歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

言いにくいこと

今回は、ネガティブフィードバック 「言いにくいこと」を相手にきちんと伝える技術(2024年)を読みました。

 

 

以前、このようなタイトルの本を読んだことあるけどなぁ(過去記事「フィードバック」)と思いながら読んだのですが、アドラー心理学、アンガーマネジメント、社会心理学など、様々な知見を取り入れながら説明されているため論理的に理解しやすいなと思いました。言い方は違うけど、過去記事「I(愛)のアクノレッジ」と近い内容だったと思います。

 

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本書で学んだ覚えておきたい知識を書いておきたいと思います。

 

 

フィードバックの割合

 

本書のタイトルは「ネガティブフィードバック」となっていますが、著者さんは何もたくさんネガティブなフィードバックをしよう!とは言っていません。「ネガティブ」とは書かれていますが、言われる方(部下)のWILL(なりたい将来の姿)を聞いて、すり合わせていこうと言っています。その意味では「ネガティブフィードバック」という言葉は適当ではないかも知れないなと思いました。

ワシントン大学名誉教授ジョン・ゴットマン博士が研究した、人間関係におけるポジティブ・ネガティブの適切な比率「ゴットマン率」によると、「親子3:1」「上司部下4:1」「夫婦5:1」「友人8:1」と言われているそうです。著者さんも、日常的にポジティブなメッセージを8割くらい送りながら、どうしても足りない部分や改善してほしい点があったときに、「今日は改善してほしいところについてお話ししたいと思っていますが、今話しても大丈夫ですか?」と声をかけるのが良いと述べています。「4回ほめたから1回は指摘しないと」と考える必要はないそうです。

 

 

ピグマリオン効果とゴーレム効果

 

期待をかけられた人は期待通りの成果を出しやすくなるのがピグマリオン効果ですが、 相手に期待しなかったり見込みがないと思うと、本当にその通りの悪い結果になってしまうという「ゴーレム効果」というものがあるそうです。

ゴーレムとは、マイクラに出てくるアイアンゴーレムなどの石人形のことですね。部下をゴーレムにしないためには、上司は結果だけでなく、プロセスにも目を配り、ポジティブフィードバックを行うことが大切になります。その方法は、まさにアクノレッジメントでした。

 

 

ザイアンスの法則

 

 「ネガティブフィードバック」を行うときには、部下との信頼関係が欠かせません。信頼関係を構築するためには、部下とのコミュニケーションの「質」だけでなく「量」を増やすことも重要なのだそうです。接触する頻度が高いほど相手に対する親しみが増すという「単純接触効果(ザイアンスの法則)」によると、1カ月に一度、1時間のミーティングを行うよりも、週に一度15分で月に4回行うほうが、部下の上司に対する親近感や信頼感は高まるということでした。

 

 

有害な三大エラー

 

ネガティブフィードバックで大事なことは、相手を説得しようとしたり、論破しようとしたり、フォローしようとしたりしないことだそうです。この「説得」「論破」「フォロー」を「フィードバックの三大エラー」と著者さんは呼んでいます。

では、どうにすれば良いのかと言うと、「沈黙」と「傾聴」になります。上司から耳の痛いことを言われた後、部下の内面には「認知的不協和」が生じます。そのモヤモヤを部下自身が整理するには、沈黙の時間が必要です。そして、2〜3分も沈黙していれば、部下の方から発言し始めますので、上司は部下の発言を最後まで徹底して聴きます。絶対に口を挟んではいけませんし、感情が乱れて落ち着いて話せない状況であれば、また次回話し合う約束をします。

特に初回のネガティブフィードバックの後は、雰囲気を改善しようとしなくて良い、かえってモヤモヤした状態で終わらせた方が良いということでした。初回は、指摘されたことに対して、本人がどう認識したのかを確認するだけで終わって大丈夫です。

 

 

上司の葛藤

 

本書には、上司側の葛藤がリアルに書かれています。そりゃあ上司も部下と険悪になりたくないですし、パワハラだと言われたくありませんよね。

「嫌われるのが怖い」というのは「自分の都合」「自分軸の感情」であり、部下側を見ていないとも同義になります。それは真の優しさではありません。

確かにそうですよね。アドラー心理学の「目的論」に基づけば、ネガティブフィードバックが「できない」のではなく、何らかの目的があって、「やらない選択」をしているということになります。

 

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さらに、人間は「得られるメリット」より「失うリスクやデメリット」を過大評価する傾向(プロスペクト理論、損失回避の法則)があり、やらないことを選択しがちなのだそうです。

上司はネガティブフィードバックをやらなかったらどうなるのか、やったらどうなるのか、を冷静に分析し、自分がやる!伝えなえればならない!と腹に決めて自分ごととして臨むことが成功の鍵になります。

 

 

まとめ

 

言いたくないけど、言わなければいけないことってありますよね。家族なら気をつけないと言い過ぎてしまいますが、上司部下だと(特に今の人はすぐに辞めてしまうので)逆に言えなくなってしまっている面もあるのかなと思いました。

本書には、部下目線の話として、ボスマネジメントというのも紹介されており、お互いに言いにくいことを抱えている中で、どう立ち回るのかは難しいよなと思いました。やっぱり、短い時間で定期的に話をする1on1ミーティングは、やり方を間違えなければ効果絶大だと思います。歯科衛生士の離脱防止や幸せのために、もっと多くの歯科医院で取り入れて欲しいものです。