今回は、「世界一ぜいたくな子育て~欲張り世代の各国「母親」事情~」(2005年)を読みました。
自身のフランスやスイスでの出産、育児経験やインタビューを通して、各国の母親事情について書かれた本であり、女性として生きたいのか、動物的に生きるのかという哲学的な女性の生き方や価値観を問う本でした。発行が2005年の本なので、少し古い内容にはなってしまい今はまた変わっているのかも知れませんが、各国の子育てについて整理してみたいと思います。

フランスの産院では無痛分娩がデフォルトで、わざわざ聞かれることすらなかったそうです。しかし、母乳はどうするのかは聞かれます。最初から「しない」と宣言する人には母乳を止める薬があらかじめ処方されるそうです。日本とは違い、母乳で育てる母親はレアであり、夜は大人の時間という決まりを徹底しています。赤ちゃんと添い寝なんてあり得ません。夫と外出する時はベビーシッターに子供の食事づくりから就寝までを任せ、夜になるとおしゃれをしてレストランや劇場などに出掛けます。育児はもっぱら住み込みのナニーにまかせっきりという女性も多くいます。
育児に際しての態度の基本は、「大人の女にとって心地いいこと」「大人の女の自由や楽しみを損なわないこと」なので、ダボっとした妊婦服なんて着ません。妊婦がビキニ姿でビーチに行きますし、子どもには親好みの服を着せて楽しみます。
一般のフランス人女性は、自宅で、なんの医療介入もなく「ころん」と子供を産んだ後、いともたやすげに母乳育児をするというオランダ人女性話を聞くと、そんなの信じられない」と驚嘆し、「それじゃ、まるで牝牛じゃない」と内心では軽蔑するそうですよ。

オランダでは出産後の病院滞在は正常な普通分娩の場合、わずか一晩であるため、助産師が来て行う自宅出産も当たり前だそうです(日本は5日間)。出産に際しての麻酔(無痛分娩)をする人はほとんどいないし、陣痛促進剤の点滴、浣腸、その他、あらゆる「医療介入」が最小限なのだということでした。もちろん、母乳育児はナチュラルでノーマルな感覚です。助産師さんのサポートも充実しています。
一方、オランダでは出産後も女性が仕事を続けるのは当然で、シッターさんを雇うことが多いようです。そして、夫が育児や家事に参加していないケースは皆無だということでした。羨ましい。

スイス女性は公園でも堂々と胸をはだけて授乳をします。制度の問題もあり、子どもの面倒をみるために専業主婦になる女性も多いようです。スイスは反粉ミルク運動の影響もあってか、よりナチュラル思考になっているということでした。熱心な自然分娩主義者でないけれど、いいお産をして、育児も楽しみたい、という価値観は日本人と近い感覚だなと感じました。

イギリスのロンドンやアメリカのニューヨークでは、ママはお仕事、子供の世話をするのはナニーというのが非常に一般的だそうです。エージェンシーを介して、保育のディプロマと履歴書と紹介状を携えた英国人ナニー(年齢は20〜30代中心)を雇うか、資格はないが、温かくて子供好きな(主にスペイン語やポルトガル語圏出身の)おばさんナニーをやや低めの賃金で雇うか、「あくまできちんとフランス語を話せるスイス人」にこだわって、コネを使いまくって最高賃金の人材を探すのだそうです。一般中流階級においても保育園は少数派ということでした。

著者さん曰く、ドイツ人には母性アレルギーが存在すると言います。ドイツ人女性は母乳育児には比較的積極的でありながら、なぜか母性の礼賛、授乳行為の美化には居心地の悪さを感じるのだそうです。これにはナチス統治下の「産めよ増やせよキャンペーン」、アーリアの純血種を増やそうとする優遇制度が行われた結果、戦争をまったく知らない世代のドイツ人女性に影響を与えているのではないかということでした。
先日、助産院を開業されている助産師さんとお話する機会があったのですが、産後の授乳に関する悩みは多いそうです。本書でもスイス人女性の母乳が出ずに悩み、家庭が不仲になっていく話もありましたし、別室で寝ていたこどもが3歳頃になると毎晩夜中に両親のベッドにやってくるようになったとかナニーが子どもを虐待してたとかいうフランス人の悩みもあり、それぞれに育児に悩んでいる状況が目に浮かびました。著者さんは(日本において)保育園側も「母親が働いているかどうか」を入園許可の条件にしている場合ではないと述べていますが、本当に日本もそのように、母親がもっと楽に子育てできる世の中になると良いなと思いました。
どんな出産・育児が良いというのは人それぞれ、各国それぞれですが、 自分は子どもを授かることができて幸せだなと思ったし、子育てを通して自分も成長できるといいなと本書を読みながら考えました。
