歯科衛生士のよみもの

kindle unlimitedで本を読み漁り、感じたことを考察していくブログです。

中心感覚と距離感覚

今回は、自然体のつくり方」(2014年)を読みました。

 

 

本書は、身体の使い方について書かれている本で、過去記事「野口体操」で紹介した上体ぶら下がりも詳しく書かれていました。

 

ddh-book.hatenablog.com

 

身体の使い方とレスポンス能力について勉強になったことをまとめたいと思います。

 

 

自然体

 

人間の基本的な動作である、立つ、坐る、歩くというものにも、日本には日本の、海外には海外の伝統的な文化が反映されます。私も含めそうですが、日本人は姿勢が悪くなっていると著者さんも指摘しており、自転車に乗るのと同様に、練習して身につける必要があるということでした。

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日本における(著者さんの言う)自然体とは、立ち姿においては足腰はしっかりして安定感があり、上半身は肩をいからせることなく力が抜けている状態坐っている姿勢においても少々押したぐらいではぐらつかない安定感があり、中心軸のブレが少ないと同時に精神のブレも少ない状態を指します。

この自然体の技は、武道や芸道においてだけでなく、かつては日常生活においても伝承されていたということで、本書では「中心感覚」「距離感覚」を軸に説明していきます。

 

 

中心感覚

 

自然体となるためには、まず中心感覚を得る必要があります。腰と肚(はら)に中心を感じるためには、修練が必要です。この中心感覚がある人は、電車が揺れてもバランスを崩すことがありませんし、柔軟に当意即妙に反応することができます。

両足に均等に体重を乗せ、膝はつっぱらずに軽く曲げた状態ですが、瞬間的に角度コントロールすることで腰が決まります。臍下丹田に中心があるよう意識して、上半身の力は抜いて、肩や肩甲骨、みずおちに力が入らないようにリラックスさせます。

自然体が上手くいっている時の感覚は、地球の中心と自分の中心である肚が直接結ばれている安定感があり、頭を貫いて真上の天に糸で引っ張られている感覚だそうです。

 

 

足腰のねばり強さ

 

自然体になるためには、足腰の安定、本書でいう足腰のねばり強さが必要です。そのトレーニング方法についても色々と載っていますが、歌舞伎の六方が興味深かったのでご紹介します。

かかとをつけて両足を九〇度に開き、右手と右足を上げ、ついで片足を下ろしたうえで、つぎにもう片方の足を上げるときに手をさっと入れ替える。腕は箱形をつくるように肘を外に張り、手はてのひらから指先までピンと張る。足は地面と腿とが水平になるように上げ、足先にも力を入れる。そして、一一歩一歩、地を踏みしめるようにして移動していく。

Webで検索してみると、『勧進帳』弁慶の幕外の「飛び六方」が特に有名だそうで、『義経千本桜』の「狐六方」などもあるようです。動きの基本は、過去記事古武術に学ぶ」でも紹介した「なんば歩き」ということでした。

 

ddh-book.hatenablog.com

 

私は職場で「なんば歩き」を練習していたら、腰が悪いのか?と声を掛けられたことがあるので、練習は家の中ですることをおススメします(笑)。他にも、四股踏みやカベ押し、すり足なんかもトレーニングとして良いということでした。

 

 

距離感覚

 

自然体としてのもう一つの要素として「距離感覚」があります。距離感覚とは、自分と他人との距離がどのぐらいなのかを感じ取る感覚で、物理的な距離感精神的な距離感を含みます。距離感覚が欠如している人は、道を歩いていて人とぶつかってしまったり、初対面の人になれなれしく接してしまったりしてしまいます。

この距離感覚を獲得するためには、他者と直接触れる指圧やマッサージ、呼吸を合わせながらお互いに抵抗をかけ合うワーク、目をつぶって相手にまかせるゲーム、アイコンタクトを使ったゲームなどが紹介されていました。

著者さんも言われていましたが、今の学生さんは授業の時ほとんど無反応です。若い人こそこのようなレスポンス能力も自分の技として身につけていくことで、より良い距離感覚を獲得し、より良いコミュニケーションができるようになると思いました。

 

 

ふりかけ事件

 

学生さんが無反応だと嘆くのではなく、こちらが彼らの体を暖める必要があるということを知ったので、「ふりかけ事件」をご紹介します。

大学の教職課程の授業で、少々難しい質問をしたときのことであった。二、三人が手をあげて発表したあと、発表者が途絶えてしまった。「もっとだれかいないか」と聞いても、だれも手をあげない。私はまず、一番右の二列に、前から歩きながら一人ひとりの顔を見て、一番後ろまでどんどん声をかけていった。その列の終わりまでいった。ところが、その二列からからは、一人も声があがらなかった。

(中略)

「答えを少しは思いついている人はそのままで、答えをまったく思いつかない人は机の上にドベーと伏せる。教壇からの弾丸をよけるように伏せるわけだ。じゃあ、3・2・1でいくから、どっちかにかならず決めといてくれ。……それじゃあいくよ。はい、3・2・1」

すると、不思議なことが起こった。六十人中、伏せたのは十五人ほどだったが、なんとそのうちの十三人が右二列に座っている人間だったのである。

身体は、他者の身体の働き方によって活性化する(暖まる)そうです。つまり、一人ひとりに声を掛けていたので、右二列の学生が動きやすいからだとなり、考えがまとまっていないという消極的な人たちが積極的に体を動かしたということです。

著者さんは、生徒の方にだけ積極的な表現を求めるのではなく、教師自身がからだ全部を使って相手のからだを刺激していくことで生徒の体も動きやすくなるのだと述べます。ふりかけをかけて教室全体を美味しくするのは教師だということです。

これは、色々と考えさせられます。

 

 

まとめ

 

私は岩下志麻さんのような美しい立ち姿・坐り姿に小学生の頃から憧れていたんです。でも、気を抜くとすぐに猫背になり、残念な立ち姿になってしまいます。分かってはいたことですが、本書を読んで誰が見てもカッコイイ自然体になるためには、修行が必要で、安定した下半身と柔軟な上半身、そしてそれを貫く中心感覚を身につける必要があるということが分かりました。カッコイイおばあちゃんになれるよう、日々丹田を意識し、家の中ではなんば歩きか飛び六方で移動しようと思います。