歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

就活ミステリー

今回は、六人の嘘つきな大学生(2023年)を読みました。

 

 

就職活動を舞台として、スピラリンクスという会社の最終選考に残った6人を描いた小説なのですが、映画化もされたようです。話が怒涛のように展開し、犯人だと思っていた人が違う、違う、違う(笑)そして、最後は心があったかくなって、とても読み応えのある作品でした。今回は、ミステリーということもあるので極力ネタバレしないよう、特に気になった、スピラリンクス人事部長について考えていきたいと思います。

 

 

最終選考に残った6人

 

最終選考に残ったのは、女子2名、男子4名の大学生です。それぞれ別々の大学から来た優秀な学生たちです。本書の冒頭、人事部長の鴻上氏は「最終選考では、グループディスカッションになります。」と伝え、さらに6人全員採用される可能性すら示唆します。

もちろん、6人の大学生はグループディスカッションに向けて入念に準備を進める訳ですが、その中で一人ひとりの個性や性格などが明らかとなっていき、それぞれに長所を持った優秀なメンバーであることが印象付けられていきます。

あー、絶対に全員採用されて欲しい!でも、小説的にはそうはならないよね~と思いながら読んでいると、人事部長の鴻上から、突然選考方法の変更を知らせるメールが届くのです。

 

 

選考方法の変更

 

先月十一日に発生いたしました東日本大震災東北地方太平洋沖地震)による被害、当社の運営状況を鑑みた結果、残念ながら今年度の採用枠は「一つ」にすべきという判断が下りました。これに伴い、当日のグループディスカッションの議題は「六人の中で誰が最も内定に相応しいか」を議論していただく、というものに変更させていただきます。そして議論の中で選出された一名に、当社としても正式に内定を出したいと考えています。

このメールが発端となって、グループディスカッションで「事件」が起きる訳ですが、いや~、鴻上さん、この議題はいかがなものでしょうか!?と思ってしまいます。すると、事件から8年後、既に退社した鴻上氏に誰かがインタビューしている場面が突如現れて、「おかげで二度とあのような方式の選考はしないようにと上からきつく怒られましたよ。」という話も出てきます。

 

 

人事部

 

私は人事部のある会社に勤めたことがないのでよく分かりませんが、本書では人事部の立ち位置は、花形部署ではないと書かれています。Webで調べてみると、人事部長は花形であると同時に会社の存続を担う、責任重大な役職だとも書かれているんですよね。実際は、会社によって異なるし、人によってもその認識は異なるのかも知れません。

人事部では、人材の採用、社内研修などによる人材育成、従業員の評価・配置、各種人事制度の設計・運用など、組織で人材を活性化させるためのさまざまな業務を行う部署だということなので、本書に出てくるような採用だけをしているわけではないということも分かりました。

 

 

人材の採用

 

鴻上氏はインタビューの中で、自分が採用に携わった社員というのは、少なからず自分の「子供」のような愛着が芽生え、芳しくない成績を上げれば落ち込むし、いい仕事をしてくれれば我が事のように誇りたくなると答えています。「人事部は本当に優秀な人材を採用できるのか?」というのが本書のテーマのひとつでもあったのではないかと思いますが、これは、ものすごく難しい問題だと思いました。

私のこれまでの経験でも、とてもいい人だと思っていた人が1年くらいして本性を出すというのを何度も見てきています。たった数回の面接や自分のいいところばかりを並べ連ねたエントリーシートで、何が分かるんだとも思います。歯科衛生士でも、学生の時は成績も悪くパッとしなかった子が就職してからものすごく伸びたり、逆に成績トップの学生が就職するとすぐに辞めて歯科衛生士から離れていったりしますしね。

 

 

他人へのレッテル貼り

 

社会に出て、特に私が大嫌いだったのが、「あの人はできる」「あの人はできない」といったレッテルを張るような人です。露骨に「あの人は優秀だから」なんて言う人もいますし、マンガでも「スパダリ」なんてジャンルまで存在します。でも、人間それぞれ得意なことがあって、苦手なことがある、それでいいんじゃないのかなと思っています。

つまり、人事部も優秀な人を採用しようと思うからあのような事件が起きてしまう訳で、様々なバックグラウンドを持った人や得意なことが被らない人を採用しようという視点に立つと、もっと良い採用ができるのではないかと思うのです。過去記事「エラー・ゼロは実現できる」でも、タイプの違う人材がいることで大きなミスを防ぐことができるということでしたし、優秀な人材だけを採用しようという考えって「優性思考」以外の何物でもないと思うのです。

 

ddh-book.hatenablog.com

 

 

まとめ

 

過去記事「日本出身、地球人」の山納氏も、動物には出会うべきタイミングで出会うべき相手を見つけるセンサーがあると述べているように、もっと直感に頼った採用というのもあって良いのかも知れないなと思いました。

 

ddh-book.hatenablog.com

 

冒頭にも書いたように、本書は読み終わるととても心が温まりますし、人を一面からだけで見たり、良い・悪いの二元論で考えてはいけないということが実感される作品です。ぜひ多くの人に読んでもらいたいです。