、家事や雑用は妻に押しつけるという態度を、妻は日々見ている。それが積み重なって積年の恨みとなり、怒りのモンスターになってしまうことにもなる。

ああ、ここまで説明しなければ伝わらないんだと思わず笑ってしまいました。これをカサンドラ中の妻が、冷静に、相手が理解できるよう丁寧に説明するのはムリだと思います。

 

 

まとめ

 

本書では、離婚後は夫婦共に寿命が短くなること、子供への影響を強調し、できるだけ離婚せずに仲良く暮らす方法を説明していますが、どちらか一方だけが頑張っても難しいとも書いてあります。夏目漱石の妻もカサンドラだったということで、あの時代は離婚なんてできなくてさぞ辛かっただろうと思いました。愛情や期待は持たずに接触時間を減らしてうまくいった話なんかもありましたが、もし、カサンドラで悩んでいる方がいれば、自分の幸せを一番に考えて、どうすれば自分が幸せなのかを考えると良いのではないかなと思います。

 

無料イラスト素材【イラストAC】