今回は、「どう生きるか つらかったときの話をしよう 自分らしく生きていくために必要な22のこと」(2023年)を読みました。
本書は、宇宙に3回も行った元宇宙飛行士の野口総一さんの書かれた本で、なんで〜?と思うと同時に、アスリートと同じなんだと分かりました。

これは、宇宙に行った後に何度も聞かれた質問です。確かに、著者さんも宇宙で死を意識したことが3回はあったということで、船外活動では手袋のつなぎ目に小さな隙間があっても死と直結するというような、過酷な宇宙を経験されています。ところが、人生のすべての悩みや苦しみを解決してくれるわけではないと言うのです。自分以外の宇宙飛行士が次々と脚光を浴び、自分が打ち立てた記録も更新されていく中で「自分はもう必要とされていない」「自分には価値がない」と思うようになり、10年間も鬱のような状態になり苦しんだそうです。
思わず、「え~??」と声が出てしまいました。まさか、エリート中のエリートである宇宙飛行士が、並外れたタフなメンタルを持つ宇宙飛行士が、こんなことを言うとはまったく思っていませんでした。
宇宙体験からの日常という落差が「燃え尽き症候群」を招くそうです。学生の頃から「宇宙飛行士になりたい」という目標を持っていた著者さんは、現JAXAやNASAで与えられたミッションに必死に取り組み、宇宙でも与えられたミッションを成功させるべく必死で行動しました。しかし、自分が宇宙飛行士として必要ないと感じた時、「自分はどういう人間なのか」「今後どうしたいか」という自分の生きる意味が分からなくなってしまいます。自分の心の中は「宇宙よりも遠い」とも述べられているように、それを見つけるまでに10年間という長い時間が必要でした。
確かに、「与えられたミッション」をすればよかった宇宙飛行士時代から、自分で自分のミッションを見つけなければいけない世界への以降は大変なものがあるというのが分かります。本書にも自ら命を絶ったオリンピック選手のことが取り上げられていましたが、必死にやってきたからこそ、燃え尽きてしまうのだということが分かりました。
自分の人生の方向性や目標、果たすべきミッションを見つける手がかりとして、
- 自分は何が好きか
- 自分には何ができるか
- 自分は何を大事にしているか
の3つを考えることが大事だそうです。
自己啓発系の本を読みまくっている私には、上記は当たり前です。しかし、自分の好きな事や大事にしていることに気付く暇もなくミッションに取り組んでいたというのはすごい集中力だと思ったし、宇宙飛行士なんだから、一般庶民の私なんかとは比べものにならないくらいできることばっかりじゃん!と思いながら読みました。本当に、自分を知るというのは宇宙旅行よりも大変なのかも知れませんね。
人生は、宇宙に行く体験と少し似ていると著者さんは述べます。私は宇宙に行ったことがないので、想像するしかないのですが、宇宙では、引き算の世界を体験するのだそうです。まず、地上で当たり前に手にしていたものを失います。家族や友人には会えませんし、大気層がなくなれば、紫外線や宇宙線が大量に降り注ぎます。そして、宇宙には空気がないため、音が聞こえなくなるそうです。宇宙服を着て宇宙空間に出れば、触覚を失い、夜になれば真っ暗で視覚を失います。
すると、その時自分の中に残るものが上記の3つなのだということでした。

何だか、瞑想をして自分の中に入っていく感じと似ているなと思いました。宇宙飛行士でも、アスリートでもどんな人でも、自分との自己対話を通して自分の生きる意味を考える時間というのが大事なんだと思いました。
エリート中のエリート、日本でも、世界中でも本当に一握りしかいない宇宙飛行士が人生に悩み、生きる意味を見失うというのは衝撃的でした。歯科衛生士の学生さんでも、親に言われて学校に通っている人はどこかで破綻してしまうものです。やっぱり自分の人生は自分で選ばなければいけないし、子どもには、自分は何が好きなのか知って、ちゃんと自分で自分の人生を決めていってほしいなと思いました。そして、それをサポートできる親になりたいなと思います。
