歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

弓の道

今回は、新訳 弓と禅 付・「武士道的な弓道」講演録 ビギナーズ 日本の思想(2015年)を読みました。

 

 

高校の時、弓道部の友人はいましたが、私自身、弓道をやったことも見たこともありません。本書を読んで、「道」の精神性や身体の使い方を学んだので、整理しておきたいと思います。

 

 

日本の弓道

 

本書はドイツ人哲学者のオイゲン・ヘリゲルが日本で5年(以上?以下?)阿波研造氏のもとで弓の修行を行い、無心の射を経験するまでの過程を整理して著した書です。 アーチェリーがオリンピック種目であることでも分かるように、欧州では弓はスポーツであり、どのように身体を使うのか頭で考え、分析して、的に当てるという目標を達する競技です。しかし、日本の弓道はそうではないのだというのを驚きと実体験を持って書かれています。

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日本人は、弓道の「道」を、主に肉体的な訓練によって、的に「中てる」ことが標準となる、誰でもが多少なりとも出来るようなスポーツ的な能力ではなく、その根源は純粋に精神的な修練を追求する能力であり、その目標は精神的に中てることにあり、その結果、射手は結局のところ自己自身を狙い、そのことによって、自己自身を射中てることに達する能力である、と解しているのです。

 

 

弓の引き方

 

まず、驚きだったのが、弓は腕の力で引くものではないということです。息を下腹へと押し下げて丹田を充実することで、全身の力で弓を引きます。呼吸に合わせて引くことで、腕の力は抜いたままで引けるのだということでした。実際、著者さんは1年かけてこれを習得しています。引いている時に腕を触ると腕の筋肉が柔らかいというので、本当に腕の力は全く使わないのですね。実際、弓を腕の力で引こうとしても、引けないほどかたいのだそうです。

 

 

礼法─体配の歩み、構え、呼吸

 

本書の解説では、上記の弓の引き方「引き分け」の前に、「足踏み」で足の踏み開く幅や角度を厳密に指導し、「胴造り」で腰をしっかり据えることを指導していたはずである、と書かれています。そして、弓を引く前には礼法〔体配〕、決まった歩みをして、的に対する位置〔射位〕に来ると、静かに立ち、深く呼吸するという作法を行います。審査の前には、より家庭で礼法─体配の歩み、構え、とりわけ呼吸法を行い、深く沈潜することを訓練するよう指導されます。

精神を集中し、無心の境地に立つ儀式とも言えますね。

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矢の放ち方

 

また、驚いたのは、意識して指を離し、矢を放ってはいけないということです。また、的に矢を当てようとも考えてもいけません

??ですよね。これには、ヘリゲルもかなり苦心したようです。自らが意識して放すのではなく、自然に離れるのを無心に待つことを教えられますが[無心の離れ]、3年目に入ってもできそうにありません。「あなたが無心であろうとするからできないのです」と師匠に言われ、訳がわかりません。そして、ヘリゲルはあたかも自然の離れのように小細工してみせますが、たちまち見破られ破門されかけます。

そんなある日、師匠はヘリゲルを道場に連れ出し、暗闇で見えない的に向かって2本の矢を射ます2本目の矢は完璧に1本目の矢を貫いたそうです。これをきっかけに、ヘリゲルは矢がどう飛ぶのかには惑わされず、無心で集中することを会得します。そしてある日、「それが現われました!お辞儀しなさい」と師匠は叫び、「これが、正しい射でした」と断定します。その矢は的をかすっていました。

 

その後、できたりできなかったりを繰り返し、特別によい射が出た後、師は尋ねます。「『それ』が射、『それ』が中てるということが、何を意味しているのか、今やお分かりでしょうか?」ヘリゲルは「弓を引き分けるのが私なのか、私を一杯に引き絞らせるのが弓なのか、的に中てるのが私なのか、的が私に中たるのか分かりません」と答えます。すると、「今まさに、弓の弦があなたの中心を貫き通りました」と師は答え、弓道の「大いなる教え」の伝授へと移ります。

 

 

まとめ

 

本書は「禅」の本として世界的に有名なのだそうですが、弓道の精神性、無心の境地、そしてそれに至る修行についてよく説明した本だと思いました。子どもには「道」のつく習い事をさせた方がいいと言われますが、これほどの指導者がなかなかいないのではないでしょうかね。

本書を読んで、私でも弓道の修行をしてみたいな、無心の境地をぜひ会得したいなと思いますので、これを読んだ欧米人は、日本に来て自分も修行したいと思うでしょうね。日本でお寺でのおつとめや忍者修行が人気なのがちょっと分かった気がします。